第138話 忘れてたカラーシ商会
「これは大事な指名だぞ! メサもわかってるな?」
ぷるぷる!
「よし。成分は抑え目になるが、これも繁栄させるためだ」
ぶるぶるぶる!
くらげ達と力を合わせれば、早い段階で再現出来るだろう。ドラちゃんに会うまでに完成とはいかないだろうが、いずれこのブルンザでも…笑いが抑えられないな。
「ふふふはははははは!」
「実さん!」
「うぇぇ!? イツキ? いつの間に……」
「さっきからずっと居ましたよ!」
何度も声かけてくれていたが、気づかなかったみたいだ。
「それで、何か用事?」
「報酬は貰ってきたんですけど、その時に1つ思い出したんです。ここに来る途中のやつを」
「へ?」
「シーレスさんに紹介状を貰ったでしょ?」
すっかり忘れてた。早めに使って楽しようと思ってたのに、…数日は経ってるか。とにかく、行っておいた方が良いな。
「そうだな! ちょうど良いから今から行こう!」
「それを言いにきたんだよ……」
「さぁ、行くぞ! それでどこの商会だっけ?」
「カラーシだよ。場所も見つけてるから着いてきてくれ」
全てお膳立ては済ませてくれたと言うことか。それなら任せてしまうだけだ。
イツキの後を、ちんたら歩きながら露店を眺める。ここの野菜って、他国に比べると種類が多いんだよね。
手前の店はナス。奥の店はトマト。反対側にはパプリカとピーマンが売ってある。
「そういえば、この国の料理食ってなかったな」
「もうすぐ到着だから、後にしてくれ」
「はいはい」
露店の通りから数分も歩くと、目的の建物が見えてきた。石造りでゴツゴツした見た目は、オシャレと言えず、無骨な外観が合ってるかな。隣のカフェは木造のテラス付きで、デートしている人も多い。
店から出てくる人達は、鎧を着てる同業者らしき者から、若い男女。家族連れまでと幅広い。
「この店は何の店だろうかね?」
「良いから入りますよ。みんな待ってるんですから」
イツキに急かされて中に入ると、大きめの家具が立ち並んでいる。まさかの家具屋か、と思っていたら、隣に食器が並んでいる。その奥には料理道具、はては野営用のテントまで。さらに2階に登れば食料品、3階まで行けば量産の武具まで置いてある。
「まさかデパートだったのか」
「オレも始めてきた時、すごいビックリしました。そのまま2時間くらい物色しちゃいましたね」
「その後に俺を呼びに来たと言うこと?」
「そうですよ」
イツキは恥ずかしそうに笑いながら、3階を抜けて4階へ向かう。階段を登り切ったところで、みんなの影が見えた。
「やっと来た! 遅いよ!」
「エリンさんは待ってないですよ」
「ずっと店内見回ってましたよね」
目を逸らしながら口笛を吹いているエリン。こいつはしばらく無視で良いな。
「待たせたね。それで、そちらの方が紹介状の相手で合っていますか?」
「そうそう。紹介状に実さんのことが書いてあったみたいで、ずっと待っていてくれてたんだ」
長々と待たせていたなら申し訳ないな。拱手しつつ自己紹介をすると、拍手で返してくれた。
「すばらしいですね! 私はカラーシ商会の会頭をしているヒーレスと申します」
「来るのが遅くなり、すみませんでした」
「シーレスの方が先に戻って来たので、不思議がっていましたね」
シーレスさんは、ここに戻った後、すぐに出発してしまったらしい。俺たちの紹介状を見て、使いを出し終わったのが、ちょうど到着時のことだ。わざわざ使いまで出させて悪いと言うと、気にするなと返ってきた。
「あいつに頼み事もあったから、ちょうど良かったのですよ。ははは」
気を遣ってやってくれたんだと思ったが、気にしてもしょうがない。
ヒーレスさんはこちらの反応を見て、続けて話し出した。
「紹介状にも書いてありましたが、本人からも詳しくアイデアのことを聞きました。あなた方にとっては、大層なアイデアじゃないと考えてるかもしれませんが、私たちは有益な情報を貰ったと思っています。」
俺らが話していた着火のことは、気に入ってくれたみたいだな。その報酬をどうしようかと決めかねていたそうだ。現物や金銭でも良いが、シーレスさんからどう聞いたのか、物欲が薄い人間だと思われたらしい。
「なので、本人に決めていただこうかと思っています」
「なるほど、みんなはどうしたい?」
すると、エリンまで混ざって話し込み始めた。店内を見た後だと、それぞれ欲しい物が出来たのか、あれこれが良いとか希望をぶつけ合っている。
「実さんは良いのですか?」
「俺は特に……今は新種の野菜だけが気になっています」
「ほう。その話を詳しくお聞きしても?」
「構いませんよ」
釣れたー! めっちゃ狙ってたよ! 是非にニンニク拡散の礎になって頂きたい。
それから、現状のニンニクと新種のニンニクの違いを伝えていく。
「なるほど、臭いを減少させた品種にして食べやすくすると。野生から農業用はやったことありましたが、そういう試みは面白いですね。後日で良いので、職員を派遣してもいいですか?」
「もちろんですとも。一応先に伝えておきますが、魔鴨団と共同利用の農地としています。多少粗野な者がいると思われた方が良いかと」
「ははは! 店にもよくいらっしゃいますよ。そうか。あの傭兵団と共用ですか」
天井を仰ぎ見ながら何かを考えてたかと思うったら、明日でも良いか聞いてきた。早めに来る分には問題無いので、2つ返事で許可をする。
ちょうど良いタイミングで、みんなの意見もまとまったみたいだ。
「それで、どのような希望になりましたかな?」
「僕らが欲しいのは」
「欲しいのは?」
「土地です!」
そう来たか。まんまとヒーレスさんの思惑に乗るかと思ったが、ちゃんと必要なものを考えたみたいだな。
「土地……と言われましても、どういったものか」
「街の外れでも良いので、従魔を置ける所が良いです。難しければ借地でも構いません」
ヒーレスさんの視線がちらりとこちらに向くと、ひと呼吸置いて頷いた。
「我々としても損はしないでしょう。ただ、場所に関しては数日お待ち頂きたい」
「こちらは頼む側なので、数日程度なら全然。な?」
みんなに確認すると、元気に「はい」と返ってきた。
帰り際、ヒーレスさんから、新しい畑も必要か聞かれた。よく考えると、畑隣接の方が便利か。そのことも伝えると、ニコニコしながら「良いの探します」と言っていた。
「実さん。あの宿使ってないですよね?」
「使ってるよ」
「言い方が違いましたか。あの宿の部屋を使ってないですよね?」
「……ない」
毎晩屋根の上で寝転がり、夜空や街並みを眺めている。どうもあの部屋の周囲は気配が強すぎる。監視されている雰囲気で休めないんだよね。
「僕らも落ち着かないんですよね。なので休める場所にしました」
みんな考えることは同じかぁ。
_______________
メサメサメサ
メサ メサ
メサ メサ
メサ メサ
メサメサメサメサメサ
メ サ メ サ サ
メ サ メ サ サ サ
メ サ メ サ ササ
野生のメサが飛び出してきた。
メサは不思議な踊りを踊った。
主人公の何かが吸い取られた。
主人公に発狂デバフを付与。
…
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