【学園編】第12話 俺、異名をつけられる。
ーーーマナは避けられていた。
周りには自分と同じ制服を着ている少年・少女がいる。
『うわっ…』『あれ』『あれが、噂の…』
『『『【黒の悪魔】』』』
マナは避けられていた。
ーーーそこは、魔法使いの卵が集う、ルーカス国立魔法学園。
その学園は魔法の才能がある子供を国中から探し、推薦という形で付属の中等部に集めて、高等部に優秀な生徒を送るシステムを取り入れていた。
なら、推薦じゃない人は入れないのかというと付属の中等部で入学し、優秀な成績を取るか、自分が在籍している学校からの推薦が学園に受理されなければ入学できなかった。
俺は、その超難関校から推薦状が送られ、異例の【在籍していた学校の推薦なし】での編入学をした。
ーーー1ヶ月前、俺が倒れたあの夜から2年後。
『マナ~。あなた宛に手紙が届いてるわよ~』
朝早く、母さんの声で目が覚める。
俺に手紙?
ここから少し下った村に住む子達からかな?
たまに、下りて修道院の子達と遊んでるんだよね。俺。
『母さん、手紙は?』
『そこの机の上に置いたわ』
母さんは朝食を作っていた。
パンの焼けた香りとスープの匂いがする。
『なになに?ルーカス…魔法学園?』
『母さん、これなんなの?』
『開ければ分かるけど、推薦状よ』
『えっ?なに?』
『推、薦、状よ』
推薦ってあれか?魔法学園に?
確か、この学園って有名な学校じゃなかったけ?何で俺が?
……開けてみる。【推薦状】、そう書かれているな。まじか。
『なんで、俺が……』
『ーーーそりゃあ、才能があるからだろ』
父さんが階段から降りながらなんでもないように言った。
『はぁ!?俺が才能なんて持っているわけないだろ!』
今の俺は反抗期に入っていて、自分でも分かるくらいピリピリしていた。
『お前の実力なら十分あるだろ』
父さんはまだ言う。
どこがっ!と言う前に父さんが喋る。
『あれが、完成しただろ昨日』
…まだ、父さんとの稽古は続いており、昨日は模擬試合で、ある技を使って父さんから1本勝ち取ったのだった。
『あの技はまだ不安定だし。
それに、この学校は俺を見ていないのに推薦状を送っているんだぜ?』
『……いや、一度、【あの日】に学校の関係者とお前は会っているぞ』
『まぁ、気絶していたけど』
両親との間では、あの夜に傷だらけで倒れていた日のことを【あの日】と呼んでいた。
『ちなみに、その時の傷を治したのは母さんとその学校の関係者な』
俺は少し驚く。
あの日、倒れていた俺を助けてくれた人がいたのは教えて貰ったがその人のことは、父さんや母さんは語ってくれなかったらだ。
『でも、何で?』
『しかも、これ、推薦状だけど試験も受けて合否を決めるって書いてあるじゃん!』
あの難関校で有名な所に俺が試験を受けるだと?
俺は別に学校になんか行きたくない。父さんと一緒に木こりや母さんみたいに村で商売をしたいのに!!
『これ、受けないって選択肢は?』
『ないわよ~』『ない!』
ーーーそこから1ヶ月後。
俺は、この学校に試験を受けに来ていた。
門の受付の人に推薦状を見せたら、驚いていたがすんなり入れてもらった。
やっぱり、俺みたいな田舎者は予想外か。……帰ろうかな。
なんか周りの子達は制服なのに俺だけで私服なのが余計に浮いている。
………………
…………
……
『218番!』
案内係と説明された人が番号を言う。
番号で受験者を幾つかの試験会場に分けるそうだ。1日に千人近い受験生が集まる、この学校ならではの方法らしい。
ちなみに、俺は次だ。
『219番!』
俺は案内人の近くまで歩く。
『…君は、Sだ!』
SとはS会場のことである。A、B、C、D、Eの次が何故か、Sなのだ。
後ろからは驚愕の感情が広がる。何でだろ?
試験は魔法適正検査、魔力量測定、魔法実技試験がある…っと母さんから言われた。
正直、筆記試験がなくて良かったよ。
S会場では、俺と同じく私服で来た者。騎士のような服装の者。とても大きな杖を持っているが、頭が俺のへその位置までしか身長がない者。長い棒のような物を腰にくくりつけた者がいた。
ーーーなんか、魔法使いぽくないな…。
マナの第一印象であった。
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