55話 VSビレシワ+1
バーモントが倒されたころもう一か所にも変化が起きていた。
死屍累々、阿鼻叫喚、大きな油黒虫の死骸がそこら中に転がっており騎士たちの死体も幾つも横たわっていた、見る人によってはまさに地獄絵図。
激しい戦闘が繰り広げられていたことがうかがえる。
「周囲に敵影無し!」
見回っていた騎士がそう声を上げた。
サントスは騎士の声を聴くと剣を降ろした、しかし鞘には納めない。
「大体は終わったか? 警戒は怠らず街へと戻る準備をしろ!」
騎士達に指示を出し自分も準備をしようとしていた。
しかしその時、森の方でガサガサと大き目な音がするのであった。サントスを含む騎士達が一斉に音の方を見た。
すると、「ヒィ!」と声がした、ヒキガエルを潰したようなキタネェ声だ。すると他にも「あ、バカ」「ふざけんな」という声も聞こえた。
「誰だ! 出てこい」
サントスが音の方向へ叫んだ。
そりゃ、こんな時にガサガサ音立てて悲鳴あげりゃそうなるよな。
そしておずおずと出てきたのはダウ司祭と護衛の数名であった。
「ほう、バーモントと一緒にいた司祭じゃないか」
サントスは手で素早く支持を出すと騎士たちは司祭たちを囲むように陣取った。
「あー、司祭。こりゃダメっすよ、第一騎士団に囲まれたら終わりですよ」
バーモントの部下であった騎士はサントスの恐ろしさを知ってるのか、あっさりとそう言った。
「え?」
ダウ司祭は素っ頓狂な声を上げて護衛の方を見た、すると他の護衛も頷いていた」
「そんなあっさりと?」
ダウ司祭はその様子を見て尻もちをついてしまった。護衛達は抵抗の意志は無いと両手を挙げた。
「ふむ、潔いな。捕縛しろ」
騎士達数名が司祭と護衛達をロープで縛りあげたのであった、こうしてあっさりとダウ司祭は捕まることとなった。
――
――――
「さあ、マーシャちゃん! ロープが見えてきたわよ」
「最終段階っすね」
付かず離れずでマーシャとアンジェリカは使者と追いかけっこをしていた。
もうこの時点で使者はこの二人を得物と認識しており、匂いが無くとも追いかけるようになっていた。
神の使いとは言え所詮は虫である。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へッス!」
マーシャが箒を操り、アンジェリカが攻撃を仕掛ける、途中からこうして使者を苛立たせる作戦に切り替えたら見事に成功、使者はキーキー変な鳴き声男を上げつつ遅いながらもマーシャを追いかける。
そう、油黒虫は素早く動くのだが、この使者野郎図体がデカイせいか遅いのだった、しかし歩幅はあるため距離の詰め方は半端なかった。
「最後の仕上げよ!」
アンジェリカが発煙筒を取り出し、魔法で火をつけると赤い色の煙が立ち上った、ロープの近くに来た合図だった。
ロープを構える魔女学院の教師たちに緊張が走る。
「改めて見るとなんて大きさだい……」
メルリカ婆さん久しぶりっす! てな感じで婆さん再登場。
「よし! 予定通りだ、アンタ達きばっていくよ!」
メルリカ婆さんは檄を飛ばすと、自分もロープを掴み準備をする。
そしてマーシャ達と使者が目前にまで迫ってきた。
「突っ込むっすよ!」
マーシャがロープをくぐる、そしてアンジェリカは自分で竿に乗りロープへと向かった。
使者がロープギリギリまで迫りマーシャに追いつこうとしたところ……
「魔力注入!」
アンジェリカが叫び魔女たちが一斉に魔力を込める。
そしてロープが使者を捉えたのであった。
次回は『お前あっちいけよ!』となるであります!
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