第22話
俺は今ニッコリとした笑顔を貼り付けて俺は生徒会の赤髪女の話を聞いていた。
プライス家のいざこざをこの女に半ば強制的に仲裁され、流れで強引に生徒会室まで連れてこられてしまった。勿論厄介ごとになる気しかしなかったので何度も離脱しようとしたのだがこの女は聞く耳を持たない、気がつけば生徒会室なるものに連れてこられ座らせられていた。
パッと見回すと小汚い物置部屋を人の居られるよう物をどけてとりあえずの部屋としているような見た目の生徒会室だった、部屋の角には埃などがたまっておりあまり普段使いされている部屋には思えなかった。端に目をやれば多くの資料やら何に使うのか分からない機材のような物が埃をかぶって置いてあった。
「アンバー・レッドフィルド、アンバーで良いわ学年は貴方の一個上の二年上級クラスよ、よろしくね。」
「ケイです、平民出ですので家名はありませんよろしくお願いしますアンバーさん。」
俺が名前を呼ぶとアンバーはニッと笑う。小汚いこの部屋には不釣り合いな甘い香りが部屋に充満してた。
「じゃあケイね!今回は災難だったわね、プライス家は前から問題行動が多かったけどまさかこんなに直接的に来るとは思わなかったわ。」
「まぁ…はい…。」
俺はもうじき授業も始まるし、急な距離の詰め方に居心地の悪さを感じた、そもそも嫌な予感しかしないので早くここから出たいその一心だった。
「失礼しま…何でお前がここにいるんだ?」
部屋のドアが開きそこからルークが入ってくる、俺を視界に捉えると途端に怪訝な顔をする。
「それこそ俺が聞きたいよ。」
「やあケイ。」
ルークの後からウィルが入ってくる、俺は即座に微笑に顔面を切り替え軽く会釈を返すとルークは苦虫を噛みつぶしたような顔をこちらに向けた。
「こんにちはウィル、ルーク。」
アンバーがニッコリと笑いかける。
「こんにちはアンバー、ところでコイツはどういった理由でここに?」
ルークは俺を顎でしゃくる。
「彼がプライス家に絡まれててね、私が助けに入ったのよ!」
アンバーはわざとらしく胸を張ってみせる、これにはウィルもルークも俺も苦笑いするほかなかった。
俺はもう用事も無いため荷物をまとめ出て行く準備をする。
「あらケイもう行っちゃうの?もう少しゆっくりしていけば良いのに。」
アンバーは何処か少し影のある微笑で名残惜しそうにそう言う。
「えぇあまりお邪魔しても悪いのでここらで失礼します。」
上級クラス用制服特有の肩掛けのマントを軽く手で払い立ち上がる。
アンバーは相変わらず裏のある笑みをたたえている、ルークも同様に何かを待っているかのように口角が少し上がっている、ウィルは我関せずといつの間に入れたのか紅茶に口をつけていた。
俺は何処か様子がおかしいなと思いながら部屋を一瞥する、すぐに違和感と彼らのおかしな様子の正体に合点がいった。
出口のドアに向かって歩いて行くと背後から感じる視線はより強いものになっていった、こいつらはそんなに俺がひっかかるのが見たいのかと思いながらドアのある真横の壁を軽く殴る。
バキっと何かが壊れる音が響き地面に透明なガラスのようなものが地面に散らばると霧のように消えていく、するとその透明な不可視の壁の裏から緑色の髪の少女が現れた。
「これ、解いてもらえます?」
俺がサムズアップした親指で後ろの部屋を指さす。
「ひゃ…ひゃい…」
涙目でガタガタ震えている少女は手持ちの木製の杖を折れんばかりにぎゅっと両手で掴むともごもごと何かを唱える、すると部屋の景色は一変し小汚い物置部屋が一瞬で品位の溢れる空間へと変わっていた。
アンバーは口に手を当てて驚き、ルークは悔しげにこちらを見ている、ウィルも眉を上げ少し驚いたように目を見開いていた。
幻術が解かれたことにより現れた空間の奥から声がかかる。
「まさかメイの幻術に気付くとは思わなかった、私は三学年のオスカー・モラレスだオスカーでいい、君…確かケイだったね?」
銀髪を短く切りそろえた女が木製の高そうな作りの机に手を組んで置きながら話しかけてくる。
「はいそうですが…コレは一体どういう…?」
俺は怪訝な顔をしながらメイと呼ばれた緑髪の女を指す。
「彼女はメイ・オービス、気を悪くしたならすまなかったね、なにこの生徒会のちょっとした余興みたいなものさ。」
俺は気の抜けた返事を返す。
「…ところでケイ、なぜ幻術だと分かったんだい?生徒会の身内を贔屓するわけではないがメイの幻術はかなりのものだと私は評価しているんだが?」
先程までの柔らかな表情から一変刺すような視線でこちらを見据えてくるオスカー。
「わっ、私も知りたいです!」
メイも同様に身を乗り出してくる。
「…理由は幾つかありますが一番は間取りですかね、外から見たこの部屋の規模と中の間取りがどうしても合わないこと、加えて言えば匂いもおかしいですね、埃かぶった部屋の癖して匂いだけは一端の高級店みたいな匂いしてますし…。」
そう言いチラリと目をやるとメイは必死にメモを取っており、オスカーはお手上げだとばかりに手を振っている。
「流石はウィルの推薦を受けた者だな。」
「推薦…?」
「なんだ?ウィルから聞いていないのか?」
オスカーは驚いたように目を開きウィルを見る、名前を呼ばれたウィルは紅茶をテーブルに置くとこちらに向き直る。
「ええケイには何も話して無いですよ、だって彼にそんな事を言えば絶対にここには来ないでしょうから。」
ウィルは微笑をたたえながら俺を見つめる。
「ただケイの実力とそれを推薦した理由は理解して頂けたかと…」
ウィルは視線を戻すと再びカップに手を伸ばす。
「どうやらキミの預かり知らないところで話が進み過ぎていたようだね、とは言え私のする事に何ら変わりはない。」
オスカーは組んだ手を離すと右手をこちらに軽くこちらに伸ばす。
「生徒会に入らないかケイ?」
俺は案の定厄介な事に巻き込まれてしまったとこめかみに手を当てる。
「すぐにとは言わないさ、生徒会所属には大いにメリットはあれど相応の義務も課される、ゆっくり考えて答えを出して欲しい。」
「…分かりました、それでは失礼しました。」
俺はオスカーの言葉に頷きウィルたちに軽く会釈をして生徒会室を後にした。
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