第11話 夏といえば海なのか
学園生活も慣れて来たと思ったら夏休みがやって来た。
この世界にも四季があるようで暑い日々を送っている。
寮の部屋で横になっているとカルメラがやって来た。
「ご主人様、一緒に海へ行きませんか?
私の実家の近くに海があります」
海はろくな思い出もない。
人が群がって狭い海岸に黒く濁って汚い物が浮かんでいる。
楽しいことなど無くぼんやりしていたら日焼けして肌が痛くなった。
こんなことなら家でゲームをしていたら良かったと。
思い出すだけで悲しい。
「どうして俺を誘うんだ?
君だけで帰ればいい」
「それは出来ません。
常にご主人様とともに在るのがメイドです」
側に居ない時も結構あったような。
どうしてこういう融通が効かないんだろう。
いや、彼女は恥ずかしいからメイドを口実して誘ってくれているのか?
だとしたら行かないのは失礼だな。
「そうだな友達も誘って行こう」
「はい、では手配します」
街から南へ山を超えた場所に目的の海岸があった。
古びた洋館風の屋敷があり全体が蔓草によって覆われ緑になっていた。
結局一緒に来たジュリエンヌは扉の前で止まり振り返る。
彼女は相変わらず派手なひまわりを模したというオレンジ色のドレスを着ている。
被っている帽子はひまわりの花の印象を受ける代物だ。
可愛らしいけど、どうして彼女しか来てくれなかったんだ。
「私の服装は大丈夫かしら?
綺麗にしておかないとだらしなく見られてしまいますわ」
「蝶の飾りをつけた方がもっと可愛くなる気がする。
俺がつけてやろう」
最近使えるように成ったばかりの魔法だが蝶を作り出し止める事ができる。
杖に念を込めると光る蝶が羽ばたき帽子に止まった。
彼女は手鏡で見て確認する。
「綺麗な虹色に変化する蝶ね。
魔法をこんな事のために使うなんてどうかと思いますわ」
魔法はみだりに使うべきではないという教えがある。
だが魔法ぐらいしか遊ぶものがない。
研究は面白かったがもう手放してしまって俺の手元から離れてしまっている。
魔法は独自の研究が大切で自分以外に使いこなせない。
「気に入らないなら消すけど」
彼女は慌てる。
「折角作ってくれたのですから、
皆に見せて喜んでもらった方が有意義ですわ。
消したら本当に意味のないことになってしまいます」
先に帰宅していたカルメラが扉を開いてくれた。
カルメラは何時ものメイド服か、綺麗なドレスを着せてあげてもいいのにな。
魔法で作り出したらそれは其れで問題があるしな。
贈り物をすることも禁止事項に触れるから何も出来ないんだよな。
「お待ちしておりました。
どうぞお入りください」
中は薄暗く少し不気味な雰囲気を放っていた。
それは壁に飾られた動物の剥製がこっちを見ているからだ。
鹿や鷹といった物が並んでいる。
「あの剥製は不気味だな……。
狩りをするのか?」
「あれはお爺様の趣味です。
私もあまり好きではないのですが、勝手に外すわけにも行かないので」
カルメラの案内で二階の客間に入る。
飾られた代物は古いものばかりで色あせている。
奥にあるのは……。
「ベットが2つということは、君もここで?」
「いえ、ご主人様のために彼女と二人きりになれるように準備しました」
「えっと頼んでいなんだが、
勘違いされたらどうするんだ?」
「冗談です。
好きな方を使ってください」
「はぁ……、君が冗談を言うの珍しいからビビるよ」
「着替えたら海へ行きましょう」
「両親に挨拶をしておかないと、
家を借りてなんの挨拶もしないというのは流石に失礼かな」
「夕方まで出かけています。
ですから今は気にせずに海に行きましょう」
こんな屋敷に住むぐらいだ。
社長とかそうな感じなんだろうか。
用意されたていた海パンに着替えようと服を脱ぎ始める。
「お手伝いしましょうか?」
「これぐらいは自分で出来るから君も着替えてきたら良い」
彼女はたまに真面目なのか
この海パンはなんというか、なんで前に象の柄が描いてあるんだ。
動物の絵は嫌いじゃないけど、これは流石になんというか。
ああ、任せるんじゃなくて自分で選んでおけばよかった。
着替えが終わるとジュリエンヌがやって来る。
派手な水着でゴテゴテした飾り付けがされている。
ひらひらで胸の大きさを誤魔化しているんだろうな。
「私は泳ぎも得意ですのよ。
貴方は泳げるのですか?」
泳ぎは普通に泳ぐぐらいは出来る。
この世界に来てから一度も泳いでないな。
体も幼くなっているし、実は金槌で沈むとかだったら最悪だ。
「まだ泳いだことはなくて、教えてくれないかな?」
「それは意外ですわ。
では手取り足取り教えてあげます」
カルメラが戻ってくる。
布を腰と胸に巻いているような水着になっていた。
なんというか真っ平らだな。
それにしてもなんで腹を出したがるんだろうな。
普段は露出を嫌って隠す割に海に来るとオープンになるというのは不思議でしか無い。
「さあ海に行きましょう」
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