第54話 7級試験2

 朝食も済ませ片付けも済ませたので、いざ出発。

 本日も順調に進んでおります。

 時折ローズがオスクに乗せろと言ってくるが、オスクが嫌がってな。

 メサに乗せてあげようとしたら、酷く拒絶していた。

 空も良いもんだぞ。


 時折動物が近寄ってくるが、スコーピオンズが小石を投げて追い払ってる。

 アレク君達は後方だから、そういう所が見えてないのだろう。

 見た目が粗野だから、というのも否定できないが、結構優秀な人達だぞ?


「ああいう奴らとは関わらない方が……」

「品が無さすぎるのも……」


 

 なんて声が聞こえてくるけど、これは相性だな。

 スコーピオンズも光剣とはあまり関わろうとしていないし、それが良い。



 街まであと半日というところで、前方が騒がしい。


「待ち伏せだ! 馬車を守れ!」

「警戒!」


 メサ達にも伝える。

 飛んでくる矢も全員叩き落とせている。


「野郎どもやっちまえー!」


 この声は野盗かな?

 15人はいるだろうか?

 一気に駆け寄ってくる。

 俺たちも迎撃しようと待ち構えている。


 すると後ろから1人飛び出した。


「盗賊は許せない!」


 アレクが叫びながら走り出す。

 ローズとメガネ君もついていく。

 えぇぇぇぇ!?


「馬車の後ろガラ空き。メサ達はここを守れ!」


 そう言ってアレク達の抜けた穴を塞ぐ。

 スコーピオンズもカバーに入ってくれた。


 アレク達の攻撃も強く一振りごとに敵が減っていく。

 だがワラワラと増えていき。

 最終的には全員で30人は倒しているだろうか。

 ミハエルも風魔法でアレクを援護しているようだ。


「終わったようだな。怪我無いか?」


 監督が話しかけてくる。


「大丈夫です」



 やっと終わった。

 そう思っているとアレクが少女を抱えてきた。


「野盗に捕まっていた子です。まだ仲間がいるようだから助けないと!」

「早く行かないと、殺されるかもしれないわ!」

「売られちゃったら辿りづらい」


 だとおっしゃってますが、監督。


「緊急だろうが、まずは兵士に連絡しないとな」


 言ったすぐそばから


「間に合わなくなる! それなら俺だけでも行く!」

「私だって!」

「僕も!」


 走り出した。


「「「は?」」」

「くっそ共がぁ! 俺が追いかける! お前達は兵士に伝えろ!」


 監督も駆け出した。


 何が起こったんだろうか。

 まぁ、やることはわかったな。


「街へ行きましょう」



 呆けていた御者さんも頷いて進み出す。

 そこでミハエルが提案した。


「足には自信があるので、私が先行して兵士に伝えてきましょう。兵士の案内役も必要です」


 まぁ納得できるので、御者に許可を貰っていった。



「こういうことは珍しいんですけどね。私も初めてですよ。はは。」


 顔は笑っていなかった。


 街へ到着後、軽く門番に説明するとすぐに通してもらえた。

 兵士と戻ってきたミハエルが話を通したと聞いている。

 この街はワルシャという。

 聖教国との中間の街のようで、かなり栄えていた。

 中央通りも広く、その通り沿いに店がある。

 そのまま御者が店まで乗り付け荷を下ろす。


「手伝った方が良いですか?」


 一応聞いてみる。


「大丈夫です。荷の確認は私の仕事。でしょう?」

「今日は小遣い稼ぎできませんよ。ふふ」


 向かいの店主に告げる。


「あぁ。今日はしっかり者さんか! 誰だ?」


 聞くと御者が俺に向いた。


「はは! 王都の奴は苦笑いしてたろ? 悪人じゃないから許してやってくれぃ」


 豪快に笑っていた。


「さて、皆さん。事件はありましたが、明日には戻らないといけません。良ければ帰りも護衛お願いできますか?」


 スコーピオンズとお互い頷き合う。


「「受ける(ます)」」




 ……

 …………



 俺たちが依頼を受けた店はガンツ商会と言って、いくつもの国に店を持っているらしい。ドワーフが会頭で金物に強い。

 ワルシャの店主もドワーフだ。

 ガンツ商会の向かいにある宿屋も持っていて、昨日はそこで休ませてもらった。

 疲れも取れて朝のうちに再出発。

 帰りの荷物もあるからな。


 ミハエルは結局戻ってこなかったが、仕方ないだろう。

 店主にも来たら言伝を頼んでいる。


「では、みなさん帰りもお願いします」


 ゴトゴトと走り出す。


 帰りの途中、何度も兵士に会ったが、結果はまだわからないらしい。

 大変なことになってしまったなぁ。

 と思いつつ、きっちり仕事をこなしていく。

 野営の時、ニンニクを入れてあげたら、御者さんとオスク以外喜んでいた。

 スコーピオンズもメサも馬もだな。

 これは本格的にニンニク屋台を始めようか……。

 帰ったら道具と屋台を揃えてみよう。


 王都まで、イノシシが2頭出たが、他は何事も無く戻れた。



 ……

 …………



 今俺たちは依頼人と対面している。


「なるほど、そんなことがあったのか」

「監督も動かざるを得なかったようですが、この方達は最後までされました」

「人助けだから悪く言いたくないが……商会の依頼としては君達みたいな者に任せたい。細かい奴だと思ったが、しっかり者は歓迎だぞ?」


 そう言って何かの木札を渡してきた。


「それを持ってギルドに行ってみなさい。すまんが御者の続きを頼む」


 そう言って御者さんを俺たちに付けてくれた。

 探索者ギルドに到着すると受付が待っている。


「7級試験お疲れ様でした。木札を預かります」


 全員の木札を受け取ってカウンターの下で確認している。

 これは魔力で何かしてるのかなぁ。


「お待たせしました。スコーピオンズの皆様とノール様の昇級を認めます」


 新しいギルド証を渡してくれた。


 金属? 知らなかった。


「おぉ! 中級って金属製だったのか」


「はは。田舎もんがー」

「中級になったらな! こうするんだよっ」


 そういって証を噛もうとする。


「俺も!」


 3人ともプレートを噛んでいくと受付に怒られた。


「ちょっと! そんなこと言ったの誰ですか!?」

「「「ギルドマスターだけど?」」」

「あのクソ親父がぁ……」


 そう言って受付さんは走り出してしまった。


 俺たちが証をもらったのを確認すると、御者さんとお別れになった。


「私は上で報告がありますのでね」


 そう言って残りの木札を見せてくれた。


「では、さようなら」

「「「じゃあな!」」」


 そう言って別れる。


「おっと待ちなぁ。ふふん」

「せっかく終わったんだぜ!」

「打ち上げだろぉ! ヒャッハー!」


 街の居酒屋へ直行。

 外壁の近くで、スコーピオンズの行きつけということもあり、従魔2匹も店に入っている。

 意外と人気であちこちでおつまみを貰っていた。

 メサは親父に人気があった。


「おっ。クラゲは辛味焼き好きか? 癖になるんだよな!」

「酒もいけるじゃねーか! もっと飲めぇぇぇ。はははは!」


 オスクは女性に人気があるようだ。


「カモちゃんこっちおいでー。もこもこ気持ちいい!」

「わたしもー」

「お前らほどほどにしとけよー」


 ビシ!(ブルブル!)(くわっ!)

 敬礼もだいぶ様になったな。


「ぶっひゃひゃひゃ。ほんと何それ!」

「あっひゃひゃ! 野営からやってたよなー。」

「はっははは! マジうけるんだけど」


「敬礼ですよ。敬礼。なぜか覚えたから形を、こうクイッと」


 話も盛り上がり身の上話になった。

 スコーピオンズは近隣の村出身で、ここらの道に詳しいと言っている。

 だから野営場所も知ってるんだな。

 俺もニールセンから来たが、数年以上前は記憶が曖昧だと伝えた。

 彼らも、ニールセンは何度か行ったことあって、そのうち帝国を見るのが夢だったらしい。

 中級に上がったからそれも出来るようになったと喜んでいる。

 それから、お互いの服の話になった。

 変わった服を着ていると言われる。

 遺跡のと似ていたネタを盛り込んで伝えたら、面白い答えが返ってきた。

 彼らの服も別の古代人の壁画に描かれているという。

 聖教国の2つ先の国、そこから来た旅人が教えてくれたそうだ。


『昔は荒廃した世界があった。毒の瘴気を払うために、マスクを装着し火を吹く武器を抱えた英雄が居た。その英雄が瘴気を払ったおかげで、今では何も付けずに息ができている』という物語。

 知ってるような知らないような……。

 気のせいだろう。


 その英雄が肩出しの革鎧を着込んで消毒するらしい。

 彼らはそれに見惚れて真似ているという。

 見た目はあれだが、普通に良い人達だった。


「ニンニク屋台!期待してるぜぇ」

「必要な物あれば言ってくれ」

「すぐ駆けつける!」


「「「じゃあな!」」」


 なんだかんだで……





 楽しかったかもなぁ。


 さぁ、帰るぞメサ! オスク!

 ブルブル!

 くわっ!


 良い敬礼だ!

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