第19話 第2の覚醒【怒り】②
マナは炎の塊を見た時に、既に気を失っていた。
ーーーそして、その意識は自分の精神空間で足を抱えて縮こまっている。
怒り…憎しみ…悲しみ…慈しみ…不安…驚愕…………
いろんな感情の波が黒い霧として、マナを浸食していた。
頭には自分の物じゃない記憶の一部が映し出されていた。
ーーー誰かが叫んでいる。
炎の中、腹から血を流しながらもがき苦しみ、這いずっている。
炎は彼が倒れている部屋に回り切っているが、彼は諦めていない。
ーーー誰の記憶だ?いや、これは、俺の記憶だ。
夢として前世の棺の中の記憶は思い出すことはあるが、この記憶はもっと前のものだった。
ーーー何時だ?ここは何処だ?俺は?誰だ……
マナは己の精神空間で自分が現実でも、精神体の身体でも燃えているのに気づかずにいた。
………………
…………
……
『…マナ=フィルドー!?』
……彼は避けなかった。一瞬、強烈な魔力を感じて対抗魔法を使ったと思っていたら、魔法が直撃したように見えた。
『大変!!助け……ッ!?』
ーーー瞬間。
空間が支配される。
何!?この、肺を潰すような空気は!
足の震えてが止まらない!?何で!何で!
周りを見ると集まってきた生徒達のほとんどが気を失っている。
ーーー音がした。
音がした方向には、炎が佇んでいた。
そして、アレクシアが【メテオ・インパクト】で燃やし続けた床から彼が動き出す。
『良かった!マナ…!……誰!あんた!』
そこに立っていたのは炎で包まれた黒塗りの男だった。
……いや、それは今なお燃え続け、尋常じゃない黒の魔力で身体を覆って立つ、マナの姿だ。
『これは…、……君が?』
『ひっ!?』
彼は、ただ見ただけだった。
だけど、見られアレクシアは自分が骨になる姿がイメージ出来てしまった。
『来ないで!
ーーー近づいたら殺す!!』
『へぇ、【僕】を殺すんだぁ』
身体を覆ってた魔力が炎のように揺らぎ、周りの炎を飲み込む。
すると、まだ魔法的な干渉下にあった炎や設置していた火魔法に形成していた魔方陣が浮かび、黒い炎に燃えて消える。
ーーー彼が自分の腕を見る。
『【僕】、火傷しているね』
『……よし、治った』
『なっ!?』
アレクシアは驚愕した。
彼の腕や、顔、肩、足は、火傷が酷く、表面は液状になっているようだった。
アレクシアは罪悪感に蝕まれたが、彼が再び黒の魔力で身体を覆うと隙間から黒い光が溢れ、霧が晴れた後には、完全な状態で回復していたからだ。
『あなた、マナ=フィルドーなの!?まるで別人じゃない!!』
『【僕】もマナ、彼も【マナ】さ』
『それよりも凄いね。君。
もう、皆が倒れたのに、まだ心が正常だなんて、異常だよ逆に』
アレクシアが周りを見ると、先ほどまでは、なんとか堪えていた生徒も倒れていた。
『!?(……心?)
……私はこんなところで負けられないのよ!』
『いい心構えだ♪
だから、今回は見逃してやるよ』
…まぁ正直、この状態はあまり続かないし、感覚的に覚醒をし続けたら戻れなくなる感覚があるしね。
『ーーー舐めてんじゃないわよぉぉぉ!』
『【火精霊・11柱】!!!』
ーーー【俺】に戻ろうかと思っていたが、アレクシアが炎魔法を発動させる。
『効かないよ』
魔力を前に盾にして展開すると、魔法が魔方陣ごと燃えて、一瞬にして雲散する。
『くっ!!なら、【瞬動】!』
私は足を無理やり動かして彼に接近する。
骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げているけど、知ったことではないわ!
『練技【一重斬り】!!!』
『うわ、近づかないでよ』
彼が全ての魔力を自分の身体に集めて、腕で防御体勢を取る。
……ただの身体強化だと思った。
怪我しても治る回復力があるなら、多少、傷をつけても勝負に勝つことを私は選んだ。
『なっ!?』
だが、私の剣の刃が1mmも彼の腕を進むことはなかった。
ーーー私は悟った。
この感覚は、彼から発せられる殺気を恐れて、私の全神経が警告していることを。
魔力もまるで減っていない彼がまだ手加減していることを。
ーーーこの世界には、彼のような怪物がいることを……
私は剣を手放して、後ろずさり、へたり込む。
『大丈夫?大事な剣でしょ?』
『はい、返すよ』
『ひっ!?』
『こ、来ないで!!』
アレクシアは魔法を展開しようとするが、媒体が無くて不安定なのと、恐怖と混乱によって途中で魔法陣が壊れてしまう。
『この、くそ、『今から、彼に変わるから後はよろしくね♪』このぉおお!!【ファイア・ボール】!』
なんとか発動した魔法は、初歩の初歩で身体が覚えているから発動できた。……だけど、極端に小さな火の玉だった。
でも、こんな魔法でも彼を少しだけ離すことに成功した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます