第21話 探索者生活1
あれから数日後、ノーリが訪ねてきた。
「お主。精霊教会に住んでおったのか」
「教会の端に住んでるけど、何のかは聞いてなかったな。他にもあるのか?」
「ほんとに田舎もんだったか。ここら辺の宗教だけでも教えてやろう」
この国にある大きな宗教は3つ。
神人教。これは知っているやつだ。人族への優遇が多いため、人族の信者が多い。人族の国では、国教としているところも多く、貴族の多くは神人教だ。
精霊教。今お邪魔しているところだ。火水土風と、対である光闇の6大精霊を祭る宗教らしい。種族関係なく信者がいる。
獣神教。人族より獣人や獣族の方が優遇される宗教。獣族の信者が多い。ただし、全面的に人族を排除しているわけでは無いらしい。力自慢の戦い好きが多い。
他にも、細々と多数の宗教があるらしい。
「儂のいた国では、機人崇拝というのもあったぞ。遺跡から見つかった機器が人型だったらしい。ゴーレム狂いとも言うとるがな。ははは!」
「なんとも……。信仰する対象が多くて迷うな。俺はしばらく宗教も浮浪しておくよ」
「ここに住んどるのだろう。精霊教には入らんのか?」
「そんなこと知らずに住んでたのに今更さ。入らなくても何も言わないでしょう。その好意に甘えておくさ」
立ちながら話していたので、畑横にあるテーブルに案内する。
「さぁ、自家製のハーブティーだよ。ハチミツはそこの小瓶にあるから、好きなように入れてくれ」
するとノーリは訝しげに見てくる。
「意外と金持ちなのか? ここだとハチミツなんぞ高級品だろうが」
「森で取ってくるんだよ。お茶も野菜も全部ね」
「金は無くとも贅沢な生活じゃ。いただこう」
カップを半分程飲んだくらいで、ノーリが話を切り出した。
「お主と話したかったのは、長命種についてじゃ」
「はぁ。エルフと、あとノーリさん以外は知らないな」
「さん付けは止めてくれ。鳥肌が立つわい」
「そんなに嫌なら止めるけど、口癖みたいなもんなんだよ。ノーリ」
「うむ。この街にも何人か長命種がおる。その一人が知り合いでな。お主を見かけた時に同種だと感じたそうだ。若く見えるが何歳くらいなんじゃ?」
自分の年齢なんて、ずいぶん数えてなかった。考えるだけ無駄だな。
「年とか……。数えてないしわかんないよ。昔の日記でも見つかればわかると思うんだけど、探し中だ」
「ふむ。その答えで十分じゃ。およそ長生き者は年を数えなくなるからの。人族での長生き者はあまり聞いたことが無い。この街の同種に会わせてやる。10日後あたりに用意しておくゆえ、一日開けておけ」
「10日後ね。たぶん大丈夫」
その後も街での暮らしやギルドの仕事について話した。
ノーリは採取より討伐を優先しているらしい。新しい武器を使って試すのが好きみたいだ。子供達に上着を作ってあげたいので、余ってる毛皮を頼むと、北森にある
_______________
ノーリと話した翌日。
キルヒやテンコと一緒に北の森に来ている。
「キルヒさん。右手側の木の根あたりにあるよ」
「おぉ。
「キルヒあほ。こんだけ鬱蒼としてるのに、普通見つかんないわ」
どうしてこうなったかと説明すると、今朝の話。
ギルドの依頼板を見ていると二人に会ったんだ。
森の依頼を受け始めたそうだが、うまく行っていないと話していた。セルジオさんに相談すると、パーティー経験も必要ということで、臨時の手伝いをすることになったんだ。
「テンコ。パーティー組んで良かったねー。ノールさんは、この森に詳しいんですか?」
「ここ限定じゃないんだけどね。趣味が植生調査だから、どんな場所に生えてるかイメージしやすいんだ」
「すご腕仕事人。見つけ方教えて……」
「いいよー。ただ、取りすぎないように気をつけてね」
「やったね! 僕の魔術用にも欲しいし、助かる」
森での探し方教えながら夕方まで採取を続けた。
依頼品と自分達用に採取を終えた帰り道。
「ついでに平原の薬草も取っておこうよ」
そうキルヒが言ったので伝えておく。
「止めといた方がいいよ。ここの薬草もうすぐ無くなるから、取った分だけ早くなるし。もう森でいいんじゃ無い?」
「えぇぇ? かなりマズイじゃないですか! セルジオさんに教えてもらったんですか?」
「いや? 見たらすぐわかったよ? 人も動物も取ってるから、増殖が間に合ってないんだよ」
「激ヤバ! 兄ちゃん、ギルド報告するべし」
「まぁ、そこまで言うなら……。戻ったら言っておこうか」
ギルドで報告すると、結構大事になった。
薬草スポットの現状を伝えて、調査となった。ただ、薬草の減少はわかっても原因がわからない。
結局、中級パーティーを3チームも動員して再調査した結果。街の下水道で増えた魔物が、近隣の草場を荒らしていることが判明する。薬草だけでなく、畑にも被害が出ていたので、下水駆除の依頼で溢れかえってしまった。
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