第17話 合格!ランキング!宣戦布告!

 クソじじい……、

 確かに拳が顔に当たった感触はあった。だが、じじいが同時に風魔法を発動した。


『じじい…。てめぇ、本気出してないな?』


『マスターBじゃて』

『それに、儂の生徒に本気を出すわけないじゃろ~』


『儂の生徒?……先生か?』


『惜しい。

 先生じゃなくて、学園長じゃよ』

 

 学園長?学園長ってあれか?学園の長か?……やべぇ、俺、殴ってしまったな。証拠隠滅するか?本気を出せば、ーーーいけるか?


『ほぅ…、まだやれるのか。だが、君の力はもう分かった』

『寝ていなさい。【夢への誘い】』


『【写し身】状態の俺に精神系魔法は効か……(…ね……?)』


 な…んだ……この眠気。否定すればするほど頭が揺れる。


『ほう、対策魔法はしておらぬのに儂の魔法を防ぐか』

『ならば、上級闇魔法【ナイトメア】ーーーおやすみ』


『くっ、………クソッ』


 俺は、眠りに落ちるのだった。



ーーー俺は、強烈な痛みによって目が覚める。


『痛っ!痛たた!?』


 身体中が痛い。【写し身・濁】の状態で動きすぎせいだ。

 だけど、この続く痛みはこいつのせいか!


『ーーー何にしてんだよ!』


『何って……観察?』


『ーーーてか、誰だよ!?』


『私は、ポメラ=アンゴート』

 

 目の前には、あのS会場にいた小さな女の子がいた。


 あれ?

 身の丈の3倍はありそうな杖を持っていなかったけ?


『いや、触るのやめようよ!痛いんだって!』


『なんか、独特な魔力の波長を感じるから、もう少し…』


 まだ、触り続けるポメラの腕を捕まえる。


『あれ?欲情した?』


『してねぇよ!』


『はわわ、襲っちゃだめです!』


『ん?……誰、君?』


『ポメラちゃんを離してください!』


 えっ?言葉が通じているのに話が通じない。


『【アーク・ライト】!』

 

 謎の女の子が持っている先端が星型の杖から、目映い光が放たれる。


『ぬぉぉお!ミリア!魔法を使う時は、言って!』


 俺は魔法を使うのは感知していたためミリア?のセリフから光魔法が来ると予想し目を瞑っていた。

 クリンヒットしたのは、ポメラである。


 ……それより、魔法の発動時に扉から悲鳴がしたような…。


 カーテンを開いて扉の方を見ると、目を抑えた審査官のライムさんが立っていた。


『何をやってるんですか!こんなところで無闇に魔法を使って!』


『ご、ごめんなさいぃぃ』


 ライムさんは怒るが、童顔のミリアが涙目になって謝ると慌て出す。


『あ、えっと、そこまで、怒ってないですよぉ~…』 


『え~と。ライムさん。

 これどんな状況なの?』 

『説明ってできます?』


 ライムさんが目を、ぱしぱしさせながら話し出す。


『君達は今回の試験の合格者です。我がルーカス国立魔法学園のビーゼル=ロナーク学園長、自らから選考して決めたそうです!』


『『へぇ~お爺ちゃん。だから、会場にいたんだぁ』』


『えっ?お爺ちゃん?』


 俺は、ポメラとミリアの発言に驚く。


『私は、ミリア=ロナークだよ!』


ーーーあ、家名が同じだ。


『私、ミリアの従姉妹。母がロナーク家3女。嫁いで、アンゴートになった』


 俺の疑問を先にポメラが説明してくれる。


『なるほど。だから耳が少し尖っているのか』


『うん。ミリアはエルフだよ♪』


『私はハイエルフ』


 なるほどな。だから人より、

ーーー精霊に似た心の形を2人は持っているのか。


『あの~…それで、早急なんですがSクラスの教室に集まってもらってもいいですか?』

『あとは君達だけなんですよ』


『もう教室に?家に合格の報告とかは?』


『…え?聞いていないので?

 試験合格と同時にあなたたちは寮に暮らしてもらいますよ?』


『俺、聞いてないぞ。

 手紙にも書いてなかったし』


『でも……マナ君でしたよね?

 あなたの家から、受付で荷物を預かってますよ』


『えっ!?

 あー、うん。父さんの仕業だな』


 あの人なら遣りかねない。母さんは忘れていた可能性が高い。


『ふん、家に帰りたいなら帰ればぁ?』


 あ、またあいつか。


『えっと。チャイム先生?教室まで案内してもらってもいいですか?』


『分かりました!…じゃないっ!チャイムじゃなくてライムですぅ!』


『あ、すみません。マイム先生』


 ライム先生の怒る姿は可愛くて良いな~。


『マナ君、名前を間違えたらメッ!です!』


『だめだよ~、ライク先生困らせちゃ~』


 『だから、ライムです!』と言う先生の後ろを3人でついていく。

 扉もちゃんと閉めないとな。


 すると、少しして扉が物凄い音を立てて開く!


『あなたたち!私を無視するなぁー!!』


ーーーチッ、ダメだったか。


『先生、走りますよ!他の生徒も待ってるんでしょ!』


『えっ、あの、『ダッシュ!』はいぃ!』



ーーー3人と1人が走って教室に着く。


………………

…………

……


『あ、改めてまして、私はこのSクラス担当教師ライム=チワリーヌです!よ、よろしくね』

『この学園で君達は共に切磋琢磨していきますが、今日は、自己紹介だけしましょう!』


 ライム先生、緊張しているなぁ…。



ーーー次々に自己紹介がされていき、ポメラの次にミリアの番がくる。


『あ…の、その…』


 こっちも緊張しているなぁ…。さっきは普通だったのに。

 ここは、助け船を出そうかな?と思っていた時にポメラが手を挙げる。


『先生、ミリアは周りからの注目に慣れていないので自己紹介に魔法の許可をお願いします』


『えっ?魔法?』


ーーー面白いな。


 皆も、興味ができたのかミリアの方に感情が集まる。


『攻撃や付与系の魔法じゃないので大丈夫です』

 

『わ、わかりました。

 それではミリアさん。魔法を許可します』


『はい!ありがとうございます!』


 皆が急に元気よく答えるミリアに驚く。

 本人は皆に見られて顔を真っ赤にしてるが、声だけははっきり聞こえる


『中級風魔法【輪唱】の応用ね。

 凄い制御力じゃない!ミリアさん!』


『えへへ、ありがとうございます!』

『私は、ミリア=ロナークです!よろくね!』


 ミリアが終わって俺の番がくる。


『俺は、マナ=フィルドー。

 好きな食べ物はシカ肉!

 嫌いな食べ物はナス、ピーマン、イチジクだ!』


『マナ君は、何処から来られたのですか?』


 先生が、当たり障りのない質問をしてくれる。


『ブラク領のボルダーン森林の奥地に住んでいました』


『へぇ~、そんな遠いところから~』


『田舎者ですが、よろしくっ!』


 俺の自己紹介が終わって、椅子に座るのと同時に最後の番である彼女が立つ。


『私は、アレクシア=パピヨン』

『この学園の1番になるわ。覚えておきなさい』

 

 と言ってスッと席に座った。


 うわぁ刺々しているなぁ…。

 しかも、敵対心が俺に突き刺さってるから怖い……


『そ、それでは。解散としましょうか!

 ……あっ!』

『そうでした!

 この試験の成績も含めた戦闘能力の評価が広場前でランキングにして貼ってありますよ!

 自分の今の実力を知りたい人はぜひ、見たほうがよろしいかと!』


 一瞬で教室の空気が変わる。

 なんだ?皆、ランキングが気になるのか?

 

『なぁ、ポメラ。なんでこんなに空気がはりつめているんだ?』


『それは、この学園の卒業後がランキングの成果次第で有利に傾くから』


『もう、卒業後を考えてるのか?』


『ここにいる生徒は、このクラスのあなたを含めて何人か以外は全員、中等部からの進学で入ったエリートだから』

『ちなみに、私とミリアは学園長の推薦で入った』


『あ、それ俺も。』


『奇遇』『奇遇だな』『何の話ですか?』


 ミリアが話に入ってきたので、試しにランキングを見に行かないかと提案する。

 


ーーーそして、ランキングの前で各々が自分の名前と順位を確認する。


『俺の順位は…』

『順位は……』

『順…位……あった!』


 俺の順位は100人中18位だった。まじか、もっと上だと思ったのに。

 同学年では、俺より強い子が17人いるのか。


 そうして、少し残念がっている俺に確認し終わったミリアとポメラがに話かけてくる。


『どうでした?』『どうだった?』


『18位。君たちは?』


『25位でした』『8位』


『ポメラって強かったんだね』


『えっへん。

 でも、意外…マナはもう少し強いと思っていた』


『俺も100人中18位だって言ったら父さんをがっかりさせるな……。でも、仕方ないか』


『『ーーーえっ!?』』



ーーーポメラとミリアは他の人の順位に興味がなく、自分の順位だけ確認していた。


『今、【100人中】って?』


『え、そうだけど?』


『100人中ならもしかして……【総合】ランキング?』


 ミリアは口を開けたまま立ち尽くし、ポメラは珍しく慌てている。

 


 …ん?向こうが騒がしくなってきたな? 


『おい!【総合】ランキング上位20位以内に1年生が載っているぞ!』

『18位だと!?』

『……マナ=フィルドー?

 まさか、今年に実施されたスカウトの生徒か!?』

『並みいる2・3年を抜くなんて、どんな奴だ!』


 あれ?俺の名前言われてない?


 騒がしい人混みに近づくと、ランキング表の前にいるアレクシアと目が合った

 アレクシアが無言で睨み付けながら俺に迫ってくる。


 そして、


『【決闘】よ!マナ=フィルドー!』


『ちょ、名前を叫ばないで!』


 俺の名前が出てきて、他の生徒たちが集まり出す。…囲まれた。


『まさか、逃げるのっ!?』


『いや、そうじゃなくて……』

『そもそも、この状況についていけてなくて』


『逃げないなら、今から!

 【決闘】の申請に行くわよ!』


『(聞いてないぞこいつ)』


 困っている俺の目の端に、周りの野次馬からライム先生がよろけて出てきた。


『ーーーそれなんですが……』


『何っ!』


 アレクシアは、すごい剣幕で話に入った先生に問う。


『明日言うつもりでしたが、1年生には、準備期間があって1ヶ月間【決闘】が禁止なんです』

『それと、言いにくいのですが……アレクシアさんの順位ではマナ君に【決闘】を申し込む資格がありません』

『【決闘】は、上位10位以内の人に挑戦できますが、35位のアレクシアさんでは18位のマナ君には挑めません……』


 ……、気まずい。

 あ、アレクシアの、興奮で赤くなっていた顔が完全に赤くなった。

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