4話 魔力測定
昼食時間も終わり四名はまた教室へと戻る。
「食堂に子供たちは少なかったわね」
「天気もいいし、外だったんじゃないすか?」
「そうね、子供は元気が一番ですものね」
「確かに教職員と思わしき者たちが多かったな」
昼食時の食堂の様子を話してるようだ、子供たちは基本的に弁当持ちが多いようで、食堂に来る子供は親が共働きだったり、親が寝坊のため弁当が間に合わなかった子供たち、だけだと言う事だった。親が共働きでとかどこの世界も一緒だね!
そしてメルリカ婆さんが変な球をもって教室へと入ってきた。
「よーし、揃ってるね。それじゃあ、午後の授業だ」
メルリカ婆さんが机に球を置く、そして黒板に文字を書き始めた、正直字が汚い。
「魔力の測定だ、全員分の魔力を測ってから、大体の目安なんかを説明しようかね」
「あれは『魔力見の水晶』ッスね」
「そのまんまの名前ね」
「……そっすね」
マジックアイテムの名前は割と、そのまんまな名前の物も多くあったりする。ストレートなツッコミされても困るよね。
「ほれ、計るよ。ヴィヴィアン、アンタからだよ。こっちにきな」
メルリカ婆さんに言われ、ヴィヴィアンがのそのそと教壇の方へと向かう。
「まずその玉に両手をかざして、深呼吸……アンタ息して無かったね。まあ力を込めるように魔力を練るイメージをしな」
「あうああ」
ヴィヴィアンは言われたように力を込める、すると水晶が淡い光を発した。
そして光が消えると、水晶には数字が表示されていた、体温計みたいだな。
「ふむ『八』かい、多くはないね」
「あ? あうぁ……ひくい」
「まあ、一般人よりは高いから安心しな、成長すりゃ……あんた死んでたね」
ヴィヴィアンは死人だがぱっと見は死んでるようには見えない、どうやら死んで間もないようだ。
でもまあ、首はいつも四五度ほど傾いてはいるが。
「次はマーシャの番だね」
「了解っス」
ヴィヴィアンに代わって、マーシャが水晶に手をかざし力を込める。
同じように水晶が光るがヴィヴィアンの時より光が強い、そして光が消えると数字が浮かんでいた。
「ほうほう『十三』かい、まあまあだねぇ」
「悪くないって事ッスね?」
「そこらは後で説明するさ。最後はアジャルタあんただ」
「オバさんがトリね」
フフフ、と含み笑いをしながらアンジェリカが水晶に手をかざし力を込める。
すると、凄まじい光が水晶から放たれる……いやちょっと待て凄いってもんじゃないぞこれ。
辺りが一瞬真っ白になった。
「目がぁ……目がぁ」
「うお! 眩しいっすよ!」
「ぬう、なんという光だ」
メルリカ婆さんだけは反応が遅れモロに光を浴びたようだが、リヴァイアサンとマーシャは目を手で覆い何とか回避、リヴァイアサンの目ってどこなのさ? ヴィヴィアンは平気だった。
しばらくして全員が復帰すると、水晶には数字が表示されていた。
「全く、眩しくてかなわないよ。何だったんだいあの光は……」
「いやー、オバさんもびっくりよ。凄く光るのねこの水晶玉」
「ここまでは光らないよ……ん? まさか……」
メルリカ婆さんが水晶を見ると、目を見開き何度か確認しながら驚いている、そこに書かれていた数字は『五十三』であった。
「五十三? アンタ、とんでもないね?」
「おや、そうなの?」
「我も驚きだ、想像以上にとんでもないな」
メルリカ婆さんとリヴァイアサンは驚きを隠せないようだ、ヴィヴィアンもマーシャもどれぐらい凄いのかが分からないようだったのでキョトンとしている。
「ならリヴァイアサンも計ってみな」
「そうだな」
リヴァイアサンがワカメをかざすと、水晶から強い光が発せられた。
光が収まると『四十一』と表示されていた。
「なんだいアンタたちは? リヴァイアサンって名前からしてまさかとは思っていたが、アンタ本物の上位悪魔かい?」
「うむ、我は海の悪魔リヴァイアサンである」
「やはりねぇ? そのリヴァイアサンが使い魔ねぇ、なんなんだい? あのオバちゃんは?」
「我にもわからんが、普通のオバちゃんだったモノだな」
オバちゃん、それは史上最強の生き物。
「まあ、いいや。それじゃあ、あんた等の魔力がどれくらいなのか説明しようかね」
「お、気になるお題っスね」
「オバさんの魔力は五十三です」
各々が席に戻るとメルリカ婆さんが説明を開始する。
「さて、基準を説明していこうかね。これはあくまで平均値での話だからね、たまに規格外がいるがそういった特例は抜きにした説明さね」
メルリカ婆さんが黒板に棒人間を描きながら説明を開始した。
「まず一般的な人間の基本的な魔力値は、この水晶では大体だけど二から三さね。一般的な獣で一ってところだね、魔力が零っての基本的には無機物くらいなもんさ」
この世界では一般の人でも魔力自体は持っているのである。魔力をトリガーに動く魔法アイテムも多く存在しており、これ等はこの世界での生活に欠かせないものとなっている。
「そして人間の魔法使い、魔法に携わる職に就いているものでもまあ平均して六から八、多くても一〇ってとこだね。人間で一〇もありゃ宮廷魔術師になれるさね。そして魔女の平均が基本的に一〇か十一程だね、十二だと少し高めってとこさね」
「じゃあ、ボクは少し高めってとこっすね。人間でなら高位魔術師ってとこっすか」
「そういうことさ」
マーシャは平均より少し上の位の魔力とのことだが、人間と比べると高い魔力を持っているようだ。
「メルリカ先生は、どれくらいなのかしら?」
「私かい? 前に計った二十二ほどあったねぇ。二十二ってのは魔女でもエリートの部類なんだがねぇ」
「そうするとオバさんの五十三って、水晶壊れてるんじゃないのかしら?」
「それは無いと思いたいね、最近メンテナンスしたばかりなんだし」
そういうとメルリカ婆さんは自分で水晶に手をかざし、魔力を込めると水晶には二十二と書いてあった。
「ああ、正常だね。悲しいけど増えも減っても無いね」
婆さんだし、もう伸びしろは無いんだろうね。
「まあいいや、続きだよ。さて、まあ、いまのやり取りで分かるように、アンジェリカの五十三ってのか正直言えば規格外だ。この数字を超える人物は正直私には心当たりがないね」
「当然であろうな、大悪魔の我より高い魔力を持つ人間がそうポンポンいてたまるか、もはや魔王クラスの数値であるな」
「あら? オバさんの評価って高いのかしら?」
「そうだねぇ、今の所『とんでもない』って評価だね」
なににおいても、規格外てのはいるものだ。
「オバさんはとんでもないのね、照れるわねぇ」
「誰も褒めては……いや、この場合は誉め言葉になるのかい?」
「そうなんじゃないっスか?」
なんやかんやで登校初日は無事に終わるのであった。
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