第1.5章 第1話『偉大なる勇者リンクスの旅立ち』
この章はお話は、第一章の続きとなります!
第二章と平行して更新して行きたいと思います!(m_m)このときのリンクスとルクアは10歳です。
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いつか大金を手にして、村へ帰ってくると決意し、俺は村の門の外へ一歩踏み出した。
景色は短草の草原が、緑一色に広がっていて、その全てが太陽に照らされ緑色の宝石のように輝いていた。
よくこの原っぱには子供達と遊びで来ていたが、今日は段違いに特別感や新鮮味に溢れている。
空を見れば俺の旅立ちを祝福するかのように、鳥が空を泳いでいた。
「すげえ」
なんだこのわくわく感は。
今にも何かが始まりそうな感じがするぞ。
ルクアとゲゲイン君にもこの感情を共有してもらいたかったなあ。
俺はこの場にいない二人のことを想った。
そう、あの二人は置いてきたのだ。
ハッキリいってこの旅にはついていけないから…。
ルクアよ……一生共にいるはずだったのに一人にしてしまって本当に申し訳ない。好きだからこそ危険な旅に同行させたくなかったのだ。ステータスや能力がいくら強いと言っても十歳の少女であることには変わりない。家を飛び出して泥水すすって生活するのは俺だけで十分だ。
ゲゲイン君に関しては親友だから連れてきても良かったが、あいつだけ連れて行くと、ルクアが自分だけ置いていかれたと勘違いするかもしれないから誘えなかった。
まあ……、一週間ぐらいで何億円か稼いで帰ってこれば大丈夫か。
無限の彼方へさあ行くぞ!
歩き始めて十分ほど経ったとき、俺は少し不安な気持ちになった。
かなり意気込んで村を飛び出してきたものの、この先のことを何も考えていなかったのだ。
適当な国とかに行くつもりだったが、それもどこにあるのかもわからない。今日は恐らくこの平原で野宿することになるのは予想が付いている。
一応、食料は、瓶詰めとかパンやらを二、三日分は持ってきているからまあなんとかなるだろう。
「大丈夫、……大丈夫だ」
昼一時過ぎの太陽は余りにも眩しく輝いていて、どこをみても、木々がポツポツと生えているだけの平原は、地平線にある山々まで続いていた。
………。
見るか、アレを。俺はリュックの中に入っている『攻略本』に意識を移した。
こういう時の俺は早い。
瞬時に地面に座り込むと、リュックの中から攻略本を光の速度で取り出した。
朝みたときは「はたらけ」としか書かれていなかったが流石に何かあるだろ。
『攻略本』の使用上限は二回しかない。
まさかこんな早くに使うことになるとは想ってなかったから、親父に充電してさせてから家を出て良かった。
嫌なことが書かれていませんようにと祈ってから、本を開いた。
白紙のページには段々色が付いて、いかにも某検索エンジンをそのままパクったかのような、インターネットの検索画面が出てきた。
またもや、前の世界で見たことが出てきたな。
何も情報が書かれていないところをみると、自分で検索しろということか。
俺は検索キーワードを入力するために、何回か検索窓をタップしてみた。
「ん?」
しかし、文字入力のキーボードが現われない。
一瞬、戸惑ってから俺はリュックの中からペンを取り出して、
[近くの国]と書いてみた。
「おぉ、当たりか」
めちゃくちゃ、検索結果が出てきた。
13万2000件もヒットしてるし無駄に多過ぎないか。
とりあえず一番上に出てきた、【知らないとやばい!近辺の国々の情報】
でも見てみるか。
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どうもこんにちは副業でWEBライターをしているユリです!
今回は田中祐介の脳内で話題となっている近辺の国々の情報をまとめてみました。
【どこが一番近い?】
村から北西に進み、セイトネル山岳地帯を越えた先にあるラデュレ帝国が一番近いですね。
ラデュレ帝国は聖天暦580年にフォション一世が率いて建国した国家です。クスミ大陸の内陸国ならではの文化と産業が特徴です。
なんといっても帝都バシラティは莫大な金と欲望が渦巻く、世界有数の繁華街を誇る商業都市で、賭博業でも有名なんだとか。
このエネルギッシュな都市に訪れたら、あなたを熱狂させること間違いなしでしょう。
気になる周辺国についてですが、クスミ大陸と言えば、トワイニング帝国、フォートナムメイソン王国、ラデュレ帝国の三大国で知られていますよね――――――――――
【二番目に近い国は?】
上で少し名前が出てきましたが、フォートナムメイソン王国が近いです!フォートナムメイソン王国は、世界最大の魔術学園を―――――――――
いかがでしたか?
くだらない家出をするとのことで、近辺の国々について紹介することになりました。
貴方の性格でこの先どうなるか楽しみです。それ以前に国に辿り着くことが出来るのでしょうか?
どうせお金を稼ぐことなんか出来ないと思いますが、早く幸せになってほしいものですね!
▶田中祐介の学歴(出身高校・大学)と経歴は?無職になった理由が意外!
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めっちゃ便利だな。しかも広告付いてないから見やすいわ。
ラデュレ帝国が近いということが分かった後は全部読み飛ばしたけど、ご丁寧に地図まで用意されてあって驚いた。俺の位置までリアルタイムで表示されている。衛星でもあるのか?
少しやる気が出てきた俺は、『攻略本』の地図をみながら二宮金次郎のように歩き出した。
*
あかん……重い。帰りたい。腕疲れた。
3キロぐらい歩いた所で俺は根を上げた。
肩が痛い、脚もちょっと疲れてきた。荷物が重い。特にリュックが重い。
水筒に水を結構いれてきたからしんどい。てか攻略本だけで結構な重量あるんだわ。
「だはぁ~~っ」
俺は汗を拭い、休憩しようと思ってリュックを投げて、後ろに倒れ込んだ。
まじ疲れた。太陽眩しい。そよ風きもちい。寝ようかな。
後ろをみると遠くにまだ村が見える。
ちょっと……今日の所は一旦家に帰って、また明日にすればいいのではないか。大金手にしたら村へ帰ります的なこと手紙に書いたけど、今そっこうで家に帰って破り捨てればバレないのでは。
いや……色々用意してきたのに、ここで帰ったらもはやただのピクニックで終ってしまう。それで終っていいはずがないだろ!
俺は一時間ほど飯を食いながら自問自答を繰り返して、ようやく結論へ至った。
「よし帰ろう」
今日のピクニックはすごい楽しかった。
ルクアも家で待ってるだろうし、早く帰ろう。
そう考えるとなんか気が楽になったな。腹もいっぱいになったから、ここで昼寝でもしていくか。
腹一杯になってから寝ると実に気持ちがいい。
にしても今日はお日様も良くて、青空も広がってて、……………。
俺は今日も満たされたと感じながら眠りについた。
目の前で紫色の髪で、金瞳の美少女が泣きじゃくっている。
今の時間は、……空が段々アカネ色になってきているし夕方か……。
確か、そう。聞き慣れた美少女の声が迫り寄ってきたときに、俺は半強制的に起こされたんだっけ。
「リンクス君が家から急にいなくなって、部屋の中に手紙が置いてあって、それでっ……!」
地べたに座って、顔面中を涙で浸すんじゃないかというぐらいに泣いている。
「ルクアを、待ち続けていたんだよ」
俺も寝起きで頭がてんややんわになって自分でも意味のわからないことを言った。
互いに脳味噌の中がぐちゃぐちゃなお陰で無事に会話が成り立っていない。
「とりあえず一旦落ち着こう」
俺はルクアの背中をさすりながらそう言ったが、八割方自分に向けて言った事だった。
そうすると、脳の中がクリアになってきて色々思い出した。
ああぁ。俺ねてたのか。確か今日旅に出かけたんだっけ、それで途中で面倒臭くなったからやめて昼寝してたんだ。今こんな修羅場になってるのは、ルクアが追いかけてきて寝てる俺を見つけたからだろう。
そうだよな。普通に考えて、家出したはずの人間が4キロぐらい離れた所で寝てたら驚くよな。
「そう、僕はここでルクアを待ち続けていたんだ」
「私、を……?」
普通の人間だったらここで何を言ってるんだという目で俺を見るのだが、ルクアは基本的に俺の言葉を肯定的に受け取ろうとしてくれるから助かった。
「っじゃあ、あの手紙に書いてたことは!」
「あれはね、僕からルクアちゃんに当てたメッセージなんだ。ちゃんと読んでくれたかな?ある特殊な法則であの手紙を解読すると、【ルクア。この場所に来て欲しい】と読むことが出来るんだ。ついでに僕が待つ場所の座標も記してある。無事ここまで辿りついたね、ルクアちゃんおめでとう。
まあもしそれが解読できていなくてもここに来てくれたことは嬉しいから合格だよ。 さてこれでこの試練は終了したし家に帰……」
「よかった……これで私達一緒に旅に出られるんだね!」
ルクアは俺の言葉を聞いて安心出来たのか、手の甲で涙を拭って言った。
まさに今全ての線が繋がり合ったという納得の顔をしている。
「んん? いや、だから家に…」
「ググギゲェ~~~~~~~~~~~~(リンクス~~~~~~!!!!!)」
遠くから叫ぶような声がした。
この声はッッ!??
俺は小さな緑色の影が村の方向からこっちへ走り寄ってくるのを見た。
「ゲゲイン君かッ」
ルクアが手紙を読んで俺を追いかけて来るのは分かるけど、ゲゲイン君が来るのはいくらなんでも早すぎる。
「ゴガガギブブゲゲ!ビビグガグブガガゴゲ?ゴギグブギ!!ギグゲギブビゲゴゴガ! (お前の体臭を辿ってきた!一攫千金の旅に出るんだろ?俺も混ぜてくれよ!!お前等と一緒に旅がしたかったんだ!)」
息を切らしてやってきたゲゲイン君は、俺のそばへ来るなりそう言った。
体臭辿るとかいつから出来るようになったんだ。
「えぇっ!?いやっ」
俺は行く気満々のゲゲイン君の言葉を聞いて驚いた。
「ギギグブ……グブギゲギガビブバ?(やっぱり、……ゴブリンの俺と行くのは嫌か?)」
ゲゲイン君は似合わない悲しげな顔をして言った。
「そんなわけないだろ!俺たちは親友だ!!」
友情にヒビが入ることを許さない俺は、興奮して、そう叫んだ。
そして、家に帰ろうにも帰れなくなって、俺たちは、何故か危険な夕方からまだ見ぬ新たな世界へ出発することになったのだ。
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