【閑話】 女神の失敗は2度ある②
『これで、終わりっと♪』
新米女神のミステリアは誤まった転生をしてしまった主人公に、新たな人生を提供してあげなさいと上司の世界神に言われていた。
それが、今終わったところだった。
『終わったのか?』
『ひゃっ!?』
突然、後ろから声をかけたのは、この世界の世界神ファウンド。
『脅かすなら脅かすって言ってくださいよ~』
『【転生の間】でお前の仕事ぶりを見ようと待っていんたんだが…。もう仕事が終わっているようだなぁ~?』
ギクッ!?
ばれてるっ!?いや、ばれてないはず……。
『ばれるも何も【転生の間】以外で転生女神が仕事をすることは禁止事項だろーがっ!!』
『だ、大丈夫ですって!ちょ~と精神をジャックして、前世の記憶消して転生させて来ましたから!』
『ーーーっ、お前!?なんて事を…』
『え?』
『何か不味かったですか?』
『不味いわ!
原則事項に【魂だけの存在は不安な状態なので、【必ず】転生の間で状況説明や転生案内等を行ってください。】
と書いてあっただろうが!!!』
ミステリアが今いるのは、青、赤、黄色のカラフルすぎて目が疲れる部屋だった。
それは、ミステリアの部屋だった。
『あ~。ありましたね』
ーーー正直、覚えていなかった。
ミステリアは神の雷が落ちるだろうと予想し、全力で障壁を張って構えた。
雷が落ちた。
『い゛った~い!!』
『どうしてっ!
障壁張ったのに、前より痛いです~~』
『儂の雷は自動調節機能がついているから、ガードしたバカ者に対して1.5倍で痛めつけるようにしているんだバカ者!』
『卑怯な!?それが、神のすることですか!』
『謝罪』
『誠に、すみませんでした~』
あれは、すごくすごく怒った顔だ。まさに神の領域での怒り顔。
こういう時は、絶対に逆らってはいけない。ミステリアは学んでいるんです!
『とりあえず、かの者の【今】を見てみるしかないな』
ファウンドの両目が光る。目線の先の空間が歪んで現世での主人公の姿が映る。
ーーーそこには、転生直後の主人公が見えた。
『あっ、髪が白くなっていきますね』
ミステリアは世界神の横から主人公の姿を見ていた。
おっ!意識が戻ったのかな?
『ーーー何で髪の色が変わる!?』
ファウンドは混乱した。今までにこんな事例は無かったからだ。
ーーーが、人間がたまに神降ろしや神託によって神と接した後の状態に似ていると思った。
っ!?
『そういえば、お前。かの者の【精神】に干渉したと言ったな?』
『そうですね~』
『精神に、か?』
『はい。精神にです』
『ーーー不味いぞ!?
魂でさえ不安定の中、魂ではなく精神に干渉したら心が壊れてしまうではないか!!』
『それはぁ~………やばいですね』
現在、目下の主人公は血を吹き出していた。
『まずい!まずい!まずいっ!』
『いや、待てよ?こんな時のために転生前にチートスキルをセーフティとしているんだったではないか!』
『あっ』
『なんだその反応は!!まだ、何かやらかしているのか!!』
『今すぐ吐け!!!』
『いや~、あの子。
事務的な対応じゃ寂しいから、面白みを取り入れようとダーツとかで決めようと思ったら。
渡したダーツで私の顔を狙ってきたんですよ!慌てて転生ボタンを押しちゃったんですよね。
ちなみに、ダーツはおでこに刺さりました。痛かったです。あは☆』
『……転生特典は渡してないのか?』
『はい……』
やっぱり、テンションで誤魔化せなかったか…。
ミステリアは雷が落とされるのが分かった。
実際、落ちた。これで筋肉痛はしばらく抜けないだろう。
『今すぐスキルを与える』
『どんなスキルを与えるので?』
『う~む。かの者の精神は既に壊れている。まだ、生きているのが奇跡だ』
『……よし!精神系のスキルを用意しろ!』
『そんな希有なスキルありましたけ?』
既に下界、つまり主人公のいる世界では闇魔法の【マインドコントロール】などのマインド~魔法=精神系魔法や、【イリュージョン】などの五感を騙す魔法が存在している。
なので、これまで精神系スキルの存在は薄くなっていた。
『つべこべ言ってないで探せ!』
『は~い。…うーん。あった!』
特典カテゴリーの後半に、それはあった。
『棒くじ、ダーツ、ルーレット。どれにします?』
イラッ。
ファウンドは苛ついた。
本来なら相手に合ったものを機械で調べて、候補の中から選ばれるのだが、そこに怒るほど事態に余裕は無かった。
『棒くじだ』
『渋いですね~』
無視して棒を引く。そこには……
『『【精神共鳴(UR)】?』』
意味を調べようとしたが、視界の端で主人公が倒れたので、急いで【スキル譲渡】ボタンを押す。
『…あれは、何だったのだろうか』
『でも、【UR】って神レベルじゃないですか』
『それが怖いな。あと、仕置きな』
これまでで最大の雷がミステリアを襲った。
ーーースキルを受け取った主人公は、辛うじて一命を取り留めたのだった。
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