54話 バーモント卿とロウエル卿
ロウエル隊とバーモント隊が対峙する形となった。
「やはり貴様が動いたかロウエル卿」
バーモント卿は剣を構え、様子を伺いながらロウエルを睨みつけた。
「貴公はとんでもない事をしてくれたな」
ロウエルはバーモントに向き合うと細身の剣、エストックを構える、そしてロウエルは部下に指示しバーモントの部下を取り押さえるよう指示をする。
バーモントは苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「バーモント卿、降伏しないか? 貴公では私には勝てない」
「忌々しいがその通りだな……だが、ここをどうにかせねばならん気がしてな」
「ひかぬか……ならば」
ロウエルはバーモントとの間合いを詰める。
「うむ、引くことは出来ん!」
言うや否やバーモントはロウエルへと目掛け剣を振り下ろす、しかしロウエルはその斬撃を難なくかわすとバーモントにカウンターの突きをお見舞いする。
バーモントはカウンターを躱そうとするが体勢を崩し、避け切ることが出来ず左の肩につきを受けてしまった。
「ぐ! 相変わらず鋭い突きだ」
顔をゆがめながらも体勢を立て直すバーモント、そして油断なく再度構えるロウエル。
二人の騎士は打ち合いを始めるのであった。
そしてゼノ達も音の方へと向かったバーモントの部下を追う。
「兄さん、見えてきたよさっきのヤツ等だ」
「よし、丁度風下へと向かっていくな」
リノが敵を発見し、ゼノは指に唾をつけ風の方向を調べていた、不思議に思ったルーシアがゼノへと尋ねる。
「風向きを調べてどうするんですか?」
すると小袋を取り出しながらゼノが答えた。
「騎士たちとまともに事を構えるつもりは無くてね、それでコイツを使うんだ」
「それは?」
「毒だよ、まあそこまで強い毒じゃないが軽く麻痺する程度さ。時間で消えちまうけど、外で使うには向いてる毒でね、ある程度距離を飛んでいくとその場に留まり続けるんだ」
なんとも冒険者らしいゼノのようなスカウトの戦い方である、ルーシアも感心して聞いていた。
「そう言うわけで、ルーシアさんもう一度彼らの辺りで音を数回鳴らしてほしい。足止めをしたい、外で使うには便利ではあるが、対象が動いちまうと効果が無いからね、そこの扱いだけが面倒なんだ」
「わかりました」
ルーシアが改めて数度爆発音を鳴らすと、騎士達はその場に留まり辺りを確認する。そしてゼノの前にリノが兵士達の近くに煙玉を投げた。
「さーて爆発だと思ってくれるかな?」
「な、なるほど。音と煙ですか、これで爆弾と相手が警戒すれば下手には動けませんね」
ゼノリノ兄妹の戦い方に感心するルーシアだる。
すると騎士たちの声が聞こえてきた。
「く、爆弾だと? 周囲を警戒しろ」
「どこだ?」
数名のざわめきが聞こえた。
「よし、念のために俺たちも布で口と鼻を押さえるんだ」
素早くゼノ達は布で口を覆うと、ゼノが毒を撒いた。風に乗って騎士たちの方へと飛んでいく。
少し経つとに騎士たちの声が再び聞こえてきた。
「……なんだ? ……か、からだが」
「毒の入った爆弾、だった……のか?」
次々とその場で座り込む騎士達、毒自体は強いものではないのか騎士たちの意識は残っている。
「よーし、効果あり。毒自体は数分で消えるが、この毒の麻痺は威力はそこまでだが三十分はあのままだろう。いまのうちに騎士たちをふん縛ってしまおう」
そう言ってゼノはロープを取り出し、それでも警戒して騎士達へと向かっていった。
そのころ、バーモントとロウエルの戦いも終わりを迎えていた。
バーモントといた騎士たちも概ね取り押さえられており、縛られていた。
「これで終わりだな!」
ロウエルがそう叫ぶとエストックでバーモントの右の太ももを貫き、足を引っかけ転ばせるとバーモントの顔の目にピタリとエストックを突き付けた。
それで、バーモントも観念したのか剣を捨て、両手を広げ首の後ろで手を組んだ。
「わかった、降参だ」
バーモントが降参の意思表示をしたが、ロウエルは気を緩めず二歩ほど下がると部下にバーモントを縛る様指示した、しかしその時であった。
「おっと! お前たちに捕まってやることは出来ないな!」
言うな否やバーモントは短剣を取り出した。
それに気づいたロウエルだが、ロウエルが動く前に、バーモントは短剣出自分の喉を掻き切るのであった。
「バーモント卿!」
ロウエルが叫ぶが既に遅く、バーモントは笑いながら絶命していった。
どうせ捕まったら死刑は確定だと思い自決する道を選んだようであった。
「……まったく、バカな男だ」
ロウエルは小さく祈るようなポーズを取り、かつての同胞のそばへ向かった。
そして部下がロウエルの元へ向かうと全員捕縛したとの報告をしたのであった。ゼノ達も戻ってきて騎士へ向こうでバーモントの部下たちを捕まえた事を伝えた。
「さて、これで後はアジャルタさん達を待つだけだな」
ゼノ達は後の事はロウエル達に任せ、アジャルタ達を待つことにするのであった。
バーモント卿の自決により捕縛はできなかったが、第四騎士団からこの場を守り切ることは出来たのであった。
次回『VSビレシワ+1』にございます
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