12話 卒業試験DA!
あれよあれよと、そろそろ一年が経とうとしていた。
「うんうん、学園に来てそろそろ一年ねぇ」
「そうですね、早いものですね」
「ええ、でも一年課程なためか学校らしいイベントが皆無なのよねぇ。残念だわー」
「そうですね、そこは残念です」
アンジェリカとルーシアが思い出に浸っていると扉が開く。
メルリカ婆さんが来たのだった、珍しくメルリカ婆さんが紙の袋を持ってきた。
「よーし、席に着きな。あんた達がここに来て間もなく一年が経つ。割と駆け足だったが基本的なことは大体教えたつもりだよ」
「イベントが全くなかったのは寂しかったけどね。ルーシアちゃんやマーシャちゃんにヴィヴィアンに会えたことは良かったわね」
「まあ、仕方ないさ。一年で魔女の基礎をやらないといけないんだ、イベントをしてちゃノルマは終わらないからね」
大学と短大のような話である。
学園のイベントが盛りだくさんだとやはり時間がかかってしまうだろう、そして例え体育祭があったとしても他のクラスの生徒ではマーシャ一人にも適わないだろう。なにせ他のクラスの生徒は小学生みたいなものだし。
「だが、安心しな。最後は特別イベントさ」
「へー、卒業イベントってヤツっすか?」
「そうさ、卒業試験と言う大イベントだよ」
「「「え?」」」
メルリカ婆さんの試験と言う言葉にアンジェリカ、ルーシア、マーシャが素っ頓狂な声を上げた。最後の最後に試験である、試験と言う事は落ちる事も考えられるのから気が気ではない。
声を挙げなかったヴィヴィアンはきょとんとしていた、状況を理解してないらしい。
「うへー、最後に試験すか?」
「ああ、今までやってきたことを駆使して、挑んでもらう特別クラス用の試験さ」
「特別クラス用の試験ねぇ。具体的に何するのかしら?」
マーシャは渋い顔をしてた。アンジェリカは何をするのかをメルリカ婆さんに尋ねる。
するとメルリカ婆さんは紙の袋から紙を数枚取り出す
「この紙を渡しておこう。そいつは試験の受講票さ。あんたらでチームを組んで魔女の迷宮ってのを攻略してもらう」
「え、えー。私が冒険者みたいなことをするんですか?」
「迷宮攻略、うんうんやっぱいい響きっすね」
「オバさん迷宮とか初めてよー、でもまあ、最後に皆で共同作業っていうのは悪くないわね」
息を吹き返すマーシャと逆に死にかけるルーシアである。アンジェリカはいつも通りにしか見えない。
「そうだよ、あんたたち四人でやるんだよ。リヴァイアサンは魔女じゃないから参加は出来ない」
「あら? オバさんの使い魔なのにダメ?」
「ああ、ダメだね。リヴァイアサンの知識に頼られちゃあ試験になりゃしないからね」
何だかんだで見た目はアレだがリヴァイアサンは優秀なのだ、まあリヴァイアサンが同行すると言う事は、RPGの序盤で行き成り高レベルの仲間が参加するようなものである。
「むう、確かに我が参加するのは主たちのためにはならんな」
「そういうこったね。アジャルタは魔力は高いが魔法の経験が圧倒的に低いからね。行き成りアンタが付いて行っちゃあアジャルタのためにゃならないよ。まあチームでの攻略だしなんとかなるだろ」
「……そうだとよいがな」
リヴァイアサンは不安そうな顔(?)をするのであった。ただその不安は主の身の心配ではなく何かやらかしそう、そっちの心配である。
「ああ、そうそう。あんたらは特別クラス用のエリアに挑戦してもらうよ。普通の子たちが挑戦する迷宮より上のランクさ」
「そ、それって安全性はどうなってるんですか?」
「ああ、こいつは特殊な迷宮でね。ここにある訓練所と同じで魔女の結界を使った迷宮さ。あとで渡すが、『魔女結界の腕輪』てアイテムを装備してりゃその迷宮じゃ死んでも蘇ることが出来る、そんな便利なシステムの迷宮なんで安心して死んできな」
あっさりと、とんでもない事を言う婆さんである。
いくら特別な場所とは言っても、安心して死んできなとは挨拶である。
「しし死ぬのは……ツライ……」
「……あ、あぁ。アンタが言うと重いねぇ」
ヴィヴィアンが死について語ると、流石のメルリカ婆さんもたじろぐしかないようだ。
「行き成り死ぬことは無いんですね?」
「まあそうなんだが、死なないと分かって安心しきるんじゃないよ、試験なんだからね」
「わ、わかってますよ」
「使い魔がダメとなると、しっかり準備しないといけないわねぇ」
安全性が保障されて喜ぶルーシアであった。
使い魔が良ければ準備はしないつもりなんだろうか?
「さてさて、試験は二日後にやるからね、しっかりと準備しておくんだよ。まあ、マーシャがいるのは運が良いねぇ」
「まあ、ダンジョンはいくつか経験してるっスからね、まあ任せておいてほしっすね」
――
――――
そして試験当日になった。
すでに全員が迷宮入口へと集まっていた。メルリカ婆さんもすでにスタンバっていた。
「コイツを渡しておく魔女結界の腕輪さ。あとはこの通行証と紙を渡しておく、ここに書かれた合格の証がどこかにあるからそいつを持ってくるんだよ」
そういってメルリカ婆さんは腕輪と紙を皆に渡す。
「あと腕輪は必ず付けておくように。外してたらいざ何かあったときに本当におっちんじまうかもしれないからね」
そうやって念押しする。
「絶対に外すんじゃないよ、絶対にだよ」
「ええ、えぇ。わかってますよ。なんのフリなのかしらねぇ」
さらに念押しするメルリカ婆さん。もはやお笑い芸人の念押し芸である。
そしてマーシャの方を見ると、真剣な顔でマーシャに声をかけた。
「マーシャ頼んだよ、どう考えてもこの中で一番頼りになるのはアンタなんだからね」
「まあ、やるだけやってみるっすよ」
マーシャは周りのメンバーを見た、苦笑いしつつそう答えた。
「ただ、バランス自体は悪くないんスよね。ルーシアさんは探知系の魔法が得意だし、実はヴィヴィアンも何故かアンデッドなのに回復魔法が得意だし、魔法力の高さである程度なんでもできちゃうアジャルタさん。うん、割と悪くないんすよ、ダンジョンに関しては素人なだけで」
どう考えても玩具としか思えないものを持ってきているアンジェリカ、逆に何も持ってきてないヴィヴィアン、一応それっぽい何かは持ってきているルーシア。そしてポーチと薬やランタン必要そうなモノが入った袋を持ってきているマーシャ。
「オバさん頑張って色々持ってきたわよー」
「いや、釣り竿っているんスか? あとそのヤカン」
「何かに使えるかと思ってねー」
「ま、まあいいや。それじゃあ最終試験とやらにいくッスかね」
こうしてきっとロクでもない最初にして最後の試験が幕を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます