人形屋敷編 前日譚『極秘文書』

【前書き】

人形屋敷編の前日譚です!!

前日譚とは言っても、そこまで壮大な話ではありません……。(普通に前日譚をやろうと思ったら、長くなるので……。)


何故リリィちゃんが屋敷編のとき、急に話し始めたリンクスに対して、怯えていたのかはこれでわかるかもしれません!


 客観的にみると、リンクス君はかなりやばいですね(^_^;)(^_^;)(^_^;)

少しだけ勘違い系なのかもしれません(^_


もし次の更新日などの情報が知りたい場合は、小説家になろうの方で私の活動報告をご覧下さい!!! それでは失礼します!

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 実に気分が悪く、陰鬱とした朝の日。

執事が二通の封筒が届いていると言って入ってきた。


 その内一通の封筒は、樹木模様の紅い封緘印がなされていた。

 

 僕が喉から手が出るほど待ち望んでいたものであった。一瞬で気分が晴れやかになったようだった。


 そのとき訳あって、この部屋にはリリィがいたので彼女と共に見ることにした。

 


 中から出てきた一枚の文書には

「親愛なるアルストロメリアお嬢様へ、かねてよりご要望でありました件について、この度完成しましたので極秘文書を献上いたします。」

 

 と最初に書かれてあった。


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 ついに我々は、このバシラティの街に突如として名を馳せて、当グループに多大な経済的損失をもたらした『リンクス』の正体にあと数歩というところまで迫ったのだ。


 本体の素性が謎のベールに包まれていることから、商売の神とされている『リンクス』を自称するありとあらゆる老若男女が急増。それに伴って、正体の特定までにかなりの費用と時間を費やした。


 当グループ序列8位、ヘレンド様率いる、我々特別調査チームは『リンクス』だと思われる候補者の男女を15人まで絞って調査し、

『お花屋さんの少女リンクスちゃん』

『家事代行サービスのリンクスおばさん』

『大工一筋30年、てやんでぃのリンクスさん』『不気味な少年リンクス』

『名探偵リンクス』の5名まで選出した。


 さらにその中から可能性が高い男性2名と女性1名を選出した。

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 最も近いであろうリンクスは、以下の3種類である。

 

『不気味な少年型』

雪のような白髪、人を嘲るような目つき、澱んだ灰色の瞳が特徴的な美少年。

当時の年齢は推定10〜12歳。

現在の推定年齢12〜14歳。


冒険者組合所に出没し現在は帝都バシラティ冒険者組合第十級ライセンスの所持者である。


そして2級ライセンス所持者、プロ冒険者として知られているユタポンの弟分である。リンクスは彼を『兄貴』と呼び親しんでいる。

この冒険者は裏社会と繋がっているとの情報が上がっている。

リンクスはそのパイプを利用して何かを企んでいた可能性有り。


 親はおらず孤児である。

極度のギャンブル狂いであり『賭場襲撃事件』の首謀者。

伝説のギャンブラーとして名を上げている。

知能が高くサイコパスの傾向有り。


 ゴブリンをペットとして飼いならし街中を引き連れ散歩させるという紛れもない精神異常者であり、あの事件の際もそのゴブリンが姿を現したとされている。

 

 このゴブリンと同じく、ルクアと呼ばれる絶世の美少女と行動することが多い。彼女はリンクスから洗脳を受けている可能性が非常に高く、異常なほど崇拝している。


 彼は『ゴブリンと話せる少年リンクス』の著者である。スゥルターヌ教の教義に反する内容であるにも関わらず、空前のゴブリンブームという社会現象を引き起こした。

(恐らく反教会派閥に通じている可能性も考えられる)


 未だに原本は見つかっておらず、現在市場に出回っている物は、一時期営んでいたとされる【ゴブリン語講座】の数少ない受講者が参考書として購入した教材がコピーされたものである。


 一部の狂信的な信者によってコピー本が大量印刷されると、売上が不動の一位であった聖書を抜き瞬く間に堂々の一位となった。


 現在消息不明で追跡不可能。



『青年、探偵型』


 この探偵型は少年型のリンクスよりも謎が深く、不明な点が多々存在する。

 

 全てのキッカケを産むことになったであろう『商品アドバイザーのジャバネッド・リンクス』と同一人物ではないかとの説が浮上している。


 年齢不詳。10代後半〜20代前半。

黒髪黒目中肉中背、人目につくほどの美形の男だが、詐欺師のような風貌をしている。



 『名探偵リン・クスの冒険』の著者であり、帝都バシラティ冒険者組合第六級ライセンスの所持者である。

探偵として些細な事件から難事件までを悉く解決し、異例ながらも昇級という経歴を持っている。



 この探偵型の奇妙な点は、少年型と同じく、ペットのゴブリンを連れ回すだけでなくルクアと呼ばれる美少女と行動を共にしていることである。少年型の容姿とは似ても似つかないので、血が通った親戚ではない。そして聞き込み調査によって、少年型と探偵型が揃って行動している場面をだれも見たことがないということが判明した。裏で繋がりを持っている可能性大。

 

 現在消息不明で追跡不可能。



『花屋、少女型』


 彼女は通称、『お花屋さんの少女リンクスちゃん』と呼ばれている。笑顔になったとき、花が開いたように可憐である。

 

 年齢は14歳。身長149センチ。37キロ。血液型はO型。

 星座はやぎ座。十二支は丑年。健康体。

 本名はスピカ。好きな花は勿忘草。

 趣味は生花で特技は人を笑顔にすること。

39歳の父親と、38歳の母親との三人家族である。

家族中は良好で仲睦まじく生活を送っている。

友人たちとの交友関係は至って通常で、みんなから好かれている。

そう、全く健全かのように装う恐ろしい少女である。


どうやら産まれたときに、流星が流れたので本名は星に由来するように名付けられたようだ。全く、お花が関係なかった。


リンクスと名乗り始めた理由は、もっとお花が売れるようにしたいというだけでなく、『名探偵リン・クスの冒険』の熱狂的な読者だからであった。


昨日彼女は、変なおじさんにストーカーをされているかもしれないと母親に相談をしていた。


 

 少年型、探偵型のリンクスとの関係は不明。

しかしこの少女についてはもっと知りたいことが多い。


 現在追跡中。

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 以上のことからリンクスという人間は二つの可能性が考えられる。

 まず一つ目は、奴は正体を隠して行動するなど、本を売り名を上げるという第一段階を経てから、民衆が『リンクス』と自称しやすくするような土壌を作り上げることで堂々と集団の中に溶け込むことを可能にした知能犯。


 そして二つ目は流行りの名前を使い行動をすることで、社会そのものを変えようとした政治犯。


 未だに『リンクス』については判明していない部分の方が多く、ある意味まだまだ未知の存在とも言える。もし仮に本体に出会う時があったならば、すぐに逃走するのが得策である。


 なぜなら何が奴の逆鱗に触れるのかは誰もわかっていないからだ。


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 僕は愕然として、持っていた文書を落とした。

果たしてこれは希望なのか絶望なのかすら分からないでいた。

 

 『リンクス』という人物を知れば知るほど、得体の知れない不気味さを感じることになり、もっとはっきりいうと恐怖を感じていたのだ。


 人間は本当に自分の脳では理解の及ばないことを体験したときに恐怖するのだ。


 一体なぜゴブリンなんかを連れ回しているのか。

なぜ二重三重に同一人物が存在するような事態になっているのか。なぜ我々闇の一族に刃向かうのに、教団にもダメージが入るようなことをするのか。

 

 わざわざ回りくどい手を使ってまでする意図は何なのか。結果何を手にするのか。闇の一族と教団、どちらを敵とみなしているのか。


 否、彼にとっては全てが敵なのだ。

自分の力を見せつけるために手始めとしてバシラティという大都市を手中に収めようとしていたのだ。人類全てを破壊し尽くすような愉快犯、悪魔なのだ。


 ここまでくるとそうとしか思えない。

当初は希望になるかもしれないと楽観視していたが、状況は悪化している可能性が高い。


 そして……なぜ不意にいなくなったのか、それすら考えることも恐ろしい。



「め、メリア……これ…」

 リリィが青褪めた顔をしていた。

震えた手で手紙を持っている。それはよくみたら魔術学園からであった。

彼女は僕が放心している間に二通目の封筒を開けて読んでいたのだ。


「これは、学園長から……?」

 

 僕はなぜ今、学園長から手紙なんてものが送られてくるのか全く心当たりがなかった。



「リンクスを名乗る白髪灰眼の少年が、三週間後に学園にやってくるみたい……」


 とリリィが言った。


「は」


 ますます訳がわからなくなって、思考停止の状態がしばらく続いた。

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