46話 使者の使い
町長に話を通すのも騎士団に任せ、アンジェリカ達はアンジェリカの魔法道具をかき集め各地を周る。
溜池に向かうと既に騎士団の魔術師たち、さらには魔法の使える街の人たちも集まっていた。
「思った以上に協力者がいるわねぇ」
「逃げ出す人いないみたいっすね」
「地元愛が強いのねぇ」
そんな事を言いつつ、変質の魔法陣が書かれた紙の説明をして紙を配っていく。
説明を受けた人たちは魔力を込めて作業を開始していた。
溜池はそこそこの大きさだが、作業する人数も多いためか早々に水質変化が起きだした。
「早いっすねぇ」
「そうね、じゃあ、次に行きましょう!」
すると二人は今度はロープを届けに向かう。
――
――――
ヴィヴィアン達も着々と準備を進める。
ここのメンバーは特に入念に準備をしていた、おそらくここへの妨害はかなり厳しいものとなるだろう。
「足止め用の道具は多めに準備したほうがいいな」
ゼノがそう呟きながら、罠らしきものをチェックしていた。
隣ではリノが回復薬を準備しており、ルーシアもマジックポーションや魔法の箒を準備していた。
騎士団も武器の準備を整え、バーモント卿を捕まえる予定の部隊は準備を終えていた。
街の人たちも出来る事を開始しており、街から逃げ出す者は殆どいなかった。
そして各自が準備を終える頃に、使者の方からも動きがあった。
――
――――
使者の後ろにあった卵が蠢いているとの事であった。
「どういうことだ? 使者の卵はまだ活動しているというのか? まだ何かが産まれると言うのか?」
サントスは報告を聞くやいなや、卵の様子を見に行くサントスとそれについていく騎士。
そして激しく蠢く卵を見たサントスと騎士、その様子に先ほどの騎士が驚きの声を上げた。
「先ほどより激しく蠢いております」
「なんだと? 急ぎ騎士たちを収集せよ! そして警戒態勢に入れ」
「は!」
サントスの指示を受け伝令の騎士は招集に向かう。
すると五分もしないうちに騎士たちが揃う。はっは! よく訓練された騎士たちだ!
しかし騎士たちが揃うとほぼ同時に、卵から数匹の油黒虫が、しかも大型犬ほどの大きさの油黒虫が出現した。
「なんだと!」
サントスが叫び指示を出そうとする前に、油黒虫たちは集落のあったあたりへと飛んでいった。
「総員、一種警戒態勢!」
サントスが叫ぶと騎士たちが陣形を整えた。
そう、卵はまだ蠢いていたのだった
「街へ伝令だ! 第一部隊はここで警戒せよ! そして第二部隊は街へと急行し街の防衛だ!」
サントスが次々に指示を出す、すると卵からまた更に一〇匹ほど大型犬ほどの大きさの油黒虫が登場する、使者自体は動いてはいない。
「使者のさらに使いと言ったところか?」
サントスが隣に立つ副将らしき男に話しかける。
「そのようですね、集落の人々は避難させてありますが何故集落へ?」
「わからん……まさか、使者の餌を探しに行ったのではないか」
サントスが副将の男とそんな会話をする。
「餌と言うより贄見たいですな……サントス団長! 贄だとしたらあの集落には盗賊団が住み着いていたとの報告があったはずです!」
すると集落へ飛んでいった油黒虫が数十名の盗賊らしき男たちを捕まえて使者の前に置いていく。
「どうやら読みは当たりの様だぞ! 贄は与えてはいけない! 総員攻撃開始だ!」
弓を構えた騎士たちが矢を放つ。しかし、二陣で産まれた油黒虫たちが邪魔をする。
「団長! アレを!」
騎士の一人が使者を指さすと、そこには見せられないよな光景が広がっていた。
「う、うわぁ! た、たすけ……」
盗賊の一人を頭からボリボリと食べだす使者、儀式的なモノでもなくそのまま、容赦なく人間を食べているのだった。
「う、なんたることだ」
その光景を目にした他の盗賊たちは、腰を抜かしてしまいそのばでもがくだけであった。
なんとか這ってでも逃げようとする者もいたが、それもかなわず使者の使いに引きずられて戻ってくる。
まさに地獄絵図と化していた。
「盗賊とはいえ放っておくことは出来んが……なんとしてでも使者の使いを退けろ! あいつ等が全員捕食されたら何が起こるかワカラン!」
しかし、使者の使いは倒せたものの騎士団の奮闘はむなしく盗賊団はどんどんと捕食されていく。
そして使者の使いの第三弾が現れた。
「く、街には絶対に入れるなよ! 奮闘せよ!」
そして捕食が終わった使者は再び動きを止めるのであったが……背にひびが入り始めたのであった。
「サントス団長! 使者が使者が……脱皮を開始しました!」
「罠の準備はまだ終わらないのか?」
焦る騎士団たち、しかしそのころ準備の方も終わるのであった。
次回『決戦!使者対オバちゃん達 その1』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます