1日後②

「ごめんね。呼び出しちゃって」


俺は怖くて先生の目を見ることができなかった。


「どうしても読んでもらいたいものがあって…」


先生は持っていたファイルの中から封筒を取り出した。


「陸上部のみんなへ」


と書かれていた。


霧倉の字だった。


「これ読んでほしい」


やっと陸上部が呼び出された理由が分かった。


だけど読むのが怖い。


震える手を封筒の口に近づけた。


紙を取り出すと涙が垂れたような跡があった。


誰の涙なのか分からないけど俺も泣くんだろうなって思った。


「陸上部のみんなへ


急に4階から飛び降りてごめんなさい。

もし私の無惨な姿を見てしまった人がいたら本当にごめんなさい。ごめんなさいでは済まないと思うけどごめんなさい。


陸上部のみんなと過ごした日々は本当に幸せでした。みんなの優しさがあったからこそ生きてこれました。どれだけ辛い日でも部活の時間のために頑張れました。最後の総体、やっと親に大会に出場させてもらってみんなの支えもあって表彰台に上れて、私の最後の夏は誰にも負けないくらい濃い夏でした。


みんなには身体的にも精神的にもいっぱいサポートしてもらった。なのにお返しができないまま消えてごめんなさい。


卒業式の日に死ぬって決めてずっと考えてたのが陸上部のみんなのことだった。もし飛び降りて陸上部の子にぶつかったら、第一発見者が陸上部の子だったら。だけど自分の感情を優先させてしまいました。本当にごめんなさい。


陸上部の入って本当によかった。同級生だけでなくて先輩、後輩、先生にも支えられた。陸上部に入ってなかったらもっと早く死んでた。みんなには言葉では伝え切れないくらい感謝しています。


2022年3月10日」


なんでもっと霧倉のこと気にかけてあげなかったのか。


朝戸たちに逆らうのが怖くて何もできなかった自分が憎い。


霧倉を見捨てた俺に泣く資格なんてないけど涙が止まらなかった。


「俺が助けてあげれなかったのが全部悪いです」


泣きながらそう言うと先生が


「担任だったのに助けてあげれなかった私の責任」


そう呟いた。


だけど俺は南川先生が霧倉を必死に助けようとしていたのを知っている。


だから南川先生には自分のことを責めてほしくなかった。


「これも読んでほしい」


先生はもうひとつ封筒を取り出した。


「稲崎くんへ」


霧倉の字でそう書かれていた。


今までの恨み、憎しみを書かれているんじゃないか。


破り捨てたいって思ったけど霧倉は俺のせいで死んだ。


ちゃんと読むしかない。


そう思っても開けるのは怖かった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死んだ幼なじみ @upi_28

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ