12/11

 あいつのスマホから連絡が入る。

 実に3日ぶりのやりとり。実を言うと、ちょっとだけ寂しさも感じていた。

「もしもし。天喰真悠君、ですか?」

 電話に出たのは、知らない声だ。

「……はい」

「愛香……如月逸火の母です。娘が……昨日、亡くなりました」

 亡くなった?

 現実の事とは思えない事実を伝えられる。

「はい……昨日の朝、首を吊っていたんです」

「……嘘だ」

「私も、まだ受け入れられてなくて。ようやく今日、娘の会社に連絡を入れたんです。それと、仲良くしてくださった方々に。娘は、あなたとよくやり取りをしていたようですから」

「嘘ですよね……。あいつが亡くなったなんて」

 嘘だ。

 現実を受け入れたくない。

 あいつが首を吊る?そんなのありえない。

 ありえない。

 ありえない……。

「あの子と仲良くしてくださってありがとうございました……」


 その後、会社からも連絡が入った。

 如月逸火が亡くなった。

 自殺だった。

 その日のニュースは、彼女の死で持ち切りだった。

 ホログラルームの仲間、先輩達。

 同じバーチャルライバー及びシンガーとして活動する人達。

 音楽関連に務める、数多くの著名人。

 多くの人々から、追悼の声が聞かれた。


「馬鹿が……」

 お前、皆から愛されてんじゃねえかよ。

 なのに。

 なんで死んじまうんだ。

 なんで届かない場所に行っちまうんだ。


 俺はふと思う。

 これは夢なんじゃないか?

 そして夢から覚めて、またあいつとやり取りするんだ。

 そんな……虚しい夢や妄想に逃げてしまいたい。

 あいつの死を受け入れたくない。

 死ぬなんて……どうして。


 現実の事じゃないみたいだった。

 妄想と現実を行き来してるような気分だった。

 人が死んだら、大抵は悲しむものだろう。

 俺だって、あいつが生きてる間は、死んだら悲しいと思う。

 けど本当は、待ち受けるのは悲しみじゃなかった。


 受け入れられない現実の壁に、ただ虚になる。

 そんな日々が何日も続いた。

 俺は……死を受け入れられなかった。

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