1日前
2022年3月10日
昨日、一昨日の2日間の公立高校入試を終えた俺たちは卒業式前最後の登校となった。
昨日、朝戸たちが変なストーリーをあげたから俺のことをみんなが見つめていた。
「涼、明日楽しみにしとるぞ」
同じ部活だった塚田基貴に下駄箱で叫ばれた。
この日は卒業式の練習と教室の掃除をして下校となった。
「有彩ちゃん、今日俺らと帰ろうぜ」
朝戸が霧倉に声をかけた。
霧倉は無視して帰ろうとしたが
「今日最後じゃん」
と強引に引っ張った。
「稲崎帰ろうぜー」
俺がいないことに気づいたのか朝戸たちと一緒にいた黒船が叫んだ。
「なんか今日調子悪い」
「欲求不満だわ」
「ムラムラしてきた」
霧倉は黙って下を向いたまま歩いていた。
朝戸たちは公園に入った。
数年前にできたばかりの綺麗な公園だ。
「有彩ちゃん入ろうぜ」
朝戸が多目的トイレのドアを開けてそう言った。
霧倉は黙って立っていた。
「早く入れよ」
川原が後ろから霧倉を蹴飛ばした。
霧倉は朝戸たちの言うことに従った。
一緒にいた奴らもみんなトイレに入っていった。
「稲崎も来いよ」
黒船にそう言われた。
だけど入りたくなかった。
♪♪♪〜
ちょうどいいタイミングで電話がかかってきた。
「ちょっとごめん」
電話をかけてきたのは塾の先生だった。
入試の終了と同時に塾はやめたがどうしたんだろう。
「掃除してたら本棚の奥からお前の筆箱が出てきた」
3ヶ月くらい前になくした筆箱のことだろう。
「今から取りに行ってもいいすか?」
「うん」
電話を切るとトイレから騒がしい声が聞こえた。
「顔はいいんだからもっと積極的になれよ」
シャッター音が聞こえる。
「ゴム忘れてきた」
「どうすんの?」
「このままやっちゃおうか」
楽しそうな声が聞こえる。
霧倉は今どんな気持ちなのだろうか。
トイレに入るのが怖くて俺は塾に筆箱を取りに行った。
塾に行った後はコンビニで弁当を食って、本屋に行って立ち読みをして家に帰った。
帰って入り途中、河川敷に霧倉がいるのが見えた。
俺は周りに同級生がいないことを確認して霧倉のところへ行った。
「さっきはごめん。見捨ててしまって。」
「いいよ別に」
明日告白したって振られて終わるんだろうな。
一生明日が来なければいいのに。
「これあげる」
ポケットの中に入っていた飴を渡して家に帰った。
家に帰ってLINEを開くといつも一緒にいるメンバーのグループに霧倉の卑猥な画像が送られていた。
俺はそっとトーク履歴を削除した。
明日あいつらの前で霧倉に告白できるのだろうか。
そんなことを考えているとあっという間に卒業式の日の朝が来てしまった。
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