1ヶ月前

2022年2月10日


私立入試の日だ。


児玉と一緒に電車で受験校まで向かった。


会場に着くと予想以上にたくさんの受験生がいた。


「くそ緊張するわ」


「俺も」


今日は人生初の受験。


とても緊張している。



国語、社会、理科は自信がないが、数学、英語はそれなりにできた気がした。


面接は途中で噛んでしまったが多分大丈夫だろう。


「お疲れ」


「俺絶対落ちた」


児玉は笑いながらそう言った。


「俺もやばいかも」


3年2組でこの学校を受けたのは俺と児玉と高島さんと吉川さんだけだ。


「女子は絶対受かってるんだろうな」


俺も同じことを思った。


帰りも児玉と一緒に電車に乗って帰っていた。


「なあ、お前だから言うけどさ」


児玉が言ってきた。


「うん」


「最近、朝戸たち調子乗りすぎじゃね?」


「たしかに」


「流石に霧倉さん可哀想」


児玉も同じこと思ってたんだ。


少し安心した。


「でもあいつと居たら楽しいから何も言えないんだよな」


児玉がこんなことを考えていたなんて意外だった。


いつも朝戸たちと一緒にいて霧倉を見て笑ってたから。


俺も周りから見たら朝戸の仲間って思われてるんだろうな。


そう思うとなんだか悔しくなった。


「昨日さ、霧倉さんが石田先生に怒られてるの見た」


児玉が少し勇気を振り絞ったような声で言った。


「霧倉が怒られてた?」


霧倉が怒られるようなことをする人だと思っていなかったから驚いた。


「お前がいじめられるから南川先生がいじめを解決しようとする。俺らはいじめがあったっていう事実を残したくないのにお前のせいで。って言ってた」


石田先生はあまり生徒のことに関心はなさそうだったがこんなことまで言う人だとは思わなかった。


「お前が自殺したら責められるのは俺ら。いじめられるお前が悪い。自殺したってお前が悪いことに変わりはない。死ぬんだったら4月になってから死ね。そして遺書にいじめが原因だとか書くな。」


霧倉のことを思うと助けてあげないといけないと思った。


「俺らで霧倉さんを助けてあげたいけど俺らの力じゃどうにもならないよな。」


児玉の言う通りだ。


朝戸たちに反発できない。


自分の弱さに少し怒りを感じた。



家に帰ってから霧倉に「元気?」とLINEで送った。


2時間くらいして「うん」と返信があった。


週明けに石田先生や朝戸に会うのが怖い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る