23話 探索1

 ――

 ――――


「なかなか、興味深いですなぁ」


 少し恰幅の良い髭面の男が部屋を見回しながらそう呟く。男は護衛の騎士らしき男と部屋を調べていた。


「で、結局ここはなんなんだい?」


 男達とは別の声が調べていた男に尋ねた、声の主はメルリカ婆さんだ。


「そうですな。おそらく元々は宝物庫か何かだったと思われますな」

「宝物庫かい」

「ええ、ただ昔に盗掘されておりますな。何故壁にして隠したのかまでは分かりませんが。盗掘後に扉を壊し壁にしたと言う事です」


 恰幅の良い男はメルリカ婆さんの質問に答えた。


「なんでまたそんな面倒な事を?」

「さあ? そこまではわかりませんね。今のも現状見る限りでの憶測ですから、もっと調査をすれば分かることも多いと思いますが」

「そうかい、そりゃ昔の事だから仕方ないね。とりあえずは引き続き調査はバルトンさんアンタに任せるよ」


 メルリカ婆さんと一緒にいたのは、王国から派遣された考古学者のバルトンという男であった。

 先月アンジェリカ達の試験の時、見つかった部屋の調査をしていたのであった。


「残っていた像も気になるねぇ」

「き……にな、るるぅ」


 部屋の隅っこで倒れていたヴィヴィアンも気になる様だっ……て、いたのかよ!


「うわ! びっくりした!」


 ヴィヴィアンが動いたことでびっくりするバルトンであった。


「ああ、そいつはほっといていいよ」


 おほんと咳払いをして取り繕うバルトン。


「そうですな、あの像はおそらくですが何か意味はある気がしますが。盗掘犯的には美術的の価値が無いものだと思ったのでは?」

「まあ、そうなるねぇ。どう見ても子汚い像だしねえ」

「ええ、それなりの大きさと重さがあるので邪魔になると思ったのでしょう」


 メルリカ婆さんとバルトンが話してる間も、護衛の騎士は色々と調べているようだった、騎士は博識なんだな。


「まだまあ調べる必要性があるようでうな」

「ああ、分かったよ。それじゃあ、引き続き頼むさ」


 バルトンが護衛の騎士に話しかけた。


「カーチェス卿、引き続き護衛を頼むよ。ここはまだまだ色々な事実が眠ってそうだよ」

「わかりました、教授。王国第四騎士団が責任をもって護衛いたします」


 カーチェス・バーモント卿は王国の第四騎士団の団長である。護衛や防衛を主な任務とする団である。


「よし、では調査の再開といこう」


 そういってバルトンは他の調査員に指示を出していくのであった。


 ――

 ――――


 そして我らが主人公のオバちゃん達はと言うと? ゼノがランプを持ち先頭に立ってゆっくりと進んでいた。

 入るとそこはいきなり大きなフロアで教会のようになっていた、しかし神像があったと思わしき場所には崩れ壊された像が立っていた、フロアは椅子も床の絨毯もボロボロだった。


「光コケのおかげで、思ったよりは明るくて助かるな」

「そうはいっても油断はしないでよ、兄さんが倒れたら私たちも危ないんだからね」

「わかってるよ」


 ゼノリノ兄妹が罠を警戒しつつ進み、マーシャとアンジェリカは後方を注意しつつ歩みを進めていた。


「今のところは魔物もいなくて助かるっすね」

「拍子抜けよー、オバさんもっとわんさか魔物がいると思ってたのよ」

「いなけりゃいないほうがいいんすよ」

「それもそうねー」


 どうやら序盤の出だしは好調のようだ。大きなフロアを抜けて奥に進む、部屋への入り口に罠が有ったりもするが今のところはゼノが問題なく解除して進んでいる。


「ま、今のところは楽勝だな」

「兄さんそれフラグって言うのよ」

「はは、まさか」


 とゼノがいった直ぐにアンジェリカが言葉を発した。


「あら? あそこで何か動いたわね」


 すると、リヴァイアサンもマーシャも反応した。


「お客さんみたいっすね」

「うむ、魔力の流れからするにアンデッドだな。食えそうもない臭いだ」


 するとボロボロなローブを着たスケルトンが一体に、盾と剣を持ったスケルトンが三体やってきた。


「あー、スケルトンメイジとスケルトンソルジャーすか……こいつ等基本的に美味しくないんスよねぇ」

「そうなの?」


 アンデッドを見てやな顔をするマーシャにアンジェリカが尋ねた。


「あいつ等は素材として使える部分が少ないんすよねぇ。たまに良い装備持ってたりするんすけどねぇ、基本的に不味いっす」

「そうなの残念」


 アンジェリカも段々慣れてきたのか魔法詠唱を開始。そしてアンジェリカを護るようにリヴァイアサンとマーシャが骨共の前に躍り出る、そしてマーシャはメイスを構えた。


「ん、槍ではないのか?」


 リヴァイアサンがマーシャの得物を見て言った。

 腰には二つに分けた槍をつけていたが他のも武器を持っているのだった。


「まあ、槍が一番得意っすけどメイスや剣も使えるんすよ。ボクこう見えて案外器用なんッスよ」


 そう言いながら、一番手前にいたスケルトンソルジャーの頭部をメイスで殴打し破壊する。


「こんなもんっすね」

「なるほど」


 リヴァイアサンもワカメの手でスケルトンソルジャーを巻き取り地面へと叩きつけた。

 一瞬で二体が倒されたのであった。


「……あれ? これオバさん出番ないんじゃないのかしら?」


 そして、出番を心配するオバちゃんである。


「無いかもしれないっすねー。この程度なら余裕っすもん」

「困ったわねぇ」


 何が困るのか? そして困った顔は全くしていなかった。

 そしてマーシャの言う通りになりそうであった。

 残りのソルジャースケルトンをメイスで打倒し、残りのスケルトンメイジにリヴァイアサンのウォーターボールが炸裂し、崩れ落ちる所だった。


「あら? あらあら、オバさんの出番無かったわねぇ」

「まあ、無いに越したことないっすよ。アジャルタさんの火力はある意味で最終兵器っすから」

「そう言われちゃうとそうねぇ」


 そして、スケルトンとの戦闘の後もこれといった敵が出てくることはなかった、最初のフロアは難なく探索が進められていく。

 すると奥に閉ざされた扉が現れた、いかにもな扉であった。


「さて、本命っぽそうな扉が出てきたな。このフロアは最初のフロアなためかそこまでの罠が無かったな、こちらとしては楽でいいが」


 ゼノが罠を調べながらそう呟いた。呟きに反してゼノの目と手は油断せずに罠を探す。


「よし、この扉にゃ何もないな」

「ふふふ、ならこのオバさんが一番乗りで」


 ゼノの言葉を聞いてアンジェリカが扉を開こうとするアンジェリカ。しかしそれをたしなめる声がした。


「アジャルタさん、不用意に扉の向こうに行かないでくださいよ」


 ゼノがアンジェリカに声をかけて止める。


「扉を開けたらすぐに落とし穴って、パターンもあるんですからね」

「む、それは困るわねぇ」


 そういってゼノが扉を開けて、すぐにリノが少し大きめの石を扉のすぐ奥に投げる。コツンという音が響くだけで何も起きないようだ。


「よし、多分何もないな」


 ゼノがそう言うと皆が部屋に入る、そしてその部屋には……次回へ続く


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