38話 笑えないくらいに笑えてきますな!
バーモント卿とダウ司祭たちは合流して出現した物体を眺めていた。
「あれがビレシワ様の使者の卵……」
「ダウ司祭ようやくここまで来ましたな」
「うむ、アレが羽化するのが待ち遠しいな」
感激にむせび泣くオッサン二名、なんか汚い絵面である。
むせび泣き続けるわけにもいかず、気を取り直したオッサン騎士がオッサン司祭に話しかける。
「ダウ司祭、ここからは孵化を待つ待ちの戦いになりますぞ」
「うむ、そうなるとこの大きさは仇となるな」
まあ、幅一〇メートル、高さも四メートル近いサイズの卵なんて誤魔化せるわけもない。
「このままでは近いうちにこれは王へと話が行くでしょう、となるとおそらく第一か第三……おそらく第三騎士団が動くことになります」
「情報収集を得意と騎士団だったね」
「ええ」
第一騎士団は戦闘メインではあるが基本的には万能タイプの騎士団である、第二は戦闘特化型、第三が調査、情報収集やからめ手での戦闘をメインに行う部隊であった。
「なんとかして時間稼ぎが出来ないものか……」
少し考えこむバーモント卿、すると何かを思いついたかダウ司祭に話しかける。
「ダウ司祭、いっそこの卵がビレシワ様の使者の卵であると拡声珠を使い、我々の計画を国中に宣言するのはどうか?」
バーモント卿の提案にダウ司祭は驚いた顔をした
「早計では?」
「いや、この時期だからこそ効果があると思いますな、王国は情報が少ないはずそこで、この卵が大きな爆弾であると宣言してしまえば躊躇い様子を見ることになりませんか?」
「一理ありますな、しかし諸刃の剣でもあるな」
「ええ、失敗すればすぐに討伐部隊を編成されるでしょうな、だが遅かれ早かれ騎士団は来るでしょう」
ダウ司祭も少し考えたが、バーモント卿と同じような意見に達したようだった。
「仕方ないですな、宣言し先手を打つことにしましょう」
するとバーモント卿は頷き部下の一人を呼び指示を出した。
そしてロクでもないであろう手を打ちつつ、二人は部下を率いて撤収するのであった。
――
――――
巨大な卵が出現すると、当然ながら皆ビックリする。
ここは王都、アンジェリカの住む街からは少しばかり離れている。
「第四騎士団が失踪して、今度はわけのわからぬ巨大な何かの出現。いったい何が起きているのだ?」
玉座に座り報告を聞きながら頭を抱える中年の男がいた、身なりからしてこの国の王であろう。
「いやー、笑えないくらいに笑えてきますな! 王よ」
立派な鎧に身を包んだ中年の男が、カラカラと笑いながら王に言った。王に対していささか無礼な態度であったが、王は意に介しては無いようだった。
「笑っている場合ではないぞサントス、バーモント率いる第四騎士が行方不明というだけでも頭が痛いのに今度はあの巨大な豆のようなものの出現」
「いったい、何が起こってるのでしょうなぁ」
なかなか豪快な性格の騎士のようだ。
すると兵士が一人国王の場所まで来て、新たな報告をする。
「報告します、どうやらこの巨大な何かが出現したことにバーモント卿が関わっている可能性があるようです。
兵士の報告に国王とサントスと呼ばれた騎士が渋い顔をした。
「懸念が現実になりましたな」
サントスが低い声で国王に言った。
「バーモント卿がのぉ、時期的に見ても関係していたか。そうなるとバルトン襲撃も第四騎士団の仕業となるか」
「でしょうな」
国王は溜息をつきさらなる情報収集をするよう指示を出した。
「場合によってはお主にも出てもらうぞ」
「承知、しかしまずは第三騎士団ですな?」
「そうだな、ロウエルをここに呼べ」
国王が近くにいた兵士に指示を出した。指示を受けた兵士が去っていく。
「まったく何がどうなっておるのやら……」
――
――――
「――うぁ? 思い出した」
ヴィヴィアン覚醒!
次回はヴィヴィアンの記憶がついによみがえる!
そしてアンジェリカは卵を見て呟いた
「あら、やだ。あれ大きいけど油黒虫の卵じゃないの」
次回『オバ魔女アジャルタ』
『それでかくてもゴ……油黒虫の卵じゃん!』こうご期待
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