第3話 修行不定記1

 2038年 夏

 近況報告からしよう。なぜか家の前に賽銭箱が出来た!小屋に行く人がおいてったらしい。使用料が定着したため、料金箱を置いてったそうだ。気にしなくても良いんだけどね。ちなみに保険やら税金関係は、猟友会の繋がりの人に頼んでいる。収入とか、賽銭箱くらいだしね。最近は大熊おおくまさんという人が俺との窓口となっていて、何かあった時は、平岩まで手紙を持ってきてくれる。集中しているせいか瞑想中は気づかないんだよね。猟友会とはズブズブの関係だ!

 良く会うので、俺は大熊さんを「クマさん」と呼んでいる。


 いよいよ修行開始。いつもの岩の上にいると、フラッと爺さんがやってきて植物の効能やら、薬の効果まで教え始める。ただ、日本語以外が多くて結構困る。中国語からヒンドゥー語、英語も混じっているんじゃないか?本を一冊もらったがいくつも言語が混じっていて謎解きしてるようだ。本当にこの爺さん何もんだよ。


 瞑想も継続している。自然を深く感じるように指導されたのだが、なかなか難しい。ヘソの下辺りに何かあるのはわかるんだが、体の外側がわからないんだ。


 瞑想後、畑に生っていたスイカを元上司と妹に送っておく。いつスイカ植えたっけ?



 2039年 春

 久しぶりに家に戻ったら手紙が置いてあった。妹家族が家に来ていたらしい。

 最新の新聞を読めと、隣に置いてあった。ついにガソリンが完全廃止になったらしい。予備に置いてられない燃料とか困る。クマさんに相談したら家のソーラーパネル強化と電気スタンドを置いてくれることになった。小屋を使う人にも便利だからWIN-WINなんだとさ。


 真のジロリアンになるための修行は困難を極めた。なんとあの次郎人は、毒を少量ずつ食事に混ぜていると言って赤いサンゴを見せてきた。食事の前に胃薬として丸薬を飲ませてくるし、どうりで最近口とお腹の辺りが熱いわけだ。とても弱い毒なのだろう。デザートのヨモギ団子はおいしかったです。糖分が多いのか目眩がするんだよね。

 あっ、行者にんにく発見。こいつとノビルは真っ先に覚えた山菜だ。




 2040年 夏

 最近は、瞑想1ヶ月と薬学1ヶ月を交互に行っている。

 山の植生にもかなり詳しくなった。あの爺さん、なんてもの食わせてたんだ!カエンタケとトリカブト食って生きていた俺を褒めよう。今日はニンニクパーリーかな。


 修行から家に帰る途中、何人か連れたクマさんに出会った。ピシッとスーツを来た老人が特に目立つけど、かっこいいな。毒食わせ爺さんとは大違いだ。

 今日は仕事の話をしに来たらしい。猟友会とズブズブな俺を雇いたいそうな。人口と村の減少で、害獣が異常に増えているらしい。そんな中、山の管理を継続していて、繋がりのある人を公務員にしてしまえという話だ。

 特に今年は、木の管理と獣の発見は得意になったので、自信がある。ただ1ヶ月瞑想続ける人で良いのか心配だ。と思っていたら、今まで通りで良いらしい。それならば受けてしまおう。ついでに給料で場所を借りれば良いやと、土地も渡してしまった。資産管理も面倒なので、これで楽が出来るな!

 話中ずっと気になっていたんだが、ご老人のお腹が黒く見える。帰りに次郎人特性の胃薬を分けてあげよう。強烈な胃もたれであろうと、回復してしんぜよう。なにせ、あのトリカブトを無害化したのだから大丈夫なはず。



 山に引っ越してから、かなり大らかになった気がする。時間の感覚も大らかになった。細かいことも気にしなくなった。そうだ、決してバカになったのではない。大らかになったのだ。

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