第98話 獣王国不定期

大地歴2120年


季節はたぶん夏。

ロック鳥の調査報告のおかげで特別に3級へ上げてもらった。

それが先月頃の話。

今もスケッチと報告書を作成しているが、これってただの成長記録だよな?

メサは気まぐれにやってくるので、その時に渡すようにしている。

俺が出て行こうとすると戻されるんだよな。

ヒナも見たいから、飛ぶまでは面倒見てやるつもりだ。



大地歴2122年


この年も教授の記述がなかったらわからないな。

ヒナがかなり大きくなってきて、手が掛からなくなってきた。

もしかしたら巣立ちが近いかもしれないな。

体も10mくらいになってきて、小さめの大蛇は1匹で食っていた。

その頃届いた手紙に、ヒナの名前を王様が付けたと言う。

『ベルゴッテ』山の神という名前らしい。

ロック鳥を神とする部族もいるらしいので、それに配慮したようだ。

神様が現世にいるわけないけど、いたらと考えたら震えが止まらないな。

存在だけで壊れるんじゃないか?

考えるのは止めておこう。



大地歴2128年


あれから6年掛けてようやく親鳥に大きさで近づいた。

モコモコだったのが筋肉質になって、カッコ良くなったぞ。

そういえば、巣立ちしたらどこに行くんだろうか?


そう思ってたんだが、予想外の結果。

子供の方じゃなくて、親鳥の方が巣立ったよ。

大陸中央の方向へ向かって優雅に飛んでいる。

巣の方を見ると、モコズ達も少しずつ減っていき。

いくつかの卵だけ残されている。

こっちの卵はモコズ達の方だな。

大人になったばかりのロック鳥が、卵を見守っている様子も面白い。

モコズ達もただ守ってただけじゃないんだな。



卵にヒビが入り出した頃に、モコズ達が様子を見にやってくる。

誕生すると、親達は子供達の餌やりで外へ行き、その間はロック鳥が守る。

確かハゼと鉄砲エビの共生があったな。

それと似ているかな。

こいつもレポートにして送ろう。




大地歴2135年


山頂周辺の調査とかしてたらこんなに経っていた。

ドリー達の子供も成人したとか書いてあったし、一度戻ろうと思う。

その前に聖教国側の山頂にも気になる木があるんだ。

あとその下に洞穴もあるし、川の魚も。

書いててわかったけど、これは戻らなくなるやつだな。


一旦やりたいことは置いて会いにいくか。



大地歴2136年


久しぶりにドリー達に会ったらかなり老けてた。

ドリーも村長になっていたし、ホーも役員だったよ。

子供達は5cmくらいだったのに大きくなったな。

冗談だよ。

前見た時は80cmくらいだっけ。

今では立派な成人だ。

ジールにも子供が生まれたらしいが、首都住みだから会っていない。


あの洞窟の事だけど、モール族の案内で何度か研究者を潜らせている。

ただし、あれ以降ホログラフは起動しないし、長居出来るほど長期間持つ食料も無い。

俺は面倒だし、あそこは良いかな。

ただ、ヴェルグの地下に埋めるって言葉だけは気になる。

あの位置より地下ってことだよな。

さすがに、俺1人じゃ無理だし、深くなるほど魔物が増えると言う。

とりあえず、食料事情が良くならないと無理かな。


みんなが老けている中、俺と教授だけが変わらない。

首都にあと1人長命種がいるようだが、わざわざ会うまでも無い。

教授にも、一度王様に会わないかと言われた。

もちろんNOだよ。

なんでワザワザ面倒そうな人に会わないといけないのか。

それに首都は行く気にならない。

見上げても人がいる空間。




大地歴2142年


ファングのみんなが会いに来てくれた。

ゲイルが子供を抱えていてビックリ。

前からベスと付き合ってると聞いてたが、子供が出来て結婚したらしい。

ファングは、王様に頼まれた仕事で、それなりの役職をもらっている。

今は首都の中心街暮らし。

羨ましいかと聞かれたが、返しに困った。

とりあえず「良かったね。」とだけ言ったら、苦笑い。

俺の反応も予想済みらしい。

王様がファングにも俺を誘うよう愚痴ってたらしい。


たぶん、一度俺を連れてこようと兵士を派遣している。

教授の話では、強引では無いらしいが、霊峰を登れなかった。

ただそれだけのこと。

ベルゴッテは俺を同族か庇護者と考えてるのか、俺は入れるけど、他の人は縄張りに入れない。

これは育てた特典だよな。

ファングのみんなには、知り合い用にとっておいたベルゴッテの羽をあげよう。

戻るたびに家に置いてってるから、結構貯まってるんだ。




大地歴2160年


ドリーが危篤と聞いて会いに行った。

布団から出られず、寝たままの面会だったが、彼は変わらず笑っている。

力の入らない手で俺の手を握りながら何度も感謝された。

「ノールのおかげで、願いが叶った。」

俺こそドリー達のおかげで楽しく過ごせている。

もう生命力が少ない。

あと3日くらいだろう。

ちょっとだけ元気に出来ると言ってみたが、数秒だけ考えて首を振った。



大地歴2161年


今度はホーが逝った。

ドリーと同じことを聞くが、彼も同じ答えだ。

仲良かった教授も寂しそうだが、彼らの孫達がいる。

たぶん先代の時もそうだったんだろうな。



この時、オスクは教授に譲った。

寂しそうだったのもあるけど、教授に懐いていたし、最近は一緒にいられなかったからな。

俺といるより、教授と居た方良いだろう。

オスクの子も大人になってるし、群れの長としてまとめなきゃいけない。

無駄に連れ歩けないもんな。



大地歴2199年


ここ最近、大陸中央の様子が良く無いらしい。

一応注意するように言われたが、どうしようもない。

記憶だけにはとどめてと思ったが、ここに書いた方が良い。


バートから、『大陸中央で召喚の兆しがある。召喚生物に気をつけろ。』

他にも長々あったけど、そっちは孫の事だったりなので割愛だ。


そろそろ日記帳の残りが少ない。

また、誰かに買ってきてもらわないとな。

俺は行かないよ。

モール族なら雲網きのこで喜んで行ってくれる。


もうすぐ年明け。

そろそろ他の国に行っても面白そうだな。

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