第7話 〜12月26日〜 3日目
12月25日は、お休みでした。
人生初のバイトに夜勤にと。
不安だったけど、普通に楽しかった。
バイトって結構、楽しかったりする?
それとも
良い人達に恵まれただけなのかな?
とりあえず、お休みは
ゆっくり休んだ。
明日から、また頑張るからね。
12月26日 深夜。
また、人が増えていた。
女子休憩所は人が多く
様々な香水の香りが混ざり合っている。
毎年、このバイトに来ている
お姉さまの話によると、これからが
忙しさのピークとのこと。
まぁ私は、ただ頑張るだけだけど。
「呼ばれた人は、すぐ担当の区分機に移動して、早速作業を開始して下さい!」
今日から少人数チームでの
作業らしい。
良い人と組めると良いんだけど。
「一号機!松原さん、柏さん、林さん」
呼ばれた人達は、スっと担当区分機に移動していく。
「では、ニ号機」
「長崎さん、後藤さん、田中さん」
呼ばれた!
しかも師匠・長崎さんと一緒っ!
私は勝手に長崎さんを師匠に設定していた。
フフ、脳内設定力(妄想)だけは
誰にも負けないわ!
…なんか、嬉しいな。
長崎さんの仕事っぷりを目標に
バイトを頑張るって
決めたからね。
頑張るのよ、私。
ニ号機に着いた。
「よろしくお願いします」
私は師匠・長崎さんに挨拶した。
また、一緒に作業できることが
なんだか、嬉しかった。
「また一緒ですね」
自然と言葉が漏れた。
「はは、よろしく」
長崎さんから返ってきた言葉は
やや、素っ気ない。
長崎さんは、私と同じチームになった事を
特に、何も思ってないよう…。
少し…ううん
悲しい、かなり。
区分機を操作しながら長崎さんは
「じゃ、始めましょうか?」
そう言って、作業を始めてしまう。
”シャカシャカ…ザザザザ…”
作業場には区分機の稼働音だけが
響いていた。
まぁ、会話するヒマも無いくらい
忙しいのだから、ある意味
この稼働音が心地よくもあった。
作業に集中出来るというか
何というか…。
区分機というこの大きな機械が
ハガキを枠に振り分けてくれるんだけど
同じ枠に、たっくさん連続で
振り分けるときがある。
私は、枠からハガキを抜き取り
違うboxへと移し替える。
枠が満杯になるとエラーで
運転が停止しちゃうから
結構、忙しい。
私は負けないよ!
機械に、区分機なんかに
負けないんだから!
そういう設定で
私はこの巨大な機械
区分機と勝負していた。
「お昼の休憩でーす」
社員さんの言葉に
区分機が静かに停止していった。
ハァハァ…。
勝ったわ。
私の勝ちね。
停止して何も吐き出さなくなった区分機を見て、私は小さな勝利を噛み締めていた。
白熱した勝負に
真冬だというのに
気づけば、汗をかいていた。
「その服装、間違えてますよね?」
背後からいきなりだった。
師匠・長崎さんが、笑顔で話しかけてきた。
「あはは、昼からはこれ脱いで来ます」
勝手に区分機と戦って。
白熱して、汗をかいて。
それが、少し恥ずかしくて。
照れ隠しに、そう答えることが
精一杯だった。
昼休憩中
私は、インナーを確認して
後悔していた。
黒いロンTだった。500円の。
うん、柄も何もない真っ黒なロンT。
パンツも黒。
だから、ブラウンの可愛いセーター
これ脱いじゃったら、全身黒ずくめ。
…どこかの忍者みたい。
昼からの作業開始時。
「これ脱いだら、ダサいのでやっぱり脱ぎませんでした」
照れ隠しに、笑いながら話しかけた。
私は気づき始めていた。
このバイトで自然と会話出来る存在が
師匠・長崎さんだけだと。
そして、私は、いつからか
よく頑張ったね。って
すごいね。って
長崎さんに
そう、言って認めてもらえることを
望むようになっていた。
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