第2話 メイド現る。

 俺は学園に入ることが出来た。

 前世と同じユウキという名前らしく手続きがしてあった。

 せっかく転生したんだから別の名前に変えても良かったんじゃないのかと思いつつ学園生活を始めた。

 

 学園生は寮があり個室が与えられている。

 ベットと机と箪笥があるだけの質素な部屋だ。

 ベットはふかふかの羽毛でなんと心地の良いことか。

「これが異世界なんだな、幸せだ」

 エプロンを付けた黒いドレスの少女が部屋に入ってくる。

「ご主人様、私はお世話係のカルメラです」

 これがまさかハーレムの一人なのか。

 そうとしか考えられないな。

 よく見ると彼女は髪を束ねて丸くして後ろにお団子を付けたような髪型をしている。

「髪を下ろしたほうが綺麗だと思うな」

「メイドは髪を下ろす事は禁じられています。

ご主人様、私は影となって貴方の為に動きますが、

メイドとしての決まり事は破る事はできません」

 ええっなんか面倒くさいことを言い出したな。

 と言うか、契約もしてないのに勝手にご主人ってどういうことだ?

 ちゃんと説明を聞いておくんだった。

「メイドの決まり事は俺も知っておきたい。

教えてくれないか?」

 カルメラはポケットから手帳を取り出し渡してくれた。

 ざっと見ただけでも大きく書かれているのが恋愛禁止の文字だ。

 それでも禁断の愛に発展するということがあるのだろうか?

 

 彼女はまだ10歳位だ。

 同じ年とは言え恋愛感情みたいなものはないが、愛くるしくて可愛いという気持ちは抱いてしまう。

 30と言えば、20で子ができていたら10歳の子が居ても不思議じゃない。

 可愛く思えてるのは仕方ない事だろう。


 カルメラは部屋に入り、自分が寝るための布を床に敷き始めた。

「ちょっと待て、君もここで寝るか?」

「はい、ご主人様と一緒に生活を送る事になります」

「自分の部屋はないのか?」

「えっと何が不満なのでしょうか?

何時でも直ぐに命令を聞けるようにお側にいるだけです」

 この世界の常識なのか、彼女が勘違いしているのか解らないな。

 手帳を読み返してみるが、それについては書いてない。

 役に立たないぞこの手帳……、追い出したら非常識だと思われるかも知れない。

 うーん、困りすぎてああっ!

「参考までに聞いておくが、他のメイドも同じようにするのか?」

「勿論です。

隣を見ますか?」

 俺は頷き、隣の部屋の扉をそっと開き覗く。

 ベットの横に寝ているメイドらしき姿が見えた。

 やばいな。

 少女が居る部屋で眠れるのか?

 

 俺は部屋に戻りベットに寝転んだ。

 気がつけは朝と成っていた。

 意外とぐっすり眠れたな。

「起きてください」

 カルメラは布団を引き剥がし退けた。

 寒い……。

「起きているから、布団をいきなり退けるのは止めてくれ」

「はい、解りました」

「今度から優しく起こしてくれ」

 カルメラは手を突き出す。

 なんだ?

 カルメラと目が合い、少し怒っているように見えた。

「えっとなんだろう?」

「チップを払うのがたしなみです。

起こすのがただと思うのですか?」

 何でも金を取るのか、世知がない世だ。

 金貨を貰ったし、それでいいか……。

 俺は袋から金貨一枚を手に取り彼女に渡した。

 彼女は受け取った金貨を見て動きが止まった。


「俺は面倒だからチップを纏めて払いたい。

いちいち払うのは面倒だ。

それでどれぐらい分になる?」

「これだけあれば学園を卒業するまで十分です。

それでもお釣りが来るぐらいです」

「お釣りはいらないから、

よろしく頼むよ」

「はい、ご主人様。

朝食は食堂で行います。

準備が出来ましたら呼びに来ますのでお待ち下さい」

 

 俺はその間に制服に着替えていた。

 学生服は異世界に行っても似たようなものか。

 少しデザインが凝っていて見栄えが良い気はする。

 特に気に入っているのが胸のポケットに付いている翼を象った紋章だ。


「準備が出来ました」

「ああ、ありがとう」

 カルメラの案内で食堂にはいる。

 長いテーブルが3列並んでいる。

 列ごとに学年が別れているようで、右側のテーブルの席をカルメラが引っ張り出す。

 全校生がいるのか、それぞれにメイドが居て壮観だな。

 ざっと300人ぐらいだろうか。

「どうぞお座りください」

「それぐらい自分で出来るから……」

「これは私の仕事です」

 仕事を取るわけにも行かないな。

 俺は椅子に座る。

 カルメラが食事を運んできてテーブルに置いた。

 スープの入った皿だ。

 周りの者達はスプーンですくって飲んでいる。

 真似をするべきなんだろうな。

 でも皿を持って口を付けて飲みたいんだけどな。

 箸は無いんだよな。


「いただきます」

 ……酸味に塩味、不味いわけじゃないが物足りない。

 多分、これに味噌か醤油を入れたら美味しくなるんだろうな。

 不味いのか皆、スープを残している。

 俺だけが不味いって思っている訳じゃないんだ。

 安心して、スープを残していると、その残ったスープをメイドが食べ始めた。

 まさか残飯処理をするのか?

 いや、残したものがメイドの食事に成るんだな。

 だとしたら全部食べるわけに行かないな。

 

 余り量は多いとは言えない。

 サラダや肉料理、デザートが出てくる。

 それでも残す必要があり食べた心地がしなかった。

「ごちそうさまでした」


 食事を終えて自室に戻る。

「はぁ、なんか儀式をさせられているみたいでしんどいな」

「これから学園の授業が始まります。

準備をしてください」

「何を持っていけば良いんだ?」

「必要な物はすべて渡しが用意し持っていきます。

ですから服装や気持ちを整えてください」

 ううっ。

 これから先が思いやられるな。

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