53話 バーモント卿、暁に散る?
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バーモント卿とその部下たちは森の中に潜んでいた。
そして森の中から溜池の様子をうかがっていたのであった。
「あいつ等は何をしてるんだ?」
バーモント卿は不思議に思ったのか部下に尋ねる。
「わかりません、変な紙を水に入れて何をしてるんでしょうね?」
部下も首をひねる、普通に見ればこれが対使者用の罠だとは思わないだろう、場所に寄っては泡まで立っているのだし。
「泡立てて遊んでいるようにも見えるな」
「使者を見て随分と余裕ですね」
「違いない、が気にもなる」
ただバーモント卿は騎士団のメンバーも混ざっていることに違和感を覚えていた、しかも魔法専門の騎士である。
(ふむ、やはり何か胸騒ぎがする。万が一に備えて妨害すべきであろうな)
彼等にとっては絶対神のビレシワ、その神の使者が簡単に負けるはずがないとはわかっているが、不安になっていくバーモント卿であった、万が一のためバーモント卿は部下に指示を出す。
「何故かは分からんが胸騒ぎがする」
「胸騒ぎですか?」
「ああ、よって妨害をするべきだと思う」
「わかりました、何か罠の可能性もありますからね。ただ、我々を誘い出すための作戦の可能性もありますね」
部下の意見にバーモント卿も頷く。
「確かにな、もう少し様子を見てから行うことにしよう」
「了解です」
バーモント卿達は再び森に身を潜めた。
――
――――
溜池の方の準備もほぼ終わろうとしていた。
「ビレシワ、近い」
ヴィヴィアンが何かを感じ取ったのかそう呟いた、どうやらヴィヴィアンがアンジェリカ達が調子よく誘導してきてるのを感じ取ったようだ。
ヴィヴィアンの反応でほかの人たちにも緊張が走った。ただこれはバーモント卿達も同じであった、ヴィヴィアンの発言後少しすると、バーモント卿達が姿を現した。
準備をしていた人たちに動揺が走る、無理もない大半は善意の一般人なのだ。騎士団で魔法が使えるメンバーも何人かはいるが、それでも一般人を護りながら戦うのは厳しい。
「やはり騎士団の連中だったか! ロウエルさん達はまだか?」
ゼノは短剣を構え叫んだ。
「まだ来てないよ!」
リノが答えた。
バーモント卿達は二〇名ほどの部隊であった、バーモント卿達も各々武器を構えた。
「ビレシワ様の魔力が近づいている、どうやらここに誘導しているようだな」
バーモント卿もビレシワ信仰者のようでビレシワの魔力を感じる事が出来るようだった、そのためかここが目的地であると言う事が悟られたようであった。
武器を構えたバーモント卿達がジリジリと距離を詰める、さっさと襲い掛かってこなかったのはゼノ達に好都合であった。
「目的に感づかれたか、しかしすぐに襲ってこないのは運がいいかな」
「多分、これが自分たちを誘い出す罠かもって警戒をしてるのかもね」
リノの言葉は的を得ていた。するとルーシアが二人によって来る。そして小声でゼノトリノに伝える。
「私が音の魔法で森の端付近で大きな音を鳴らします、そこで注意をそらしたらなんとか一般の人を非難させてください」
「……そうだな、このまま硬直状態では終わらないだろうし、わかった、やってみよう」
開始すぐに硬直状態になったが、ルーシアが打開策を提示してきたので案を採用してみる。
ゼノトリノが一般の人帯の方へと向かうと、ルーシアは魔法を使い破裂音を予定通りの場所で鳴らした。
するとバーモント卿達が音の方向へと向く。
「なんだ? やはり罠か?」
バーモント卿はすぐさま部下数名を音の方へと向かわせた。そしてルーシアは更に違う場所で破裂音を鳴らす。
「なに? また違う場所から」
バーモント卿達自身が後で鳴らした方へと向かった。上手く分断に成功したのだった。
ゼノも様子を見ていて、小さくガッツポーズを取るとリノと別れて少し離れた場所へと誘導を開始した。
バーモント卿達はゼノ達の様子に気付くと、しまったと言った顔をした。
「ええい! 破裂音はフェイクか?」
忌々しそうにしていたバーモント卿だがその視線の先には、ロウエル隊が姿を現すのであった。
次回は『バーモント卿とロウエル卿』でありまする!
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