鬼になる

ツヨシ

第1話

俺の地元には鬼の伝説があった。

鬼の伝説など日本中にありそうだが、他と違うところは、それが今の時代になっても日常的に話題にのぼることだ。

悪いことをすると鬼になる。

昔、どこそこの誰それが鬼になった。

子供の頃から何度となく同じ話を聞かされてきた。

そして今、鬼になると噂されているのが、二軒隣に住む俺の叔父だ。

俺の父と年の離れた弟で、三十を超えても仕事もせず、還暦を過ぎても働いている親に寄生して、毎日朝から飲んだくれている。

近所の高校に通う女子高生にちょっかいを出して警察のお世話になり、近所の家に盗みに入ってこれまた警察のお世話になった。

今は実家に戻ってきているが、反省した様子は微塵もない。

俺の母はあの男がいつか鬼になるではないかと、本気で心配していた。


そんなある夜、夜中に悲鳴が聞こえた。

どうやら叔父の家からのようだ。

俺は母に通報するように言うと、様子を見に行った。

玄関につくと、中から祖母の悲鳴が聞こえてくる。

意を決して中に入った。

三人がいたのはリビングだった。

祖父が倒れていて、床に座り込む祖母を叔父が警棒のようなもので殴りつけていた。

俺は叔父を後ろから羽交い絞めにした。

叔父は抵抗したが、俺のほうが体も大きく力も強い。

そのまま叔父の動きを封じていると、しばらくしてパトカーのサイレンが聞こえてきた。

入って来た警官二人に、俺は叔父が自分の親を襲ったと言った。

叔父はそのまま警察に連行された。

手錠をかけられ、パトカーに押し込められている叔父を俺は見た。

今は何もない。

しかし俺は叔父が祖母を襲っているときに、額から大きな角が生えていたのを見たのだ。


       終

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鬼になる ツヨシ @kunkunkonkon

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