第3話 能力テスト

 クラス分けが行われる事になった。

 水晶玉に手を置くと持っている魔気マナと呼ばれる、得体のしれない力を測定するようだ。

 他の人がどんな値なのか気になるが個室で一人ずつ入っていく。

 

 俺はどんな値になるんだろうか?

 異世界人だから魔気がなくて0だったりして、はたまた凄い力を持っているのか。

 これまでが至れり尽くせりだったから後者であることを期待したい。


 順番がようやくまわってきて水晶玉に触れる。

 ビビっと電撃が流れるような感覚に驚いて直ぐに手を離した。

 手の震えがとまない。

 あの装置でビビっと来た時よりはマシだが、恐怖が体に染み付いてしまっている。


 死ぬほどじゃないが凄く痛いぞ!


 測定を行っていたおばちゃんが笑う。

 あまりにビビり過ぎていたのがおかしく見えたのだろう。

「測定値は2です」

「2なのか……、ああ少ないんだな」

「Mクラスへどうぞ」

 M……、A,B,C……Fよりも下じゃないか。

 まじかよ。

 何クラスあるんだろうか。


 通路を歩きつつ教室を探す。

 ここはNか、次はS、……次がMか……。

「何の順番なんだ?」

「ご主人様、それはマスターの略です。

とても素晴らしい成績でしたよ。

私も誇らしいです」

「2がそんなに良いのか?」

「はい、表示出来る桁が2桁なので、

一万の位が表示されます。

0.1以下がNクラスで、1.0からMクラスです」

「二倍……」

 俺は彼らに比べて人生経験だけなら3倍はあるはずだ。

 2倍ってそう考えると少ないな。

「次は能力テストが待っています」

「能力テストってさっきのじゃないのか?」

「あれは内なる力を調べるだけで、

それを使いこなせるかはまた別の話です」

「ふーん、それでどんな内容なんだ?」

「魔法に付いての知識や教養、それに実技まであります。

それから他にも一般的な知識が試されます」

 まだテストが続くのかと思うと気が重い。


 教室に入ると既に数人が席についていた。

 見たところ今は女の子しか居ないようだ。


 金髪の幾つもの竜巻が顔を覆っているような髪型の女が自慢げに話しかけてきた。

「わたしくは1.3という学園史上最高の値を出したのですわ。

貴方は幾つですからしら?」

「2だよ」

「ほっほほ……、1.2ですの。

中々の才能ですわね」

 ……話聞かないやつだ。

 訂正するのも面倒だからそのままでいいか。

「まあよろしく、俺はユウキだ」

「わたくしは、ジュリエンヌですわ」

 彼女の天下は直ぐに終わった。

 ライムントと言う少年が1.5という数値をだし3位に転落したのだ。

 彼女の顔が真っ青になって動揺して口元が震えているのは可愛いく見えた。

 

 教室に入ってきた男はライムントだけだ。

 彼は短い金髪の少年で無関心そうな顔をしている。

 そんな彼が声を掛けてきた。

「友だちになってくれないか?」

 前世は友達みたいなのは居なかったな。

 知り合い程度だったな。

 転生したんだから、友達を作ってみてもいいよな。

「俺はユウキだ。

よろしくな」

 彼と握手を交わした。

 

 女の子が集まり私もと彼の奪い合いが始まる。

 悪いけど俺はこんな抗争に巻き込まれたくないんだ。

 群がる彼女達から離れる。

 意外にもジュリエンヌは席に座ってる。

 そんな彼女の隣に座る。

「彼と友達に成らないのか?」

「どうして私が?」

「皆成りたがっているから」

「男に群がるなんて破廉恥ですわ」

「じゃあ俺と友達に成らないか?」

「はぁ? どうして私より格上なら考えても良いですけど、

もう少し成績を上げてから出直しなさい」

 なんだこいつは、何がハレームだ。

 あの謳い文句は何だったんだ。

 やっぱり無料は駄目だな。


 友情に金が掛かるのは世知がない。

 はぁ……、他の女の子はみんなライムントの方に行ってしまったしな。

「じゃあテストの点で比べないか?

俺が勝ったらなんでも言うことを聞いてくれ」

「貴方が勝つなんて天地がひっくり返ってもありませんわ。

だから私が勝ったら貴方が一生奴隷となるなら受けてあげる」

「ああ構わない。

その高慢な考えをぶっ潰してやるよ」

 俺のほうが経験が上なんだ。

 小娘に負けるはずがないだろう。


 ふとテストの項目に魔法があることを思い出した。

 いや、魔法の知識は0だ。

 しまったあぁぁぁ。

「いや、ごめん条件を変えてくれないか?

俺が勝ったら友だちになる」

「はぁ……、だらしのない男」

 なんか腹の立つ女だ。

 絶対に負けないぞ!

「いいわ、奴隷じゃなくて一日私の言うことを聞くにしてあげる」

 ……情けないが俺が負ける可能性があるなら臆病でいく。

 それが俺の人生って奴だな。

 転生してもそれは変わらない。

 甘い言葉には乗らずに居られない。

 だからこんな転生に巻き込まれたんだ。

「ありがとう」

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る