14話 磯〇ー戦闘しようぜー
マーシャが大部屋に着くと、うねうねと動くゲル状の魔物がいた。
索敵と同じく五匹がそこにいた。
「ひゃー、真っ赤よー。何あの真っ赤なゼリーは?」
「プニャンピーって魔物なんすけど……赤いプニャンピーなんて見た事ナイッスよ?」
プニャンピーなんて名前だが、分かりやすく言えばスライムのお仲間である。
「プニャンピーですか? 初心者冒険者のクエストでよく退治依頼の来るアレですよね?」
「そっすよ。あのザコモンスターなんすけど普通は青なんすよ。しかし見た目は完全にプニャンピーっすね。そうなるとゲルの中にある丸い玉みたいなのがコアっす、アレを攻撃すれば簡単に倒せるはずっすよ」
「初心者クエストってことは弱い敵なのね、ならオバさんも頑張っちゃうわよー」
赤いのは見た事ねぇっつってんだろ! オバさんは実はあまり人の話を聞いていないのであった。
アンジェリカは右腕をぐるんぐるんと回して、やる気をアピールしていた。
「赤いのは見た事無いっすから、注意していくっすよ」
マーシャが注意を促したのにもかかわらず、ヴィヴィアンが飛び掛かる。
それを見たマーシャが微妙な声を上げる。
「ぇー」
しかし、想像以上に素早い引っ掻き攻撃である。
「お? 思った以上に鋭い攻撃っすね!?」
「本当です、普段の動きとは違います」
マーシャとルーシアが感心するが、ヴィヴィアンの攻撃は赤プニャンピーには当たらない。
そう赤プニャンピーが攻撃を回避したのだ、しかも割と速く。
「んえ? プニャンピーより速い! こいつは亜種ッスね。そうなるとプニャンピーと攻撃方法も違うかもしれないっすね」
「そのプニャンピーってどんな攻撃するのかしら?」
アンジェリカはマーシャに尋ねる。
「基本的には体当たりだけっすね、ただ相手の動きが止まると捕食しに来るっす、捕食にだけは注意っすね、捕食されると骨しか残らないっすよ」
「「え?」」
マーシャの話を聞いて動きを止めるアンジェリカとルーシア。いや、弱くたって魔物だしそら厄介な攻撃の一つも持ってるはずさ。
「まあ、ボクが引き付けるんで援護はお願いするっす」
「わかったよ、おばさんの覚えたての支援魔法の出番ね!」
アンジェリカは詠唱開始するとマーシャに向かって魔法を使う。
するとマーシャの身体が淡く光りだす。
「な! なんすかこれ? 体の奥から力が湧いてくるっすよ?」
「おばさんが秘密裏に覚えた、何だかよく分からないけど凄い支援効果の魔法よ。まあ、何か後遺症もあった気がしたけどね」
「え?」
マーシャの動きが止まる、何言ってんだ? そんな顔でアンジェリカを見ている。
「そうそう、確か三日後に凄い筋肉痛に襲われるって書いてあったのよ」
「え?」
マーシャ完全に固まる。
もうかけちゃった魔法は仕方ない、マーシャには三日後に凄い筋肉痛になってもらうとしよう。
「凄いってどれくらい凄いんすか!?」
「さあ?」
「……あー! もう仕方ないっす! 仕方ないのでささっと倒すっすよ!」
マーシャは凄く素早い動きで赤プニャンピーのコアを槍で刺し貫いてゆく。
「うわー、めっちゃすげーっす!」
あっという間に赤プニャンピー五匹を始末してしまったマーシャであった。
「凄いわー、マーシャちゃんの動きオバさん全然見えなかったわよー」
「三日後が怖いっす、あと赤くて動き早くても所詮はプニャンピーっすね」
こうして、ほぼマーシャ一人の活躍によって一行は探索を続ける。
しかし徐々に慣れてきたのか変化も出てきた。
「プニャンピーばかりですね」
「割と慣れてきたわよねぇ」
そう、なんだかんだでルーシアとアンジェリカでもプニャンピーが倒せるようになってきていた。
青いプニャンピーならヴィヴィアン一人でも倒せる、マーシャは余裕で赤も倒すのだった。
ルーシアが敵を索敵し、敵に気付かれる前にアンジェリカの魔法で一掃なんて連携まで出来るようになってきていた。
「思った以上に早い成長っすね」
マーシャも感心してた、水晶の向こうでメルリカ婆さんとリヴァイアサンも頷いていた。
こうして更に進んでいく一行であった。
「凄い罠とか全くないのね、オバさんもっと凄い罠があるかと思ってたのよ」
「流石に試験で即死級の罠はないんじゃないですか?」
「それもそうねぇ」
子供相手の学園の試験で死人出てたらそりゃあ問題になるだろうが、ここは剣と魔法の世界その常識が通用するかな?
「油断は禁物っすよ、ダンジョンは罠やモンスターばかりじゃないっすからね。色々な危険があるんすよ」
経験者の言葉はやはり重いのである、アンジェリカもルーシアも息を飲んだ。
「実際はどうなのだ? 流石にここで主に死なれたら我の沽券にもかかわるのだが」
リヴァイアサンが隣のメルリカ婆さんに尋ねる。
「まあ、マーシャがいるから安心だとは思うが、あの試験用の迷宮は初心者の冒険者でも苦労せずいける程度になってるよ。子供用は更に難易度的には低くなってるさ。一応説明した通りの安全装置である腕輪もあるし、この使い魔がいるから道に迷っても見つけれるようにはなってるよ」
「まあ、今のところは大したモンスターも出てきてはおらぬようだしな。問題ないであろう」
「ま、そういうこったね」
二人は水晶を通して一行を見守っている。
稀に簡単な罠があるがマーシャのおかげで難なく解除し進んでいる。
モンスターもプニャンピーとその亜種ばかりなためかそこも問題なく進んでいる。
「大分奥まで来たと思うけど、どうなのかしら?」
あれから更に時間が経った、アンジェリカが奥まで来たと思マーシャに声をかけた。
マーシャはメモを取りながら答える。
「そっすね、聞いた話だとこの迷宮は全部で五階層って話っすよね。いまは四階層なんでもう少しっすね、とりあえずはここで少し休憩にするっす」
アンジェリカが茣蓙を敷いて水筒を取り出す、まるで遠足のようだった。
「はは、まるで遠足っすね」
「オバさん、皆でする共同作業は好きよ」
「私は冒険者の方のような体験ができて、怖いですけど少し楽しいですよ」
「うぉぁぁぁ」
休憩の時にアンジェリカがさり気にイワシのパイを差し出していた。それは嫌がらせだろ?
さり気なく出されたが、見た目からしてヤバさが伝わるのか誰も手に取らない……いや猛者がいたヴィヴィアンだ。
「がっが、うまうま」
ヴィヴィアンがパイを食べるのを見て驚きの表情のマーシャとルーシア、そして水晶の向こうのメルリカ婆さんにリヴァイアサン。ゾンビに好き嫌いは無いのだ。
それから一五分ほど経った頃だった。
「さて、そろそろ進むとするっすかね」
「わかったわよ」
準備をして探索を開始する一行。
「さて、ここには階段を護るガーディアンがいるのだけど、どうするかね?」
水晶を覗き込みクックックと笑うメルリカ婆さん、その姿はどう見ても白雪姫に毒リンゴを食べさせようと企てるがごとく邪悪な魔女にしか見えなかった……
「……まるで悪役ではないか」
「お? 階段のある部屋に着いたようだね」
メルリカ婆さんが邪悪な笑みを浮かべてる間に、アンジェリカ一行は階段の部屋に着いたようだ。
「あら? 階段の前に……魔物かしら?」
「ぷ、プニャンピーじゃないですね?」
「そうねぇ、どう見ても違うわね」
そのフロアを徘徊していたのは、人間の子供くらいの大きさ、肌の色はくすんだ緑で醜い顔をした亜人であった、そうゴブリンと呼ばれる魔物だ。ゴブリン達は手に錆びた剣を持っていた。そうざっと見る限り六体のゴブリンがいるのであった。
「ま、マーシャさん。あれってゴブリンですよね」
「そうっすね、大して強くはない魔物なんスけど。複数いるとちょっと面倒っすね、初心者冒険者だと割となめてかかって痛い目見てる人もいるんで、油断は禁物っすよ」
そう、ゴブリンは一般的にはザコのイメージだが割とずる賢く、あまり舐めてかかると危険である。集団のゴブリンは一人に対して五人くらいで殴りかかってくるようなしたたかさも持つ。
「どうやって戦うのかしら?」
アンジェリカが問う。
「そうっすね、ボクが全部蹴散らしてもいいんすけど。せっかくなんでチームプレイしときますか」
「いいわね、オバさんはりきっちゃうわよ」
「ではボクが突っ込んで一匹づつそちらに送るんでアジャルタさんとルーシアさんにヴィヴィアンで集中攻撃して倒しちゃって下さい」
「わかったわー」
マーシャの提案に、アンジェリカ、ルーシア、ヴィヴィアンが頷いた。
さあ、ゴブリン戦の開始だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます