第5話 心が【わかる】
マナは、父マルダンに【成人の儀】についてまるで他人事のように聞いていた。実際、転生前は他人だしな。
『あの時は焦ったぞ!
なんせ、神父さまの魔法が終わったらお前の金髪が一気に白くなって、驚いていたら、お前が立ち上がってな~!』
『口や鼻から血を吹いて倒れたんだからな!』
血を吹いたのか!?
……少し見てみたくなった。
『今は、別人のように元気だな!よかったよかった!』
ーーーま、別人ですから。
マルダンと話していたら少しずつ転生前の記憶?が甦ってきた。
だが、火葬された以前の記憶は薄れていて、まるで写真のように感じる。
そういえば、あのクソ女神もといダ女神は記憶を消去しないと心が壊れる?とか言っていたな。
『……壊れてないじゃん』
あいつ、仕事できない系女神だからってやばくね?適当すぎない?
『?、どうした?』
急にマナが呟いたので心配そうな顔で聞いてくる。
『いやいや、こっちの話だから大丈夫!』
言っていて何が大丈夫なのか分からないな。
『そろそろ、お前の母さんが戻『ただいまぁー』、戻ってきたみたいだな』
『あれ?マル~。いないの~?』
『今、マナの部屋にいるよー』
マルダンは悪い顔で答える。サプライズだ。これはサプライズをしようとしているな。
ガチャッ
扉が開いた。
『マナの様子はどう?何か変化はあっ……た』
多分、母親であろうその人は茶髪に少しパーマがかかっているおっとりとした美人だった。
『あの人が、母さん?』
『あの人か……』
『マル!マルダン!
マナが起きて、…起きているわ!?』
母親は部屋に入った時は少し疲れた顔をしていたが、今は凄くはしゃいでいる。
なんか、俺も嬉しくなる。
ーーー夫であるマルダンはゆっくり深呼吸するように妻セリーナ=フィルドーに伝え。今日起こったことについて話す。
マルダンが話している途中でもセリーナはマナをチラチラと見続けていた。
説明が終わった瞬間、セリーナは我慢できずに息子に抱きついた。ベアハッグだ。
『ギブ……』
『『あっ』』
夫婦の声が重なって聞こえた。
ーーーそこから、3ヶ月後。
マナは森でペットのウサギにエサをやっていた。
『よく噛んで食べろよ~』
『プキュ~♪』
転生した日から早3ヶ月。徐々に環境に慣れてきている実感はある。
父さんと、母さんは2人の記憶が戻らないと分かってきても俺を見捨てなかった。
ありがたい。急に知らない世界に転生して、元々生きていたこの【マナ】という子の身体に取り憑いたようなものなのに愛情を込めてくれていた。
…これが、無償の愛なんだろうな。
普通ならこの愛情を疑って生きていただろう。だが、俺には核心があった。
なぜかって?
ーーー生き物の心が【分かる】からさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます