2週間前

俺と霧倉は一緒にイルミネーションを見に行った。


「なあ」


霧倉は俺の方を見た。


「霧倉って好きな人いるの?」


霧倉は少し戸惑った表情をした。


「うん…」


「誰なのか教えてもらってもいい?」


霧倉は恥ずかしそうに俺を指さした。


俺はびっくりして心臓が炎上した。


「俺も霧倉が好き」


霧倉はびっくりしたような顔をした。


その顔が可愛くて霧倉を抱きしめた。


幸せだ。



「涼、起きなさい!」


母さんの声がした。


俺の幸せな時間は全部夢だったらしい。


「あんた顔真っ赤じゃん。熱あるの?」


「ないよ」


夢の内容を思い出して体がどんどん熱くなる。


時計を見ると7時50分。


学校は8時5分からだ。


家から学校まで10分。


ああ、絶対遅刻だ。



学校には15分遅れて到着した。


教室に入るとみんな朝の自習をしていた。


「稲崎くん廊下来て」


「乙」


ドアの近くの席にいた朝戸がニヤニヤしながら言った。


「なんで遅刻したの?」


「すみません寝坊しました。」


「受験前なんだからしっかりしてよ」


「すみません」


「稲崎くん、霧倉さんと…」


霧倉という言葉を聞いただけで体が熱くなる。


「家近いけど学校来てる途中霧倉さんのこと見なかった?


「見てないです」


「そっか。家に電話かけても出ないんだよな」


「あっ」


窓から霧倉が見えた。


「よかった〜。来た」


南川先生は安心した表情をした。



だけど霧倉の右目尻には痣があった。


「やっぱお前は誰からも愛されないんだよ」


「痣とか傷はお前のチャームポイントや」


昼休み、男子と陽キャ女子は霧倉のことを馬鹿にしていた。


俺は霧倉のこと愛してる。


そう言ってやりたかった。


「お前そろそろ死ねば?」


朝戸が嬉しそうにそう言った。


「卒業する前にうちらと別れたいでしょ?」


尾和夏希もそう言った。


「なっちゃん怖っ」


春瀬奈実が爆笑しながらそう言った。


ごめん霧倉、何もしてやれなくて。


俺は泣きそうになってトイレに行った。


自分の好きな人がいじめられていることを誰にも相談しない自分に腹が立った。


あと2週間踏ん張るだけなら流石に死なないよな。


俺は自分に言い聞かせた。



塾の帰り、コンビニに寄ると霧倉の母さんがいた。


もう1年以上見ていない気がする。


霧倉の母さんは17のときに霧倉を産んだとか聞いたことがある。


41歳の俺の母さんとは比べ物にならないくらい若々しい。


そして胸もデカい。


霧倉の母さんがカゴの中に入れているものを見てびっくりした。


ビールとカップ麺は普通だと思うがコ○ドームが入っている。


俺は変なこと考えないでおこうと肉まんを買ってすぐに帰った。

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