公園で人生に絶望してたら、小さい女の子に罵られました

沫茶

僕は自分の世界線に絶望しました

 生まれてこの方、自分に絶望したことは、いかほどだろうか。


 公園のベンチに座り、僕は思い出せる限りの絶望を数えていた。

 思い出すたびに、胸をえぐられるような気持ちになるけど、それでも、ついさっきの絶望を打ち消すには、痛みが足らなかった。

 どうやら、人は過去のどんなにつらいことよりも、今のつらさのほうがより強く感じるらしい。


 どうしてあんなことになってしまったのだろう。

 今日何度目になるかも分からない呟きを頭の中でした。


 せっかく中学とは少し離れた高校に進学したというのに、なんで高校初日からこんなことになってしまったのだろう。

 高校では心機一転、中学とは違う自分で頑張ろうと思っていたのに。思い出したくもないのに、何度も何度も頭であの瞬間が再生される。


 入学式が終わり、午前で放課となった後のことだった。

 クラスではもうすでに、仲のいい人たちが集まったグループがいくつかできていて、僕はその輪の中に入れずに、まるで離れ小島のようにぽつんと席に座っていた。

 本当なら、その中に入ってみたかったけど、ずかずかと話に入っていく度胸が僕には欠落していた。


 それに、このクラスには僕の中学校の知り合いも誰一人いなかった。

 それを望んで家からは少し遠くの高校を選んだのだけど、やっぱり最初から話せる人がいないのは結構なハンデだった。


 わいわいと周りが騒いでる中で、一人でいるのは、もちろん泣きそうになった。

 なんて自分はダメな人間なんだろうと悲しくなった。

 とにかく教室から出て楽になりたい一心で、鞄を持ってが教室から出ようと教室のドアのところまで行ったときに、それは起こった。


 突然、男子生徒が教室に飛び込んできて、避けきれずには僕はその人に吹っ飛ばされた。

 吹っ飛ばされるのは不愉快極まりないけど、まだただ吹っ飛ばされるだけならいい。

 でも、現実はそうじゃなくて、僕が吹っ飛ばされた先には女子生徒がいて、そのまま一緒に床に倒れて、気がつけば僕がその子を押し倒したような形になっていた。

 その女の子は、最初何が起こったのか分からないように目をぱちくりさせていたのだけど、だんだん目がうるうるしてきて、しまいには泣き出してしまった。


 最悪だと思った。

 僕は高校に入学して早々、女の子を押し倒して泣かせた男子高校生として、この三年間生きなければならないのかと。

 でも、現実はさらにひどいものだった。


「おい、これ見ろよ。こいつこんなの持ってるぜ」


 うっかりしてたのか何なのか、鞄の口が開いていたようで、中身が飛び出していた。

 それを、僕と女の子が倒れているのを見て集まってきた生徒の内の一人が取り上げていた。

 それは、つい最近買ったライトノベルで、その表紙には、水着は着ているけど、ほぼ裸のような胸の大きい少女のイラストが印刷されている。


「うわっ、きしょくわるっ。もしかしてこいつ、狙ってやったのか」


 それを聞いたのか、その女の子はますます涙を流しだした。

 取り巻きたちも、僕のことを、マジでやべぇとかこそこそと話し出していた。


 もう耐えられないと思った僕は、一言、涙を流す女の子にごめんと言って、小説をひったくると、そのまま学校を出て、よく知らない街を闇雲に走って、息が切れたところにちょうどあった公園の中に入って、ベンチに座ったのだった。

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