1学期

2021年7月31日


今日は祭りだ。


朝戸たちに近所の祭りに誘われたが断った。


今日は霧倉と隣の市の祭りへ行く。


霧倉の家のインターホンを鳴らすと霧倉が出てきた。


「ごめんちょっと遅れて」


「全然大丈夫」


目的地まで自転車で50分。


頑張れば行けるが霧倉は自転車を持っていないので電車で行く。


霧倉と電車に乗るのは初めてだ。


電車の中で宿題の話や俺の弟の話をしているとあっという間に着いた。


「金どんくらいある?」


「350円…」


「帰りの運賃で280円消えるから70円しか使えねえじゃん」


霧倉は寂しそうな顔をした。


「俺がなんか奢るよ」


「えっ、でも」


「今日はあいつらいないからいいんだよ」


俺が少し格好つけた。


霧倉は400円の焼きそばと200円のポテトを食べた。


そして2人で300円で2本の焼き鳥を分け合った。


「ごめんね。いっぱい買ってもらって」


「いいよ、気にすんな」


「あれ萱原先生じゃない?」


「えっ!?どれ?」


思った以上に大きな声が出てしまった。


「稲崎と霧倉じゃねえか」


萱原先生は中1の頃の担任で今年度から新しい学校へ異動した。


萱原先生は何人かの若年〜中年の男女数人といた。


「お前らデート?」


「ちっ、違いますよ」


俺はそう答えたが顔が赤くなっている気がした。


「霧倉、稲崎は自分に素直になれねえから気をつけてやってよ」


「分かりました」


霧倉は少し嬉しそうだった。


「先生こそデートなんじゃないですか?」


「俺は見回り。今の学校に厄介なモンペがいて祭りで中学生暴れさせるなって」


「大変っすね」


「間もなく花火の打ち上げが始まります」


「2人とも近くで見てきなさい」


「じゃあ先生お疲れ様です」


俺と霧倉は一礼して花火を見に行った。


「綺麗だね」


「うん」


ああ今俺青春してる。


幸せだ。


「今日誘ってくれてありがとう。今までで1番幸せだった。」


俺はびっくりした。


「俺もめっちゃ幸せ」


さりげなく言った。


花火が終わり電車に乗って帰る。


「もし何かあったらいつでも連絡してくれていいし家来てくれていいから」


「うん」


「間もなく桜ヶ光西〜桜が光西〜」


「ああもう着く」


「寂しい」


霧倉が何を思って寂しいと言ったのか分からなかったが嬉しかった。


家に帰ってからは余韻に浸って全く眠れなかった。



2021年4月7日


「それじゃあ新しいクラス張り出します」


学年主任の伊節先生が声を張り上げると緊張感はさらに高まった。


「よっしゃー」


「ああああああさらば俺のLDC!!!!」


耳が潰れそうなくらいみんなが叫ぶ。


早くクラスを知りたいのに全く見えない。


「いなりょう同じクラスやぞ!」


同じ部活の西波がそう言ってきた。


「何組?」


「2組」


混雑が解消し始めて自分の目で確認してみると西波の言う通り2組だった。


霧倉と14年間同じクラスか。


1歳の頃から同じクラスなのでもう14年目だ。


担任は南川先生。


真面目な先生だから細かいことに口うるさそうだ。


今年度こそ霧倉と親しくなりたい。

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