39話 それでかくてもゴ……油黒虫の卵じゃん!
――
――――
デカイ卵が出現する少し前――
「――うぁ? 思い出した」
ヴィヴィアンが唐突に叫ぶ、すると近場にいた魔女教師がヴィヴィアンに尋ねる。
「何を思い出したのかしら?」
「わ、わたしの使命。今起きてる事」
ヴィヴィアンの意味深な言葉を聞き、尋ねた魔女教師は急いでメルリカ婆さんを呼びに行く。
「ヴィヴィアン、待ってなさい! 今メルリカ先生を呼んできますから!」
少しすると慌てたう様子でメルリカ婆さんがやってきた、ゼーハーゼーハー息を荒げて今にも死にそうである。
「ゼェゼェ、ヴィ、ヴィヴィアン! 何か思い出したって?」
死にかけのメルリカ婆さんに、ヴィヴィアンはしっかりと頷いた。
しかし、ヴィヴィアンのその表情は記憶を取り戻したとしても浮かない顔をしていた。
「悪神が、蘇るる……」
ヴィヴィアンの口からとんでもない言葉が飛び出した。それを聞いたメルリカ婆さんは怪訝な顔をする。
「悪……神だって?」
ヴィヴィアンから出た悪神なる言葉に不安を覚える、事実だとしたらとんでもねぇこったぞおい!
「試験場の迷宮、そこに道が、ある」
「な、なんだてー!」
MMR? そんな勢いで驚くメルリカ婆さん。
「こうしちゃいられないね、急いでそこに向かおうじゃないか、学園長説得とかもう後回しさ!」
そういうが早い、メルリカ婆さんはさっさと行動を開始した。
それから二時間ほどすると準備が終わったのか、数名の教師と何故かルーシアがそこにいた。
「よし! アンタ達。ヴィヴィアンの記憶を頼りに試験場に向かうよ」
教師たちは状況を理解していたが、突然連れてこられたルーシアはちんぷんかんぷんだった。
「急に連れてこられて何の話なんですか? 依頼だったんじゃないんですか?」
「アンタに依頼だよ、前にいった試験場へもう一度行くよ」
ルーシアは全く状況が呑み込めていなかったので、メルリカ婆さんが簡単に状況を説明した。
「と、いうことはヴィヴィアンさんの記憶が戻って、なんか変なのが復活するかも? って話なんですね?」
「そういうことだよ」
「それでなんで私なんですか?」
まあ、理由を聞かされても納得はしないよな。
「いいんだよ、探知系魔法の得意なのがアンタしか思い浮かばなかったんだよ」
そんなやりとりをしていると、ヴィヴィアンが身震いをした、そして青い顔したヴィヴィアンが呟いた……ゾンビの青い顔ってなんだろう?
「うあ……遅かった、ビレシワの使徒が復活した、だけどまだ終わってない」
とんでもない事を口にする、その言葉に場がざわついた。
なにせ乗り込むつもりだったのが、いきなり出発前に出鼻をくじかれたのだから。
「遅かったって、さっきのさっきじゃないか」
「悪神を封じるに、悪神の像が必要、きっと封印を解くときに使われてる、それを探す」
ヴィヴィアンのとんでも発言に教師陣とルーシアは驚きを隠せないでアホみたいな表情をしていた。そう、どんどん大きな話になっていく、その場にいた全員がそんな顔をしていた。
「とりあえず、当初の目的通り試験場にむかうよ!」
こうして、ヴィヴィアン達は試験場へと向かうのであった。
――
――――
バーモント卿達の儀式の後約三日後の街にて。
紫色の霧が森の少し開けた場所に集まっていた、場所的にはアンジェリカ達のいる港町から北の方、魔女学校の試験場とアンジェリカ達が探索した遺跡の中間地点であった。
その霧がはれた所に、その黒い大きな物体は出現した。
その大きな物体は街からでも見る事が出来るほどの大きさであった。
当然、街の人はびっくり。王国へと使者も走るわけだった。
「アレなんすかね、無駄にデカイっすよね」
マーシャがデカイ卵を指さして言った、マーシャ以外のメンバーも謎の黒い物体に困惑している。
と、いうかマーシャばかりか街の人全員が卵を見て首をかしげていた。
「あら、やだ。あれ大きいけど油黒虫の卵じゃないの」
大きな卵を見たアンジェリカがそう呟いた。
「油黒虫っすか?」
マーシャがアンジェリカの言葉にびっくり。
マーシャどころかゼノリノやリヴァイアサンもびっくり。
「そんなバカな、主よいくらなんでもあのサイズはないであろう、あのサイズだとドラゴンより巨大な虫が産まれることになるぞ」
「そうなのよねぇ、あのサイズ異常よねぇ、突然変異ってヤツよねぇ」
油黒虫の卵みたいと聞いて全員が渋い顔をしていた。
しかし、出てきたものは仕方がない。そして今すぐどうとかいう話でもなさそうなので、アンジェリカ達も街の人たちも自分たちの生活に戻るのであった。……この街の住人達って肝が据わってるのか色々鈍いのかしらないが大きな混乱にはなっていないようであった。
そしてここまで事件に関わってこない主人公も珍しい……と言いつつ次回へと続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます