1章 修行不定期

第1話 脱サラ不定記1

 2035年5月10日

 どうもこんにちは。ドロップアウトおじさんこと、高橋実たかはしみのるです。最近35歳になりました。

 山暮らしを始めて1ヶ月が経ち、生活が落ち着いてきたので、日記を書いておこうと思います。


 なぜ山暮らしを始めたかというと。

 会社はグレーだけど比較的ましな方だったのですが、勤め先がターミナル駅近くのオフィス街で、都会暮らしに疲れてしまいました。元々人混みが苦手な上、社内の人事整理と重なって、多めの退職金に飛びついてしまいました。

 母親は自分が子供のころに亡くなり、父親も数年前に亡くなっていたので、だれ気兼ね無くといった気持ちです。1人妹はいますが、出来る奴で、結婚後もバリバリ働いているので心配いらないでしょう。

 趣味もキャンプや釣りだったので、脱サラを機に山を買って、山暮らしを始めたということです。


 家はコンテナハウスにして、生活は湧水とソーラーパネルで今のところなんとかなっています。



 2035年6月1日

 先日、近くの村に挨拶へ行きました。村長は、結構お年を召していて80代後半みたいです。ただ、見た目は年齢より若く、背筋も伸びていてバリバリの現役だそうです。

一番若い人で30代が1人というので、大変そうですね。自分も若者入り出来た様ですが、少し複雑です。色々仕事言われても困るので、ここでは突っ込まない様にしました。

 山で暮らすことを伝えると、害獣が出ることがあるから、注意するよう教えてくれました。帰りに、熊避け道具を買ったので、一安心ですね。手作業で鳴子でも作っておきましょうかね。こういう物作りもやりたかったんです。

 そういえばあの村の名前何でしたっけ。聞いたけど覚えてないですね。今度地図でも見ながら確認してみましょう。


 2035年7月15日

 数日前、山の中に厨二心をくすぐる平べったい大きな岩を見つけました。日当たりも良く、座ってみると気持ちいいんですよね。眠くはならないので、瞑想でも始めてみましょう。


 そうそう、嬉しい知らせです。

 引っ越し当初にトウモロコシを家の横に植えていたんですが、やっとこさ収穫できました。味も甘くておいしかったので、妹夫婦と前の上司の家にでも送りつけておきましょう。

 果物も欲しいので、タネ屋で買ってきましょうか。近くの村で相談しても良いかな。



 2035年11月3日

 最近は寒くてかないませんね。瞑想中は気にならないんですが、終わった後は体が特に冷えます。

 トウモロコシを送った上司から、手紙と色んな種が届きました。どうやら奥さんとお子さんが喜んだみたいで、お礼だそうです。食べられそうなので、暖かくなったら適当に植えておきますか。今は芋と大根が先ですね。

 ただし、配達員さんが荷物届けに来た時は、顔が引き攣っていました。持ってくるの大変なんでしょうなとか、考え出したら終わりがないので、気にしないことにしました。次からは置き配で良いと伝えたら、喜んでいました。

 配達も苦労が耐えないのでしょう。ご苦労様です。



 2036年3月7日

 ここの所、瞑想すると時間の感覚が狂うんですよね。気づいたら夜だったり、朝だったり。体調はすこぶる良いので問題無いですかね。

 ちょっと前の話ですが、猟友会の方が挨拶に来ました。近くの村に熊が頻繁に出てるらしく、情報があれば知らせて欲しいとの話でした。家の周りは荒らされてないので大丈夫そうです。数日探索することもあるようなので、山奥にある作りかけの小屋でも開放しましょうかね。

 村長も心配してくれてたようなので、今度挨拶に行きましょうか。ついでにお土産を持っていきましょう。

 何が良いでしょうか。キノコは危ないから、有名な山菜だけにしましょう。こういうのは、考えてる時が一番楽しいです。



 2036年5月3日

 ここ数週間、森に人が出入りしているようです。私は会ったことないけれど、猟友会の人たちでしょうか。

 毎回出入りしているのがわかると、皆さんも大変なんだなぁと思ってしまいます。何か差し入れしようかとも思いましたが、今は気が立っているでしょうし、終わってからにしましょう。

 そういえば、村に行ってませんでした。山菜も時期が外れちゃうので、他のお土産を考えましょう。何が良いか悩みますね。

 それと、一頭鹿を見かけました。角は無かったので、若いのかメスだったか。珍しかったので、畑の野菜を放ってみましたが、見向きもしません。

 嫌いなのか、グルメだったのか、贅沢なやつです。



 2036年6月1日

 日記を見返すと、デスマス調で落ち着かないので、これから変えようと思う。少し砕けた方が読みやすいだろう。

 数日前、村に挨拶に行った時、熊は駆除されたと教えてもらった。村の人と宴会をして祝った時、調査に時間がかかったと言っていたので、出来上がった小屋を猟友会と村人に開放することにした。小屋までの地図を村長に数枚渡して、俺の格好に気をつけて欲しいと、一応念押ししておいた。間違って打たれたら嫌だからね。

 格好と言っても最近は、ほとんど作務衣しか着てないんだけどね。


 ついでに鶏農家さんから5羽ほど貰ってきました。卵……ジュルリ……。

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