第4話 灰かぶり姫③
「お名前を教えてください」
早乙女が優しい声で尋ねる。しかし、少女は終始だんまりを決め込んでいた。これには困ったのか早乙女が如月に目で訴えた。
ビッシリと記載された情報から、如月の視線は北区を見ていた。
今年に入って何件目だろうか。北区には児童相談所がない。如月は知っていた。子供は成長する過程で様々なことを受け取る。受け取るためには、大人は与えなければならない。
「電車に乗って来たのかな?一人ですごいね。」如月は誉めた。
すごい、えらい、りっぱ。
ありとあらゆる言葉で誉めた。
健全な精神を育むには、しっかりとバランスの取れた感情を与えなければならない。
少女はネガティヴ感情を多く摂取している事は、見るからに明白だった。特に目からは負のオーラが滲み出ている。この場合、ネガティヴ感情の摂取を抑制し、ポジティブ感情を多く摂取するのが効果的だ。
感情に関する心理学的研究では,これまで圧倒的にネガティブ感情が対象とされてきた。
感情の比率が約7:3とネガティブ感情のほうが多いこと。また恐れは逃走行動に関係した感情であるというように、ネガティブ感情はある特定の行動と結びついている場合が多い。また何よりもネガティブ感情は自律神経系の活性化をもたらし,その持続が心身の健康に悪影響を与える。
これに対し,喜びなどのポジティブ感情は,その存在意義が明確ではなく,あまり研究されていない。かの有名なトルストイでさえ、人の喜びは似通っていると断言し、それ以上の言及はあまりされてないのが実情だ。
それでも、ポジティブ感情を扱った研究がされてない訳ではない。ポジティブ感情を経験することが創造的な思考活動や学習機会を増加させ、思考や行動の幅を広げる。
そして、ネガティブ感情によって高められた,嫌な気分や心拍率,血圧などの自律神経系の亢進を、素早く元に戻す効果がある。
狙いはこれだ。
後は自らが感情を咀嚼し飲み込む必要がある。受け取るとは、そういう事だ。
少女は、今まで食べたくないネガティブ感情を無理矢理に押し込まれて来た。吐き出す事も出来ず、ただひたすらに押し込まれて来た。咀嚼に対して抵抗があるのは、当たり前の結果だろう。
では、どうするか?
褒めるだけで良いのか?
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