第12話 人魚かな?

 浜辺は人がほとんど居ない。

 魔獣とか普通に居るから危険な場所じゃないのか?

 そんな場所に誘うわけ無いか……うーん。


 潮の香りが漂い、うちくる波の音に風が笑う。

 砂は温かく足を包む。

 海へと近づけば濡れ冷たくなった。

「冷たい……、まだ寒いな」

 押し寄せる波が足を濡らす。

「えぃっ!」

 カルメラが海水をぶっかけてきた。

 お返しに手で海水をすくいかけ返す。


 しまった、ジュリエンヌにも掛かってしまった。

「そういう遊びは優雅ではありません。

あの島まで泳いで競争をして上げてもいいですわ」

「結構遠そうだから危ないと思うな」

「あら随分と臆病ですわね。

私ならあの程度泳ぎきれますわ」

 そう言うと彼女は海に飛び込み泳ぎ始めた。

 平泳ぎか泳ぎ方は変わらないんだな。

 魔法の力で魚に変身して泳ぐみたいなのは流石にないみたいで安心した。

 

 いやそれも面白そうだな。

 ぼんやり泳ぎを見ているとカルメラが声を掛けてくる。

「ご主人様は泳がないのですか?

宜しければ私が教えてあげましょうか?」

 本来なら教える側じゃないのか?

 一番の勉強方法は実は教える事なんだよな。

 そう考えると教えてもらう事は彼女にとっても良いことだ。

「簡単なのを教えて欲しい」

 ジュリエンヌが戻ってくると手を引っ張る。

「私が教えてあげますわ」

「えっ……」

「ご主人様の補佐をするのはメイドの努めです。

私が教えるのが筋だと思うのです」

「ちょっとまって……」

 片方だけに教わったほうが良かったかな。

 欲張ったのは良くなかった。

「二人共の泳ぎを見せてくれたら、真似をするからまずは泳いでくれないかな」

 ふぅ……。

 

 カルメラは対抗意識なのか背泳ぎをしてみせた。

 頭をぶつけて痛い思いした事があるから嫌いなんだよな。

 俺は真似をして泳ぎ始めた。

 体が変わっても特技が無くなるわけでは無いんだ。

 染み付いた経験や体験は転生しようと変わらない。


 世の中にいる天才的な才能を持っている奴って、もしかすると前世の経験が体に染み付いているんじゃないのか。

 

 泳ぎ回った俺達は一休みに浜辺に戻った。

 俺は杖を手に取り試してみたい魔法を使ってみた。

 下半身を魚のヒレにすることで人魚のような姿に成って泳ぐことだ。


「えいっ!」

 なんか想像と違ってキグルミを着ているような感じになった。

 その場で倒れる。

 足が縛られているのと同じだから当然歩けない。

「それは何をしているのですの?」

「魔法で人魚みたいに泳げないかなと思って……」

「肉体変化の魔法は禁術と成っています。

それは元に戻れなく事故が多いためです。

安易な発想で試すのはよくありませんわ」

「そうだね、面白そうだとは思ったんだけど……」

 彼女は微笑むと俺を転がし始めた。

「海まで運んであげます。

それで泳いで愚かな考えだったと反省しなさい」

「うああぁぁ……」

 

 波に飲まれて沈む。

 うう、地面と打つかって泳げないし……、手でかくしか出来ない。

 深い所へ引き込まれていくと全身使ってくねらせるようにすれば前に進む。

 これは早く進めるけど思いっきり体力奪われるな。


 暫く泳いでいると慣れて、体の一部と成ったかのように泳げた。

 ぐるっと彼女の周りを泳いで見せる。

「それはどんな感じかしら?」

「うーん、魚になった気分。

止まったらおぼれる」

「私も試してみたいですわ」

 浜辺近づくと魔法を解き歩く。

 話を聞いていたのかカルメラが杖を持って来てくれた。

「ありがとう」


 杖を手に取りジュリエンヌに掛けてあげた。

 彼女は直ぐに泳ぎ飛び跳ねてみせた。

 イルカショーみたいなジャンプだ。

 でも水が光を反射して輝いて本物の人魚のようだ。


「これは面白いけど、疲れるわ。

術を解いてくれない?」

「解った」

 彼女は笑い近づいてくる。

「これはお礼よ」

 ほっぺに口づけを貰った。

「何するんだ、まだ早すぎる」

「何慌ててるの?

それぐらい挨拶みたいなものでしょう」

 

 カルメラが耳うちする。

「ご主人様、お礼を貰ったらお返しに口づけするのが礼儀ですよ」

「そうなのか……」

 礼儀知らずとは思われたくないな。

 彼女の肩に手を置き目を見つめる。

「何よ、

そんなにジロジロ見たら恥ずかしいわ」

「お返しをするのが礼儀なんだろう?」

「まあ、軽くね」

 彼女は目を閉じ横むく。

 軽く唇に頬が当たる。

 ううっ挨拶だと思っても恥ずかしいな。

 

 しょっぱいのは海の味か。

「そろそろ日が暮れ掛けています。

帰りましょう」

「ああそうだな」

 空が急激に曇り始め暗くなってくる。

 屋敷に辿りつた時に一気に雨が降り注ぐ。


「急に降ってきたよな。

シャワーの代わりになるか」

「体が冷えてしまいます。

風呂を沸かしますのでお待ちを」

 カルメラは直ぐに風呂の準備をしてくれるようだ。

「手伝おうか、

世話になるだけなのは居心地が悪い」

「ご主人様に仕事をさせるなんて出来ません。

お待ち下さい」

「じゃあ様子を見させてくれ」


 蛇口をひねれば湯が出てくるような事はなく。

 水を桶で組み上げて浴槽に水を浸している。

 汲んできて往復するのは大変そうだ。

 

 学園の寮だと水道設備があったが、これが普通なんだろうな。

「風呂に入るまでに体が冷え切ってしまう。

俺にまかせてくれないか?」

「でも……」

「俺が風邪をひいても良いのか?」

 さて水をどうやって運搬するか。

 桶を浮かせる。

 ……それなら水を浮かせた方が良いよな。

 細長くうねるように。

「水よ蛇となり走れ!」

 

 井戸から水が細長く伸び浴槽へと入っていく。

 細かった水の蛇が徐々に太くなり水の溜が早くなっていく。

 よしよし……。

 そろそろ良い頃だな。

「水が溜まった。

後は湯を沸かすだけだ」

 火をくべる場所がなくどうやって湯にするのか解らない。

 えっと、魔法で湯にしているのか?

 戸惑っているとカルメラは言う。

「湯は石を焼いて必要な分を入れることで調整します」

「なんか大変だな」

 確か電子レンジは水の分子を衝突させて熱つするんだったな。

 水を操れるなら熱くすることも出来る筈だ。

 杖で水をかき混ぜつつ動き回るように念じた。


 蒸気があがり熱くなってきた。

 手を入れると少し熱い。

 加減が難しいな。

「ちょっと熱めだけど我慢できる位だ」

「はい、これぐらいなら丁度良いです」

 鼻歌が聞こえジュリエンヌが入ってくる。

「えっ……」


 彼女は顔を真赤にして扉を閉めた。

「どうして貴方が風呂場に居るのですか?」

「いや風呂を沸かしていたんだ。

まだ準備中だっただろう」

「カルメラさんのお手伝いをしようかと思って来たのですわ。

だって普通はメイドの仕事で主は待っているものでしょう?」

「そうなんだけど、

手伝いたいなと思って……」

「それで湯は準備出来ましたの?」

「ちょっと熱いけど大丈夫だよ。

俺は出たいんだけど……」

「はい、良いですわ」

 扉を開くと彼女はバスタオルで体を巻いていた。

「入る前に確認してくれよ」

「ええ、今度から気をつけますわ。

それで見ましたの?」

「いや顔しか見てない」

「本当ですわね?」

「本当だよ。

神様に誓って……」

 驚いたのは俺の方なんだが……。

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