56話 お前あっちいけよ!
魔力を注入されたロープが光を発する。
膨大な魔力が使者を捉えると、使者はジタバタともがきだした。
「こ、こいつは思った以上にキツイねぇ……」
メルリカ婆さんが少しひきつった声で言う、他の魔女も必死な顔になっていた。
しかし、徐々にだが使者がロープの向こう側へと吸い込まれていく。
「うーん、改良したロープでもこの質量はキツイわねぇ」
アンジェリカも必死な顔で魔力を込める。
徐々に徐々に吸い込まれていく使者、それを必死に抑え込む魔女たち、使者ももがき抵抗しようとするがなかなか上手くいかないようである。
魔女たちもマジックポーションガブ飲みで必死な形相で魔力を込め抑え込んでいる、そのさまは締め切り間近のクリエイターである。
そして、釣りで大物とバトってるかのような戦いがかれこれ二時間ほど繰り広げられていた。
使者の姿はもう七割以上がロープの向こう側へと送られていた。
魔女たちも魔力を送り続けてすでに満身創痍である。
「あと少しと、あと少しでオバさんたちの勝ちよ」
他の魔女よりは余裕があるアンジェリカだがそれでもかなりの疲労がうかがえた。
「よーし、アンタ達最後の最後まで気合入れていくよ!」
一番元気なメルリカ婆さんであった。凄いよ婆さん!
そして、とうとう使者はロープの向こうへと消えていった。
「よっし! やったすよ!」
途中から手伝っていたマーシャがガッツポーズを取るが、アンジェリカは表情を引き締める。
「マーシャちゃん、まだ終わって無いわよー、これから最後の仕上げなのよ」
「おっと、そっすね」
マーシャは再び槍に跨り、その後ろにアンジェリカも乗る。
そして、魔力をおびたロープへと向かう。
「それじゃあ、最後の仕上げに向かうわよ」
アンジェリカは魔女たちにそう告げる。
「アジャルタ、任せたよ!」
メルリカ婆さんの言葉に手を挙げて応えるアンジェリカ、そしてマーシャと共にロープをくぐったのであった。
――
――――
さて、池の方では。知らせを受けた数名の魔女がロープを広げ池の上で待機していた。
待機して少しするとロープが光だし、徐々に使者が姿を現しだした、使者が出現したことにより、協力者の一般人の避難も始まった。
避難誘導はゼノ達とロウエル達騎士団が担当していた。
「アジャルタさん、本当に使者を追い込んだんですね」
「ア、アジャルタはやると思ってた」
ルーシアとヴィヴィアンは像を準備し使者封印の準備をしていた。
そして、ついに使者が池へと落ちていった。
「来た!」
ヴィヴィアンが叫んだ! 落ちた使者がひっくり返っており泡立った池でもがいていた。
そして続いてロープからアンジェリカとマーシャもやってきた。
マジックポーションの瓶を加えながらの登場だ、登場するなりアンジェリカは魔力の玉をもがく使者に叩きつける。
「やはり油黒虫ね、あのもがきかたは、水が効いてる証拠よ」
そして、魔力をドーム状にして使者を覆う。
「動かなくなるまで押さえつけて置けるかしら? でもこれが仕上げだからやるしかないわね」
こうして、アンジェリカと使者の最後の攻防が始まったのであった。
次回はついに決着『害虫駆除』でござりまする
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