第53話 7級試験1

 受付さんに言われた通り、あれから3日後にギルドへ来た。

 早朝にも変わらず活気があり、そこかしこで探索者が依頼を探していた。

 その中で目立つ存在がいる。


「アレク。準備はちゃんとしてきているよね?」


 なんか見たことある少年だ。


「マーリンこそ食料詰んでるわよね?」


 この少女も見たことが……。

 まぁ、気のせいだろう。


 早く受付に行って試験の確認だ。


「おはようございます。本日、7級受験のノールです。確認お願いします」

「はい。確認出来ました。本日の受験人数は8人ですね。あと3人来ていませんので、もう少しお待ちください」


 そう言われ、壁際の椅子に座った。


 しばらくすると3人の若者が近寄ってくる。

 受付と話していた時から視線を向けてた人たちかな。


「あなたも今日7級試験を受けるんですね。俺たちもなんです」


 顔を上げると先程の少年たちだ。


「あぁ、よろしくお願いします。お若い方々だ。よほど優秀なんでしょうね」


 とりあえずおだてておく。


「冴えない顔した男ね。まぁ、一緒に護衛するんだし頼むわ」


 ツンツンした少女だな。

 おそらく試験以外では関わらない部類だろう。

 俺のスルースキルが試されそうだ。


「ちょっとローズ! 初対面で失礼だろう? 申し訳無い。俺がパーティーリーダーのアレクだ。今日はよろしく」


 さわやかな少年だな。

 だが俺の感が言っている。

 あまり関わってはいけないと。


 出来るだけ覇気の無い草臥くたびれた笑顔を作るんだ。

 そこで言う。


「今日はよろしくお願いしますねぇ」

「うっわ。何その顔? 本当に7級受ける資格あるの?」


 うっさいわぼけぇ!

 シワが寄りそうなのを我慢する。


「止めなよ。凄い力持ってるかもしれないよ?」


 メガネ君良いこと言うね。


「こんな冴えない顔にあるわけないわ! 受かりたかったらアレクに背負って貰うのね!」


 言いたいだけ言って、去って行ってしまった。


「はぁ、何度もすまん。ちょっと機嫌悪いみたいで……」


 そう話すアレク君。


「まぁ、試験だけだから大丈夫でしょ」

「俺はアレク。隣のがマーリン。行っちゃったのがローズだ。改めてよろしく」

「私はノールです。よろしくお願いします」


 ここで受付から集合がかかった。


「これより7級試験を開始します。受験者はギルド裏手に回ってください」



 ……

 …………



 俺の周りには受験者が7人。

 さっきの若者パーティー3人。

 肩にサソリの刺青した男たち3人。

 細目の優男が1人。


「8人いるな? よし。これから7級試験の説明をする。予定は4日間馬車の護衛だが、緊急事態があれば伸びることもある。緊急の場合は俺が判断するから、その時は指示に従えよ? 東門に出口に依頼人の馬車がある。出発してから試験の開始だ。何か質問は?」

「評価基準はどうすんだ?」


 肩にサソリの刺青した男。


「依頼人含め馬車が無事かどうかが基準となる。また、受験者の行動でも増減するから気をつけろよ?」

「っけ。道中は俺らがお前らのお守りしてやるから、馬車を守れよぉ?」


 それだけ言って西門へ向かってしまった。


「何よあいつら! ふん!」


 ローズ氏はご立腹のようだ。


「他に質問は?」

「私は従魔がいるんですけど、扱いはどうなりますか?」

「従魔は仲間扱いになるな。うまく指示すればそれも評価だ。他に質問無かったら、従魔連れて早めに行っとけ」


 厩舎へ向かう。


 ……

 …………



 西門に到着したが、どこにいるのだろうか?

 おっいた。

 サソリ男は目立つな。


「お待たせしました」


 俺が到着した時には全員集まっていた。


「ちょうど依頼人が来たようだ。お前らちゃんと話聞けよ?」


 監督の指示がでる。


 門から小走りに来たのは、キラキラした服を着た恰幅の良い中年。


「ふうふう。お待たせしました。これから西の街へ荷物を届けてもらいます。その後、その街から荷物を受け取り、王都まで戻ってくる。無事に荷物を届けられれば完了です。昇級試験ということですが、ちゃんと依頼料もありますので頑張ってください」

「お前ら何か聞くことはあるか?」


 監督が言う。


「「「……」」」

「じゃあ行くとするか」


 動き出す。

 ただ何となくだが、門番が近い場所で言っておきたくなった。


「あぁ。荷物の中身知らないなぁ。御者さんが確認するんだろうなぁ」


 チラ。


「途中で忘れ物あってもわからないなぁ」


 チラッチラ。


「ちゃんと確認させておきますよ……」


 依頼人が話したのを確認して、門番をみる。

 よし頷いた。


「では行ってきます」


 オスクに乗り馬車へ向かう。

 くわ!



「遅いわよ!」


 すでにご立腹。

 やれやれ。


「じゃあ出発だ」


 ゴトゴト動き出す。


 現在の隊列は前方を『スコーピオンズ』サソリ男達。

 左は俺。

 右は細目。

 後ろに『光剣』若者3人。

 真ん中が馬車となっている。

 位置的に俺と細目は御者と話す機会が多くなる。


「さきほどのノールさんので、店長は無理出来なくなりましたからね。不正は無いと思って良いですよ?」


 笑っている。


「やっぱりそういう人ですか?」


 尋ねてみる。


「間違っては無いですよ。ただあなたの想像より小物で、額もお小遣いレベルです。その程度は私たちも目を瞑りますからね」

「それなら言う必要も無かったかな?」

「それも含めての……でしょう?」


 ここで反対側から声がかかる。


「僕も見てたけど、用心深いのは悪いと思わないよ。自己紹介がまだだったね。僕もソロの探索者でミハエルだ。よろしくね」

「ノールです。よろしくお願いします」


 そのまま左右を警戒しつつ夕方まで動いた。



 ……

 …………



「今日の野営地はここが良いんじゃないか?」


 アレクが話す。


「ここじゃダメだ。もう少し先に見通しの良い場所がある。」


 反対するサソリ男。


「アレクが言ってんだからここで良いのよ!」


 ローズお前は疲れただけだろう。


 監督は何も言わないが、これも試験なんだろう。

 俺はどこでも良いんだがな。

 細目はアレク派。


「あんたはどうなのよ!?」


 めんどくさっ。


「えっと。御者さんはどっちが良いですか?」


 投げてしまう。


「私ですか? いつもは先の広場まで行ってますが……」

「じゃあそっち」


 すかさず答える。


「んーもう!!」


 怒って後ろに下がって行った。


「俺もちゃんと意見は持った方が良いと思う」


 アレク君は若干不機嫌だ。

 そして、メガネ君も同じ考えなようだ。


 広場まで着くと、かなり日が影ってくる。


「あんたが決めたんだから野営準備がんばんなさいよ? どうせ、従魔に乗って楽だったんでしょ!?」


 投げられてしまった。

 得意だから良いか。

 数分で火を起こし、長めの木を3本組んで吊るしも作る。

 起こした火はサソリさんに任せて、野草を採取。

 鍋から全部準備してやった。


「寝床は好みだからな、自分で何とかしてくれ」

「お、おう」


 アレク君達も納得してくれたようだ。


「ぶっは! 野営うまいなぁ? 俺らだと、明るく初めても今くらいに出来上がりだろ」

「そうだな」

「もっとかかんじゃね?」


 スコーピオンズ諸君もご満悦。


「これだけ出来るから広場でも良かったんだね」


 ミハエル君が勝手に納得している。

 監督がやってきた。


「早く出来てんじゃねーか。味見っと、うめぇー。誰がやった?」


 聞かれたので手を上げる。


「あぁ、草取りか。お前の野営は十分だから、帰りは他の奴がやれよ?」


 そう言うとそそくさと戻って行った。


「じゃあ、帰りはお願いします」



 夜の見守りは俺が中間になった。

 これもオスクに乗って楽だったから、らしい。

 まとまって休むと疲れ取れるからね。

 光剣からミハエル、俺の後にスコーピオンズの順番で見張る。

 では休んでおこう。


 目を瞑っているとミハエルに肩を軽く叩かれる。


「交代だよ。変わりなし」

「了解」


 他の人たちはテントで休んでいる。

 俺か?

 オスクを枕に草の上で寝転がってたよ。


「メサ。一応警戒ね」


 敬礼のポーズ。

 オスクもやってる。

 警戒しつつ、周りの野草を詰んでいく。

 いくつか動物の気配はあるが、襲ってはこなさそうだ。

 焚き火の火を絶やさずに2時間弱かな。

 そろそろだと、スコーピオンズを起こす。


「交代です。動物が少しいるけど襲ってはこなさそう」

「そうか。わかった」


 互いに確認すると、焚き火係とテント収納に分かれておこなっていた。

 俺も寝る気にならないので、メサ達と遊ぶ。


「前から気になっていたが、敬礼の角度さ……」


 ピシ!と2匹ともやってくれる。


「ちょっと甘いよね。もっと腕を直角にした方がカッコよく……」


 ビシ!


「良い感じ! そこで先を少し開き目に」



「あいつ何やってんだ?」

「さぁ?」

「従魔士ってあんなのが多いのかもな。知らんけど」



 ……

 …………



 日が昇り始めたので練習はここまで。


「朝飯の準備しようか」


 さっき採った野草をぶち込んで芋入れたら良いだろう。

 自家製ハーブ入りのスープ完成だ。


「お前料理人になれるんじゃ無いか?」

「屋台出したら俺らも行くぜ?」

「良いな。出せよー」


 それもありかもしれないな。

 今度やってみよう。


「あぁ良い匂い」

「お腹減ったわ」


 どうやら起きてきたようだ。

 朝飯も良いが、テントは早めに片付けなよ。

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