第4話
まだ俺は生まれていなかった頃だ。
それも二回とも快晴で海も穏やかだったのだ。
事故などありえないくらいに。
そうなると当然みなその原因を考える。
自分の生活に、自分の命にかかわるからだ。
そこに工藤さんが言った怪物という言葉。
それがなんなのかという話になる。
猟師仲間同士で何度も集まり、真剣な話し合いが行なわれた。
もちろん俺も参加した。
なにせ俺は父がまだ行方不明なのだ。
鯨という説が出た。
しかしこのあたりの海では鯨は何十年も現れてないそうだ。
もちろん鯨がいる海とはつながってはいるので、可能性がないわけではない。
しかしそうなると、猟師である工藤さんが鯨にたいして怪物と言う言葉を使うのか、という話になる。
当然そんなことはありえない。
鯨なら鯨と言うはずだ、と言う意見が大半となる。
それ以外にもシャチだのダイオウイカだのといろいろ名前はあがったが、どれも言いだした本人でさえ納得しないありさまだ。
しかもこの怪物とやらを、工藤さん以外誰も見ていない。
そんな状況のなかでは、いつまでたっても結論は出ない。
しかし結論が出ないからと言って話し合いが終わることもない。
自信を持って言い切るものもいないため、話し合いは平行線にすらならないままに何度となく続けられることとなった。
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