1日後
結局一睡もできないまま気づいたら朝が来ていた。
昨日のあの光景が頭から離れない。
大好きだった人がもうこの世にいない。
事実をまだ受け入れられなかった。
「ご飯食べれそう?」
母さんが部屋を覗きに来た。
「ちょっとなら」
霧倉が何を思って飛び降りたのか俺には分からない。
だけど多分いじめが原因だろう。
朝戸たちに逆らえずいじめられている霧倉を見て作り笑いをしていた自分を殺したくなった。
重たい体を起こして朝ごはんを食べにリビングへ向かうと母さんが電話をしていた。
「先生から電話、出れる?」
俺は受話器を受け取った。
「稲崎くん?」
「はい」
「ごめんね疲れているのに電話して」
俺は何を言われるのか分からなくて震えていた。
「今日学校来れる?」
「……」
「私が稲崎くんの家行くのでもいいけど…」
「…学校…行きます…」
「ごめんね急に。いつでもいいから来て。私服のままでいいから。」
学校行くと言ったが行くのが怖い。
警察から取り調べでも受けるのだろうか。
先生から怒鳴られるのだろうか。
ご飯を食べて着替えて布団の中でダラダラしていると同じ部活で同じクラスだった西波から電話がかかってきた。
「お前さ学校から呼び出された?」
「うん」
「陸上部みんな呼び出されてるらしいねん。」
「まじかよ」
「なんか心当たりない?」
「なんとも言えねえ」
「何時くらいに行く?」
「心の準備ができたら」
と言ったが正直行く気ではなかった。
「吉川さんが今行ってるらしいから帰ったら陸部のラインに詳細送るって」
「了解」
陸上部は平和だった。
陸上部で霧倉がいじめられているのを見たことがない。
なのになぜ陸部が呼び出されるのだろうか。
理由が全く分からず更に行くのが怖くなった。
横になっていろんなことを考えていると通知音が鳴った。
陸部のグループラインだ。
「全く怒られたりしなかったので安心して学校行って。正門はマスコミが集まってるから裏門から行ってインターホン鳴らせば先生出てくると思う。」
吉川さんがそう書いていた。
怒られない?
じゃあなんで呼び出されるんだ。
そんなことを考え始めたら学校に行きづらくなった。
「昼ごはんいる?」
「うん」
気づけば正午を迎えていた。
母さんが作ってくれたドライカレーとスープを食べた。
毎日親がご飯を作ってくれることのありがたみを今日感じることができた。
「先生が今日来れそうになかったらもうちょっと落ち着いてから来ていいよだって」
西波からLINEが来た。
呼び出される理由が知りたい。
だけど学校に行くのが怖い。
夕方に鳴ってやっと学校に行く勇気が出た。
正門にはマスコミが集まっていた。
裏門のインターホンを押すと教頭先生が出てきた。
「入って」
教頭先生について行った。
教頭先生が職員室に入ったので俺は廊下で待った。
冷や汗が止まらなかった。
「無理して来なくてよかったのに」
南川先生が出てきた。
相談室に連れて行かれた。
「座って」
何を聞かれるのだろうか、言われるのだろうか。
自分の首を絞めて死にたくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます