51話 本能には逆らえまい
襲い来る泥水を忌々しそうに触角を動かし避ける使者。
リヴァイアサンの思惑通り、使者は少しづつではあるが街から離れた方向を向きだしていた。
「まだ、この位置では街に被害が出るな。もう少し何とかせねばな」
リヴァイアサンも少しづつ使者の方へと距離を詰めていった。
使者はそこまでの攻撃手段を持たないのか、時折使者の使いが妨害してくるがリヴァイアサンの敵ではなかった。
「救いは現状では直接的な攻撃方法がほぼ無いと言う事か」
リヴァイアサンの魔法はダメージこそ無いが、使者の動きを止め軌道修正するには有効であった。
使者も使いをつかって攻撃を仕掛けるが、有効打にはならず、卵を焼かれているので数も揃えられない状態だった。
「主と共に卵を潰しておいたのは正解であったな」
そしてそこで運悪く、他にも怪我をした盗賊団のメンバーが数名街へと逃げ込もうとしていた。
騎士団の目から逃れるために隠れていた盗賊団が使いに追われていたのだった。このままでは盗賊団が使者の近くで全滅するか逃げ延びても使いごと街に入ることになるだろう。
リヴァイアサンは苦虫を噛み潰したような顔(?)で舌打ち(?)をした。
「チ、あの者たち、タイミングの悪い事で」
その血の臭いに使者も反応した。
「く、これはマズイぞ」
万が一使者が彼らを襲いだそうと動きだしたら、被害は相当なものになるだろう。
使者が盗賊団に照準を定めた、触角はせわしなく動いており何かを察知している、強烈な血の臭いであろう。
「マズイ! マズイ! これはマズイぞ!」
すぐさまリヴァイアサンは霧の魔法で盗賊団メンバーを多い臭いを誤魔化そうとするが、使者の触角は鋭くあまり効果が無い。
「覚悟を決めねばならんか?」
使者がのそのそとおおよそ、油黒虫とは思えないゆっくりとした動きで前進を開始した。
リヴァイアサンは慌てて盗賊団たちと使者の間に飛び出す。
すると使者はスピードを速めだした。
「な? まさか! スピードアップしている? あの図体で体当たりを仕掛けると言うのか。単純だがあの質量、単純が故に有効ではないか!」
リヴァイアサンが悲鳴にも似た叫びをあげると、再び詠唱を開始した、泥を作り上げ渦へと変える。
しかし使者は気にせず距離を詰める。
「間に合うか!」
渦を濃い霧へと変えるが、使者の巨体が眼前に迫っていた。霧を作り終えたが回避は間に合わず。即座に撃てる魔法で勢いを削ぐも勢いは殺し切れず、リヴァイアサンはその巨体に撥ね飛ばされた。
そしてそれでも勢いは完全には止まらず、街の北側の壁が破壊された。
「ぐぐぐ! なんという威力! これは身体が維持できん!」
リヴァイアサンの上半身と下半身が真っ二つとなる。リヴァイアサンの体液が散らばり、生臭さが辺りを漂う。
すると使者の動きが少し鈍った。
「ぬ? ぐぐ……どうやら、我の体液は、お好みではないようだな?」
すると体液を先ほど作った霧へと混ぜる。すると使者の触角がシュンとなり後退した。
リヴァイアサンが最後の魔力と体液を使い、更に濃い霧を作ると。使者はたまらずに後退した。
バラバラになりながらもリヴァイアサンは霧を作りつずけた。
「……身体が維持できぬと、もはやここまでか、だが、後退させることはできたようだな」
使者はさらに後退すると、本来予定のルートまで下がっていった。
「……さて、主よ後は任せたぞ」
そういうとリヴァイアサンは活動を停止した。
――
――――
本来のルート付近で待機していたアンジェリカ達も使者の姿を確認していた。
「凄い音がして土煙と霧が見えたわね、街に被害が出ちゃったみたいね」
「流石に仕方ないっすよ、でも使者の姿が確認できたっすよ」
マーシャが使者を指さした。
「リヴァイアさんは上手くやってくれたみたいね、うん……?」
うんうんと言おうとしたところをアンジェリカが口をつぐんだ。
「どうしたんすか?」
途中で口をつぐんだアンジェリカにマーシャが尋ねた。アンジェリカはこぶしを握り締めるとぼそりと言った。
「リヴァイアさんの魔力が消えたのよ……」
次回は『最後の追い込み』でございます
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