僕はロリコンの変態童貞です
ドンと前から音が聞こえてきて、頭を抱えて俯いていた僕は、顔を上げた。
「こんなところで何してるんですか、高校生のお兄さん?」
そこには、軽く首をかしげて僕の顔を見つめている、小学生くらいの小さい女の子がいた。
事情を説明するわけにもいかず、かといって、とっさに嘘も思いつかなくて、僕はただうなだれるしかなかった。
「どうして黙ってるんですか?
まるで、入学早々、女子生徒さんを押し倒して、そのあげく、ちょっとエッチぃ表紙のラノベを読んでることがばれて、変態さんあつかいされて、たまらず学校を飛び出して逃げてきたような顔してますよ。
大丈夫ですか、変態さん?」
言葉遣いは、丁寧なのに、その内容に、ボロボロになっていた僕のメンタルは、粉末状になった。
改めて、今の自分の状況を、しかも見ず知らずの女児に指摘され、変態と呼ばれるのは、つらすぎる。
どうして、学校での僕を見ていたのでなければ、知りえないようなことが目の前の小さい女の子に分かったのか、その疑問はあったけど、それを尋ねればみっともない自分を自分よりも年下の女の子に告白してしまうことになる。
僕は、また黙るしかなかった。
沈黙を貫く僕に呆れて、去って行ってくれることを願った。
でも、僕の心とは裏腹に、女児は僕の座っている隣に軽くジャンプするようにして座った。
それからしばらくは、女の子は黙ったままで、僕はただ何も考えないように靴のつま先を見つめていた。
「あの、変態さん?
私たち以外に誰もいない公園で、私みたいな小さい女の子と変態さんが一緒にいるところを変態さんの同級生さんが見たら、その人は変態さんのことをどう思うと思いますか?
たぶん、変態さんは巨乳好きの変態さんで、その上、ロリコンさんだと軽蔑されますよね?
だから、早く帰ったほうがいいですよ。
私も、あなたみたいなロリコンさんとは一緒にいたくないので。
公園は小さい子のもので、ロリコン男子高校生さんが女児を見て、欲情するためにあるものじゃありません。
お引き取りください、ロリコンさん」
口を開いたかと思ったら、ひたすらにロリコンだと罵られて、さすがの僕も少し怒りの感情が沸いてきた。
「僕はロリコンなんかじゃない。
僕はもっとこう胸の大きいグラマーな女の子が好きなんだよ。
だから、断じてロリコンじゃないっ」
やっとしゃべった僕の顔を見て、意地悪そうに女児は笑みをうかべた。
「本当にロリコンさんじゃないんですか?
変態さんというところは否定しないのに、ロリコンさんだというのは強く否定するところがロリコンさんぽいですよ。
本当にロリコンさんじゃないというなら、ロリコンさんの性癖をもっと具体的に話してください。
もし話してくれないなら大声で、ロリコンさんに襲われるって叫びますから。
あと、嘘ついても叫びますから正直にお願いします」
なんて意地の悪い女児なんだろう。
こんなところで性癖を話すのなんて冗談じゃない。
でも、もし言わないと僕は警察に捕まって、女児を襲ったという罪で裁判にかけられるかもしれない。
それだけは僕の名誉だけじゃなくて、家族のためにも避けたかった。
仕方なく、僕は両手を上げた。
「わかったよ。
正直に話すよ。
僕は、さっきも言ったけど巨乳好きで、ちっぱいには興味ない。
胸のふくらみは女性の証の一つだよ。
それがないなら、男と変わらないし。
それと、僕は、すこし肉のついたムチムチの女性が好み。
身長は僕と同じか僕より大きいくらいがいい。
要するに抱き心地がよさそうな身体で、弾力のある胸のある女性が僕の性癖です。
これでいい?」
やけくそで、これまで誰にも話したことがなかった自分の性癖を吐き出した。
そんな僕を終始、女児はにやにやと見ていた。
「わかりました、とりあえずロリコンさんは救いようもない変態さんだということが。
そんなこと話したって、ロリコンさんがロリコンさんじゃないという証にはなりませんよ。
残念でしたね。
残念と言えばこれ何だか分かりますか?」
そう言って女の子が取り出したのはスマホだった。
「スマホって便利ですよね。
ロリコンさんの変態発言、全部録音させてもらいました。
これをばらまかれたくなかったら、僕はロリコンの変態童貞です、って三回言ってください。
はい、じゃあどうぞ」
なんで僕はこんな目に遭っているんだろうと、小さい女の子相手に泣きたくなった。
でも、そんな僕にお構いなしに女児はスマホをマイクのように僕の方に突き出している。
もうどうでもいいやと思った。
「僕はロリコンの変態童貞です、
僕はロリコンの変態童貞です、
僕はロリコンの変態童貞です」
それだけ言って、僕はベンチを立って、公園の出口に走った。
後ろから、さようなら、ロリコンさん、と聞こえてきたけど、振り返らずに公園を出て、ひたすらに走った。
もう何も考えたくなかった。
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