24話 探索2

 部屋に入ったアンジェリカ達の正面には階段があった、そしてその隣には何故か宝箱が置いてあった。


「……ねえ、オバさん疑問なんだけど、なんで宝箱なんてあるのかしら? あれあからさまに怪しくないかしら?」


 至極ごもっともな意見をアンジェリカが問う。


「あれはダンジョン七不思議の一つっス。何故かある宝箱ッスね、困ったことに中身はちゃんと使える者も入ってるんすよ」

「それをやって誰が得するっていうの?」

「それが謎だから七不思議なんすよ」


 マーシャの説明にゼノとリノも頷いている。


「しかも一定期間で復活するから更に不思議なのよね」

「ああ、宝箱によっては中身が変わる箱まであるからなぁ」

「それってもうホラーよねぇ……リヴァイアさんは知ってる?」

「知るわけなかろう」


 リノとゼノも宝箱を謎に思ってるようだった、謎は深まるばかりであった。

 そしてゼノは宝箱に近付くとまず、は石をぶつけて調べる、そして何もないと確認が済むと次に鍵を調べる、それでも何もなかったようなので箱を開ける。


 そこにあったのは淡く光る玉だった。


「お? ラッキーだな。ライトストーンか」


 ゼノが玉を持ち上げる。そして玉をリノに手渡していた、弾を受け取ったリノが玉を確認すると、ニンマリと笑った。


「へぇ、最初のフロアでこれが出るのは美味しいですよ。敵も微妙な強さでしたし」

「リノちゃんは鑑定が出来るのね? 凄いわー」


 アンジェリカは感心したようでポンと両手を叩いた、マーシャもリノの表情を見てニヤっと笑いリノに尋ねる。


「して? どれくらいっすか?」

「そうだねー、これだと最低五〇回以上は使えるから二〇〇〇リシェってとこかな? 加工された道具ならこの倍の値段になるよ」

「悪くないっすね」


 リノが持つ医師をマーシャとアンジェリカは除きながら感心していた。


「へー、こんな石がねぇ。これ宝石じゃないのよねぇ」

「はい、この医師はですね、日の光にしばらく当てておいて、少し衝撃を与えると光りだす石なのでダンジョンとかに光源として持っていく冒険者も多く、割と便利な道具なんですよ」

「へぇ、凄いわね」


 オバちゃんも感心のアイテムだ、ダンジョンではこういったものを集め、売却することにより生活をしている冒険者もいる、この七不思議はなんだかんだと疑問に思いつつも冒険者の助けになっているのだった。


「宝箱は一個しかないっすけど敵があの強さなら、このフロアは梅ランクの冒険者でも問題はないっすね」


 マーシャは思ったことを紙にメモしていく、どうやらギルドへ報告のためのメモのようだ。


「あら? ちゃんとメモしてるのね。オバさんメモとかあまりしないわねぇ、それで次の日とか忘れちゃうのよねぇ」

「ま、これが仕事っすからね。ってアジャルタさんの仕事でもあるんすよコレ」

「あらあら、そうねぇ、同行してるのならそうなるわねぇ」


 アンジェリカ典型的なダメな人である。

 そしてマーシャとアンジェリカがアホな事を言ってる間にも、ゼノは階段を調べていた、実に働き者の青年である。


「よし、階段に問題は無い。次の階に行こう」


 ゼノのが皆に次へ行くよう促すと、マーシャとリノは頷き階段へと向かう。アンジェリカも慌ててマーシャ達の後を追った。

 マーシャが先頭に立ち階段を登る、マーシャに続きリノとアンジェリカが続きゼノが続き、殿をリヴァイアサンが務める。


「なんか懐かしいわねぇ、あの時もマーシャちゃんが最初に登っていったわねぇ」

「懐かしむほど昔の話じゃないっすよ……」


 その通り、ほんの一ヶ月と少し前の話である。

 そして全員で周りを見回す、二階は一階と同じような造りになっていた。


「一階と同じような造りねぇ」


 うーん、と唸りながらアンジェリカがそう言うと、リノとゼノが答えた。


「そんなに簡単には変わらないと思いますよ」

「そうだぜ、アジャルタさん。ダンジョンなんてのは基本的にどこも似たような造になるものさ」

「それはそれで、寂しいわねぇ。もっと楽しい所じゃないと人は来ないわよ」


 テーマパークじゃないんだし、何故階ごとに色々と模様替えせにゃならんのだ。そしてダンジョンに来るのは殆ど冒険者だけである。

 アンジェリカ達がやはりどうでもいい会話をしていると、ズルズルと物音がした。


「あー、お客さんが来ちゃったっすねぇ」


 マーシャが言うなり物音の方を向く、アンジェリカもつられて向くと、そこには半分身体が腐り落ちた死体が三体ほど歩いて向かってきていた。


「……あー、ゾンビですね」


 リノが嫌そうな顔で言った。まあ、腐った死体みて喜ぶ奴はいないね。


「あらー、ゾンビってヴィヴィアンちゃんとは大分違うのね」

「ヴィヴィアンは特殊中の特殊例ッスよ」


 そしてゾンビもこちらに気付いたのか、突然走り出した。


「あー、しかも走ってくるタイプっすか……」


 マーシャがうんざり顔で言った。どうやら面倒なタイプのようだ。


「もー、何だか汚いわねぇ。こんなの武器で攻撃したら武器が汚れちゃうじゃないの!」


 アンジェリカはそう言うと、ゾンビたちにピンポン玉くらいの大きさの光弾を放つ。

 光弾が先頭のゾンビに当たるとゾンビが炎上した。


「すご!」


 アンジェリカの魔法を見てリノが目を丸くする。


「ふふふ、オバさんね。油黒虫を退治できるように魔法の早撃ちを練習したのよ、あのくらいの玉ならポンと撃てるわよー」


 得意げな顔してリノに自慢する、しかし経緯が酷い。

 そして残りの二匹も走ってくるが、今度は水の玉が右側のゾンビにぶつかり弾ける。


「ふむ、確かにアレに触れて戦うのは衛生的によろしくは無いな」


 リヴァイアサンの魔法である、最後に緑の玉が最後のゾンビにぶつかると風を巻き起こした。

 ゾンビ達はアンジェリカ達の所までたどり着くことなく全滅した。


「相変わらず二人とも強いッスね、ボクもアレから魔女魔法は練習してたっすけど二人ほどの威力はないっすよ」

「まあ、我が主は規格外だからな」


 三人の戦いを見て、ゼノとリノは唖然としていた。


「アジャルタさんの魔法凄い。兄さん、戦闘に関しては私達の出番はなさそうね」

「あ、あぁ。そうだな」


 ゼノとリノが頷き合っていた……

 戦闘が終わるとアンジェリカがマーシャに新魔法の話をしていた。


「オバさんね、今度は五本の指に火の魔法の玉を作り出して、同時に撃つのを試そうと思ってるのよ?」


 アンジェリカが指を開いて指一本ごとに光をともす。なかなか器用な事をやっている。


「それ、絶対にやめるッスよ。色々とダメっすからそういうの」

「え? 強いと思うのに」

「いや、それは何かダメな気がするっス」

「そう? そこまで言われると仕方ないわねぇ」


 アンジェリカとマーシャがそんなやり取りをしてる間に、リヴァイアサンは周囲を警戒し見回す。

 実に見た目はアレだが優秀な使い魔である。


「ふむ、魔力の反応も無いな、付近にゾンビはいないようだ」

「リヴァイアサンも優秀だなぁ」

「凄く助かるね」


 リヴァイアサンの仕事ぷりにも関心するゼノとリノである。


「さて、探索の続きと行くっすよ」


 さあ、いよいよ二階の探索開始である。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る