第4話 ファーストコンタクト

 夕食は醤油ポーションと野生の生姜を使ってグリーンホーンラビットを生姜焼きにした。

 肉はウエストポーチの解体機能でばらして入手したものである。

 レンはそれを生姜醤油に漬け込んでから焼いたのだ。

 狩ってから時間が経っていないため、肉は死後硬直でまだ固い。

 しかし、噛むほどに味が染みだしてくるようで、レンは夢中になってかぶりついた。

 主食となる炭水化物は保存食を煮込んだ麦の粥で、兎の骨を出汁に使っているが、生姜焼きと比べると味は落ちる。


(そういや、西洋にはあまり主食って概念がないけど、この世界はどうなんだろう?)


 知らない知識の中にそうした情報がないか探ってみたが、それらしいものは見付からなかった。主食とは料理の知識ではなく、むしろ政治の話なのだ。


 日本人なら米が主食なので、西洋人なら主食はパンか麦だろうと考えがちだが、西洋にはメインディッシュという考え方はあっても主食という概念を持つ国は少ない。

 メインディッシュはコースの中心となる料理を指し、通常は肉や魚であり、今回のレンの食事を例に取れば、メインディッシュは兎の生姜焼きとなる。

 だが、主食となるとその意味を理解している西洋人は少ないし、日本人でも正しい意味を知る者は少ない。

『栄養価が高く、他の作物より優先的に耕作される食料』というのが主食の意味だが、日本人は単に『米』と考え、そこで思考停止する。そして、白米と一緒に味の濃いものが出てくると、それが米を使った料理であっても副食と認識したりもする。

 そんな話を思い出したレンは、もしも主食という定義がないようなら、意識して炭水化物を摂取しないと栄養が偏る可能性があると思い至り、バランスの良い食事を取ろうと心に決めるのだった。


 食事を終え、食器を洗浄し、口の中や体にも洗浄を掛けてベッドに横になる。

 洞窟の外ではまだ強風が吹き、強い雨が降り続いている。外は真っ暗で川は見えない。

 二階の窓からは雨が吹き込み、洞窟内の空気もベッドの毛布も、少し湿っていて寒さを感じる。


 レンの鎧下とズボンには、熱耐性、寒さ耐性、水耐性、防刃、自動補修がエンチャントされているので、凍えるほどの寒さを感じたりはしないが、少し肌寒い程度の温度変化では耐性のエンチャントは働いてくれない。

 レンはウエストポーチから防水性のあるタープを取り出して毛布の上に広げると、毛布の中に潜り込んで丸くなって眠りに就いた。




 洞窟の外が薄明の明るさに染まった頃、重くて硬いものが引きずられ、何かにぶつかったような物音が洞窟内に響いた。

 レンはその音で目を覚まし、防具を身に着けて慎重に窓に近付き、外の様子を窺った。

 まず、川原が完全に水没しているのが見えた。石で作った柵がなければ、川と川原の見分けが付かないほどである。

 川原を覆った濁流には無数の木切れが浮かび、かなりの速さで右から左へと流れていく。

 そして川原に作った左側の石の柵に、茶色い大きな箱が引っかかっていた。


「……馬車だよな。あれ」


 茶色い箱に見えたのは、箱馬車と呼ばれるタイプの4輪の馬車だった。

 大人数で乗れそうな大きな馬車は、石の柵にくびきの部分を引っかけるようにしてはまり込んでいた。

 馬はいないし、馭者の姿もない。

 だが、レンが意識を集中すると、馬車の中の微かな気配が気配察知に反応した。


(人が乗ってるのか? 気配が弱いのは……気絶してるとか?)


 石の柵に軛が引っ掛かった状態だが、軛は木の棒でしかない。折れれば馬車は濁流に流されてしまうかもしれない。

 だが、救助のために馬車まで移動するには、水没した川原を通らなければならない。そして、その水は濁りきっていて足下の確認も出来ないほどである。


「確か、流れが早くて、足下の確認ができないときの渡河は、水深が膝くらいの深さでもアウトって話だったけど」


 昔読んだアウトドアの本の知識から、可能な対応がないか検討する。


「水竜の革鎧は、装備すると水耐性上昇と、水中活動にプラス補正が付いたよな。とりあえず着てみよう」


 ウエストポーチの中に入っていた揃いの鎧の中から水竜の革鎧を取り出し、蒼いライダースーツに似たそれに着替える。

 次に手持ちのロープを繋ぎ合わせ、長い一本のロープにすると、洞窟の一階に下り、石の柵で作ったドアを開き、ドアを固定するための石の棒にロープを結びつける。

 そして、自分の体にもロープを巻き付けて洞窟から足を踏み出し、濁流の中に足を沈めた。


 川原は、完全に水没していた。

 泥水で足下が見えないため、足が地面に着くまで、そこが石の上なのか、石と石の間なのかも分からない。岩山に手をついて慎重に歩を進めるレンの足に流れてきた小枝などがぶつかるが、鎧の効果なのか、強い水流に体勢を崩すようなことは起きていない。


 岩肌に沿って左側の石の柵まで移動したレンは、今度は石の柵を辿ってゆっくりと馬車に向かう。


「でかい馬車だな」


 遠目でも大きく感じたが、近付くと、その大きさがより一層感じられる。


 馬車は、側面と一番後ろに扉が付いていて、レンから見える範囲にガラス窓はない。代わりに、明かり取りの窓とおぼしき場所が幾つかあるが、すべて板で塞がれている。

 馬車の箱部分の長さは4メートルほどで、高さは1メートル半程度と、普通の箱馬車よりも大きく作られており、馬車の側面には、紋章のような印が小さく描き込まれている。

 馬車に辿り着いたレンは、側面の扉を数回叩いてから勢いよく開き、声を掛ける。


「助けに来ました!」


 扉を開けてから、言葉が通じない可能性に思い至ったレンだが、救助に来たことは身振りでも伝わるだろうし、このまま放置して、馬車がまた川に流されたりすれば寝覚めが悪い。と開き直ることにした。

 扉を開けると、馬車は一時期水没していたらしく、車内の床はびしょ濡れになっていた。

 中には3人の男女がいて、全員、床に倒れ伏している。種族的な外見の特徴がないことから、おそらく全員ヒトである。


 ひとりは革鎧を装備し、長剣を抱えた初老の男で、レンの声に微かに反応している。

 残りふたりは共に女性で抱き合うようにしていて、男性はそんなふたりの下敷きになっていた。


 全員、呼吸はしているが、男性は額に打撲と擦過傷がある。

 レンはウエストポーチから中級の体力回復ポーションを取り出し、男性の傷に振りかける。この手のポーションは飲んだ方が高い効果を発揮するが、戦闘中に他者の傷を癒やす場合には、薬を振り掛けて使用することもできる。


 男性の額の傷が消えたのを確認し、レンはその肩を揺する。

 その振動で、男性を下敷きにしていた女性のひとりが目を覚ました。


「大丈夫ですか? 助けに来ました」

「……お嬢様? ここは?」


 目を覚ました黒髪のショートカットの女性は、自分の腕の中の長い金髪の女性に気付くと安堵の息を漏らし、レンの方を見上げた。

 ゲームのNPCよりも遙かに人間らしい反応と、言葉が通じることに安心したレンは、怖がらせないように笑顔を作る。


「森の中です。自分も遭難中ですが、馬車が流れ着いていたので助けに来ました。外は大雨で川が氾濫しています」


 レンの説明を聞きながら体を起こした女性は、馬車の屋根を叩く雨の音に気付き、ゆっくりと立ち上がる。

 濡れた床の上に居たため、服は泥だらけである。見える範囲に傷はないが、少し不調そうな顔をしている。

 そんな女性に、レンは初級の体力回復ポーションを手渡すと飲むように促す。


「とりあえずこれを飲んで下さい。この馬車の中は危険です。そばに洞窟があるからそこに避難したいのですが、動けますか?」


 ぼうっとした表情で女性はポーションを受け取ると、封を切って中身を飲み干す。

 女性が体を起こしたことで、体への負荷が減ったのがきっかけになったのか、今度は男性が呻き声を上げて目を開いた。


「大丈夫ですか? 助けに来ました。ここは危ないので洞窟に避難したいのですが、立てますか?」

「……むう……ご助力、かたじけない。皆は無事か……」


 自分の腕の中に眠る少し幼さすら感じる金髪の女性の姿を確認し、男性はゆっくりと体を起こした。

 馬車の中で人が動いたことで、重量のバランスが変化したためか、馬車の前の方からミシミシと嫌な音が聞こえる。


「……馬車は氾濫した水の中で、河原の石の柵に引っかかってますが、いつ流されてもおかしくはありません。そばに洞窟があるので、そちらに避難しましょう。持ち出したいものがあれば、急いで準備してください」

「……承知した。シルヴィ、聞いたとおりだ。急げ」

「はい」


 シルヴィと呼ばれた女性は、馬車の奥から古びたボストンバッグを引っ張り出してくる。しかしそんな荷物を抱えて水の中を歩かせるわけにはいかない。


「荷物は自分が運びましょう」


 レンが手を伸ばすと、シルヴィは男性と目配せを交わし、おずおずと鞄を差し出してくる。

 受け取った鞄をウエストポーチにしまうと、シルヴィと男性は驚いたような顔をする。


「さて、それじゃ、洞窟まで移動します。そちらの……ええと」


 レンが男性の顔を見て、名前を聞いていないことを思い出して口ごもった。


「エドじゃ。助力感謝する」


 エドに頷きを返しながらレンは自分の体に巻いたロープを解き、エドに手渡す。


「それじゃエドさんは、そっちの倒れてる子を連れてきて下さい。水は俺が来たときで膝くらいの深さ。水は濁ってて底が見えないけど、元は人の頭サイズの丸い石が転がった川原だから、滑らないように気をつけて。このロープの反対側は洞窟に縛り付けてあるから、ロープを伝えば洞窟まで行けます」


 ロープを受け取ったエドは、それを金髪の女性の腹部に巻き付けると、そのまま女性を抱き上げる。


「それじゃ急ぎましょう。馬車の軛が折れたら、馬車が流されちゃうかも知れませんから。俺が先導するから付いてきて」


 レンは水の中に足を下ろし、石の柵伝いにゆっくりと歩を進める。

 そのレンの後ろにシルヴィ、エドと続く。

 シルヴィの姿は、ビクトリアン調のメイド服からエプロンとホワイトブリムを外したような紺のロングドレスで、そのままだとスカートが水を吸って足に絡みつき、水の流れに巻き込まれる危険もあった。

 そのため、シルヴィは水に足を付ける前にスカートの裾をまくり上げ、腰のベルトに裾を通していて、まるで膝上丈のミニスカートのようになっていた。

 それでもスカートは水に触れてしまうが、濡れたスカートが足に絡みつくようなことはなくなり、シルヴィは顔を赤らめながらも、気丈に洞窟に向かって歩を進めた。


 洞窟の一階部分に到着したレンは、水竜の革鎧に洗浄を掛けてみる。

 レンが泥水や雨水を汚れと考えていたためか、洗浄の泡が消えると、鎧は乾いた状態に戻り、汚れは消え去っていた。

 それを確認してから、レンは洞窟に入ってきた三人にも洗浄を掛け、汚れと水気を綺麗に取り除く。


「さて、それじゃ自己紹介だけど、僕はレン。見ての通りのエルフで、錬金術と細剣レイピア、あと弓が得意。現在はこの森の中で迷子になってて、この洞窟を作ってねぐらにしている。君たちの馬車は、この洞窟を守るための柵に引っかかってた」


 レンの自己紹介を聞き、うさんくさい者を見るような目で見るシルヴィ。

 対して、エドは丁寧に頭を下げた。


「ご丁寧に痛み入る。儂はエド。そちらのメイドがシルヴィで、こちらは我々が仕える家のアレッタお嬢様じゃ。旅の途中で大雨に遭遇し、川に流されてきた……馭者や護衛は……おらんかったようだな……無事を祈ろう」

「災難でしたね。それじゃとりあえず、そのお嬢さんを休ませてあげましょう。こちらにどうぞ」


 照明魔法ライトを使い、頭の上に光の珠を浮かべたレンは、洞窟の奥に進み、傾斜30度の坂道を上り、ふたりを二階に案内する。

 レンはこんな事態は予想もしておらず、部屋はひとつしか作っていないし、ベッドもひとつしかない。

 唯一のベッドに金髪のお嬢様アレッタを寝かせたエドは、シルヴィに後を任せて横穴から出てくる。


「レン殿は迷子とおっしゃったが、この辺りのエルフの村の出身じゃろうか?」

「いえ、目が覚めたらさっきの川原にいたんです。この辺りの出身ではありません」

「なるほど……いや、何にしても命拾いしましたぞ。感謝いたす」

「それよりも、お聞きしたいのですが、ここから人里まではどの程度でしょうか?」

「距離の見当はつきませんな……腹の空き具合から見て、半日程度は流されましたかな。先ほどの川を遡れば、いずれは街道にぶつかるじゃろうが……森の中を踏破するのは危険ですぞ?」


 エドの返事を聞いたレンは、窓から川を眺める。

 濁流に流される木の枝の速度で流されたと仮定すると、時速にして10キロ程度である。

 その速度で半日、仮に10時間流されたのであれば、移動距離は100キロ程度になる。

 江戸時代の人間を基準にすれば、一般人の無理のない1日の移動距離は徒歩で10里とされ、それは40キロである。この世界でもそれは似たようなもので、エドはそれを基準にして、100キロなら『街道を行くのであれば』2、3日の距離だと見当を付けていた。

 しかし整地もされていない森の中で、そこまでの速度が出せる筈もない。時速1キロで一日の移動時間を10時間として10日。それがレンなりに計算した街道までの距離だった。

 距離に限れば、移動不可能な距離ではない。

 今までのように、進むべき方角すら分からない状況からは脱することができたのだから、この遭遇は幸運である。レンはそう考えた。


「まあ、街に帰る方法は落ち着いてから考えましょうか。あ、そうだ」


 レンはウエストポーチから、馬車の中でシルヴィから預かったボストンバッグを取り出し、エドに手渡した。


「預かったままになってました。これ、結構重いですね」

「これは、迷宮産の収納魔法付与の鞄なのじゃ。レン殿の腰のそれと同じじゃな」


 エドはボストンバッグから人数分の毛布を取り出して見せ、レンのウエストポーチを指差した。

 なるほど、と頷いたレンは、アレッタが眠る横穴に意識を向ける。

 元々、横幅2メートル、奥行き4メートルの円筒状に開けた穴の床を平らにしただけの洞窟で、そこにベッドを作ってしまっているため、全員が入るのは厳しそうだった。

 だからと言って、窓から吹き込む風雨を避けるために作った横穴である。そこに入らなければ、冷えた風に晒されることになる。


「シルヴィさん、エドさん、ちょっと相談があります」

「どうかされましたか?」

「あいや、失礼した。謝礼については後ほど家名に掛けて……」

「ああ、そんなのは後で構いません。それよりもこの洞窟は4人でいるには手狭ですよね。よければ、お嬢様が寝てるのと同じような横穴を三つ追加しようと思うのですが」


 レンの言葉を聞き、シルヴィは目を瞬かせた。

 言っている意味が理解できなかったのだ。


「横穴を……追加、ですか?」

「はい、俺は錬金術師であると同時に魔法もそれなりに嗜んでいます。この洞窟は俺が錬金術と土属性の魔法で掘ったものです」

「エド様、そんなことが出来るのでしょうか?」

「確かに自然に出来た洞窟にしては整いすぎとるとは思っておったが……迷宮から産出するポーションには、迷宮の壁すら破壊するものがあった筈じゃ。それを使えば可能かも知れぬ」

「……ええと?」


 レンは困ったような表情で固まった。

 炸薬は錬金術師の職業レベル中級の技能があれば作成可能で、必要な素材も珍しい物ではない。

 そして、錬金術師中級になるための条件も、アイテムを使わないと時間こそ掛かるがそれほど厳しいものではない。

 ゲーム時代は片手間で錬金術師の職業レベルを中級に育てる前衛職も少なくはなく、中級のポーションは割と安価に流通していた。

 それを思い出し、レンは首を捻る。

 しかし、一度口にしてしまった以上、取り消しても余計な疑いを招くだけだ。そう判断したレンは、押し通すことにした。


「……まあ、入手方法は秘密ですが、炸薬ポーションがあるので、横穴をみっつ追加します。ひとり一部屋ですね。で、部屋の場所の希望なんかがあれば教えて下さい」

「……私は、可能でしたらアレッタお嬢様のお部屋の正面を希望します。声が届く場所にいないとお役に立てませんから」

「儂は、お嬢様の隣で、出口に近い方を希望する」

「それじゃ、俺は、エドさんの部屋から見て斜め向かい。一番出口に近い方にしましょうかね」


 女性たちの部屋に近いと何かと気苦労がありそうだったので、レンはそう提案してみた。

 それを聞いたシルヴィがほっとしたような表情を見せる。


「それじゃ、まずシルヴィさんの部屋から作りますね」


 自室にしていた横穴の正面の岩肌に錬成で小さい穴をあけると、レンはそこに炸薬を詰め込んで2メートルほど離れる。


「ええと、ちょっと音がします。それから白い煙が出ますけど、体に害はないです。俺と同じくらい離れるようにしてください」


 レンの指示を受けたシルヴィは横穴に入り、アレッタを守れそうな場所に立つ。

 エドはレンの後ろから、レンの様子を観察している。

 それを確認すると、レンは右手を前に出し、


「着火」


 火属性魔法の着火で炸薬に点火する。

 ポン、という音にエドが反応し、剣の柄に手が伸びそうになる。

 それを理性で押さえつけたエドは、レンが話していた通り、白い煙が炸薬から半径1メートル程度を覆うのを見て、堅くなった表情を緩めた。


「煙はすぐ晴れ……る前に、全部風で流れちゃいますね」


 窓から吹き込む風で白い煙が散らされ、煙が消えた跡に直径2メートル、奥行き4メートルの穴ができあがっているのが目に入った。

 レンは横穴の中の砂利を回収し、洞窟の天井に対して硬化ポーションスプレーを吹き付ける。

 そして床を平らにすると、一番奥の部分に砂利を使ってベッド代わりの石の箱を作り、そこにウェブシルクを詰め込む。


 同じ要領でエドの部屋、自分の部屋を作り上げ、アレッタの部屋とエドの部屋の間の壁に錬成で凹みを作り、そこに魔石ランタンを設置した。


「……とまあ、こんな感じですね。あ、毛布、余分があれば一枚貰えませんか?」

「……ああ、人数分ある。レン殿の毛布はアレッタお嬢様が使っておるから、これを差し上げよう」


 毛織りの暖かそうな毛布を受け取ったレンは、それを自分の部屋のベッドに被せ、衣類を丸めて革袋に詰め込んだ枕を乗せて満足げに頷いた。


「さて……色々驚かされたが、レン殿。儂らはここにいても良いということで宜しいかな?」

「ええ、この雨の中追い出しはしませんよ。というか余程のことがない限り、街に戻る手立てが見付かるまでは、ここにいて貰って構いません……それでですね、その対価と言ってはなんですが、できれば街に戻る際には、俺も連れてって貰いたいんですけど」

「感謝する。街に戻るには、少々無理が必要になると思うが、手を貸して貰えると助かる」


 エドはそう言って右手を差し出してきた。

 レンはエドの手を握り、笑顔で頷いた。


「それじゃ、街に戻るまでよろしく」

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