第63話 上司が、敵だ

 一発貰ったらその瞬間に即十割貰うRTA、はーじまるよー。


 まぁ出オチというか、早々にタイムロス要因を引きました。

 イベント名『対所長戦』。ランダムで起こる殺し合いです。基本的には好感度をそれなりに上げれば起こらないんですが、この人に限っては味方だろうが関係ねぇと言わんばかりに戦いを挑んできます。

 一応所長から信頼されるくらいには好感度を上げたんですけどね……基本的にマスクデータなので、分かりづらい人はマジで分からないです。まぁ解析しとけば一発なんですが、非常に煩雑なデータになるので素振りで判断していきましょう。

 現時点で咲良さんから私への好感度だけドベに振り切っていますが、まったく問題ありません。後で取り返す機会はいくらでもありますからね。

 ……若干まりえさんの好感度が渋いので、そこだけ後でフォローします。


 さて、確定初見殺しを処理します。

 ここだけは確定で同じ行動を行うので、最早演武のようなもんですね。ハイジャンプから上段蹴り、ローリング回避二連続で元の位置に戻ってハイ終わり。

 フィールド効果の類は軒並みデバフですが、既に対策済みです。小足からの打ち上げコンボ狙いでちまちま削ります。


 戦闘自体は驚くほどだるいので、この間に戦闘解説をしましょう。

 まず、フィールドは森林。

 若干視認率が悪くなるので攻撃自体がスカりやすい……んですが、双方共に必中持ちなので全く意味がありません。

 また、フィールド効果として『威圧』が行われています。

 解除不可能な上に確率で行動が失敗するクソデバフですが、私は耐性持ちなのでなんら問題はありません。確率の壁さえ通せば普通に動けますし、エフェクトが出る瞬間に回避すれば実はデバフごと避けられます。なんでだよ……と言いたいですが、咆哮もフレーム回避で避けられるし問題はないでしょう。

 ここまではまぁ、現状の探偵事務所メンバーが共通で所有するデバフなので特に解説するところもないですね。

 うわっ……私の探偵事務所、強すぎ……?


 さて、重要なのが『殺気』です。

 毎フレームの判定に負けると強制スタン、判定中は基本的に攻めの一手が取れないというこの世界屈指のクソデバフ。何故か所長はデフォルトで持っている上に強度まで世界屈指であり、無効耐性持ちでない限り克服されません。

 貰えば極低確率で殺気デバフを撒けるようになりますが、その代わりに悪堕ち判定も跳ね上がります。この『極低確率で伝授』というのが曲者で、使う予定がない奴がいつの間にか所長の弟子になっていたりするので油断できません。

 今ステージは剣斗くんと師範代が対象キャラな上に、剣斗くんは好感度的な問題とかで仲間入りしかねないので少々調整しました。

 そもそもこれをどうにかしないと勝負できない上に勝つか五分に持ち込まない限り首を取られる屈指のクソエネミーっぷりを発揮しているので、私の敵です。この世界の人生プレイヤーほぼ全員の敵な気はしますが。


 ――なお、所長の場合は五分に持ち込むなどして『好感度を一気に三段階上げる』という条件を満たすと個別ルートに入ります。

 個別ルートは実質上の強化イベントですね。共にいることで強さを知ったり、弱くなったり、将来を誓い合ったりするエモいアレ……オタクくんには縁がない? これは失礼。

 この個別ルートは、いかに初期状態が強かろうが例外なく強化されます。多少の当たり外れはありますが、所長は割と大当たりの部類ですね。

 おぞましい事に、ただでさえ手の付けられないバーサーカーが愛を知って大幅に強化されます……が、個別ルートを消化してしまえば喧嘩をふっかけられる事はありません。伴侶か保護者になりますからね。

 そのくらいの分別付くなら最初っから部下に決闘ころしあいを申し込まないでクレメンス。

 ただ、全員共通で個別イベントがだるい上に、五分持ち込み以外で上げようとするとかなり尊厳を捨てバブる羽目になるので攻略はしません。五分持ち込みの個別入りはとつぐさんの個別ルート並みに事故率が高いですし……。

 ただ、何となく誰か事前に個別引いてるっぽい言動なのが怖いんですよねぇ。ほぼ最強クラスのバーサーカーか、尊厳をぶん投げた赤ちゃんがこの世に存在してしまうという事がほぼ確定するので。


 脱線しました。

 ……ようやく半分削れましたが、ガバで一発貰って八割削られています。個別引いた上で妖刀でも振り回しているんですかね……戦闘中に解析掛けてる暇はないので後で見ておきましょう。

 肝心の勝利条件は『相手の殺害及び戦闘不能、或いは一定以下まで体力を削る』。敗北条件は『死』、逃走や降参は不可能です。潔い男気ですね。

 なお、解析数値上は二割残った時点でイベントフラグが立つことを確認しています。リジェネ持ちを赤ゲージまで削れ、というのが割と多いルートを攻めている関係上、マダニ一匹分くらいはガバを許容されるのがありがたいですね。

 今回は殺すと後々の展開に支障が出るため、諦めて正攻法で体力を削ります。

 ……マジでゴミみたいな威力でしか削れないのは仕様です。有識者兄貴を口寄せできないので分かりませんが、恐らく理論値の二割くらいしか出てないんじゃないでしょうか。


 ダーク尺余りになりかねないため、何故剣斗くん非導入なのかを説明します。

 疑問はごもっともで、彼はぶっちゃけ日本刀使用者としては最終的に最強ですからね。

 所長は劇強ですが病弱デバフがいつどこでぶっ放されるか分かりませんし、師範代は急に死にかける事はなくとも純粋にほぼ底辺じみた成長率。あと加入イベント数が最多なんですよねぇ……師範代を採用してるの、それこそ超初期走者兄貴くらいのものでしょう。あのおっさんを口説くRTAもあるとかないとか、そういうクラスです。

 それに比べれば、成長率は人並みながらも死にかけない上に好感度条件だけで仲間に引き入れられる剣斗くんは超優秀です。

 ただここは成功率二割未満がザラの死線を潜るような依頼しか来ない、探偵事務所という看板を下ろして暗殺事務所にした方がいいような園原探偵事務所。ちまちま育成している暇なんてあるわけもなく、恐らく仲間にしたところでとつぐさんの個別で巻き込まれて死にます。

 下手に死なれるとメンタルがヘコむ、で済めばいいんですが……最悪の場合、悪堕ち暴走一直線です。まりえさんや所長は結構強い耐性があるので、ちょっとしょんぼりするか……下手すると二秒で忘れそうですね所長。あなた現状キルレ最高なんですけど。

 ただ、今回採用した中ではとつぐさんがヤバいです。あの人だけ常にカミソリの刃の上でタップダンスを踊っているような情緒なので、簡単に死ぬ人間はただのリスクでしかない関係上採用できない……そういう、その辺の側溝より深い理由はあります。

 緩やかな大器晩成型ですし、咲良さんとの相性はまぁまぁ良いので通常プレイではかなり強力になるんですけどね。晩成する前に死なれたら意味がないんだよなぁ……。


 さて、そんな事を説明している間になんとか八割削りきりました。小足貰ったので私も一割くらいまで削れています。いやー酷い大接戦でしたね。

 和解イベントから食事が挟まり、若干疲労が回復されました。

 肝心の咲良さんの異能活用力が跳ね上がっているのは確認したので、気配察知、対殺気耐性辺りを付けて終わりですね。メンタルが割と底値ギリギリ赤ゲージまで削れきっているので、そこの回復もさせましょう。所長に。

 私は帰る……ふりをして気配遮断、遙か上空にでも位置しておきます。


 ……ついでに、地上には白銀の巫女を待機させておきましょう。

 龍宮の森固有イベントがどうも開花イベントに上書きされたっぽいんですが、そこを潰されると別のフラグが立たないんですよね。内容は若干差し替えられますが、一応フラグ自体は正しく同じようなものが作動するので問題はないはずです。

 隠しキャラの加入フラグを待ち望むところで、また次回。

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