物語を作ろう! 4

渋谷かな

第1話 4

「まさか!? おまえも侍忍者だったとは!?」

 界は堂々と鎧に身を包んだ望を苦々しく見つめている。

「希は俺が守る。」

「望、一気に蹴りをつけましょう!」

 希と望は戦う体制が整った。

「その通りだ! 俺の強力な魔力で放つ、強大な忍術で全てを魔にしてやろう! これは誰が何をしても防ぐことはできないのだ!」

 界は極大忍法を放とうと自身の上空にたくさんの人間の悪意をの気を溜めている。

「さすがにあの大きさはヤバいかもしれないわね!?」

「大丈夫だ。希がいるなら俺は戦える。」

「あの望、私たちは兄弟なんだけど?」

「血は繋がっていない。」

「はいはい。」

 二人は同じ孤児院で育ち日本国家の秘密組織ハベルシノビで侍忍者になるべく育て上げられた。ただ、それだけの兄弟である。

「何をゴチャゴチャ言っている! 消えていなくなれ! 侍忍者ども! 極大魔忍法! デーモン・デストロイ!」

 界は極大魔忍法を放つ。

「ウワアアアアア!?」

 希と望は界の術の大きさに成す術もなく動けない。

「絶望するがいい! ワッハッハー!」

 界は勝利の余韻に浸っていた。

(そこまでです。)

 その時、薄気味深い声が聞こえてくる。

「悪魔が消えていく!?」

 そして界の極大魔忍法を何も無かったかののように消滅させる。

「ジンカン様。」

 界が声の主をジンカンと呼ぶ。

「これがジンカンの実力なのか!? 一瞬で極大忍術を消滅させやがった!?」

「なんて恐ろしい力なの!? 私たちはこいつと戦っているのね!?」

 初めて遭遇した悪のボスのジンカン。その能力に希たちは震えた。

(界、引きなさい。これより人類再生計画を開始します。)

「はい。分かりました。」

 ジンカンに陶酔している界は忠実に従う。

「待ちなさい! ジンカン! 人類再生計画だか何だか知らないけど、きれいな言葉を並べて人生に困って弱っている人を悪の道に引き込むのはやめなさい!」

 そこに希がしゃしゃり出る。

(あなたは誰ですか?)

「私は夢人希! 夢を司る侍忍者よ!」

(人の夢を司るのであれば、私に協力してください。)

「なんですって!?」

 意外にもジンカンは希に協力を要請してきた。

(今の世の中のどこに夢があるというのですか? ある者は今日を生きることに苦しみ、ある者は笑顔を忘れ、誰とも話さない日々を一人で孤独に過ごしている。こんな毎日のどこに夢があるのですか?)

「ウッ!? そ、それは・・・・・・。」

 本質を突かれて希はジンカンに反論することができない。

(今の権力者たちを倒し、一部の人間ではなく、全ての人間が笑える新しい法律や制度を一緒に作りましょう。)

「はい! ジンカン様!」

 希は簡単にジンカンに丸め込まれてしまう。

「こら! しっかりしろ! 希!」

 望が希を揺り起こす。

「はあっ!? 危ない!? 危ない!? もう少しでジンカンに取り込まれるところだった!?」

 正気を取り戻す希。

(人間が人間である限り心に闇は生まれる。そして姿は人間であっても悪意を持って他人を傷つけたり自分勝手な行動をとるようになれば、人ではなくなる。)

 ジンカンは持論を展開する。

(私は人では無くなった者を人魔にして、あなたたちに倒してもらいます。そうすれば、この世界には純粋な人間しか残りません。増えた悪意は減らさないとこの世界は純粋な元の創世された世界には戻りませんからね。)

「ジンカン、それがあなたの願いなの?」

 希はジンカンの人類再生計画の全容を聞いて尋ねる。

(いいえ。これは序章です。)

「なに!?」

(私の本当の願いは叶うのか、叶わないのか分かりません。)

 ジンカンの声はどこか遠くを見つめていた。

「あなたの本当の願いって?」

 希はジンカンに寂しさを感じる。

(おしゃべりはここまでです。がんばって悪意ある人間を倒してください。人間の姿をしていれば殺せませんが。化け物の人魔の姿をしていれば斬ることができるでしょうからね。)

 何でもお見通しのジンカン。

(行きますよ。界。)

「はい。ジンカン様。」

 立ち去ろうとする界。

「ジンカン! あなたは本当はいい人なんじゃ? 私たちは戦わなくても話し合いで問題を解決できるんじゃないかしら?」

(それは立場が違うから無理ですね。希、あなたとの対話は楽しかったですよ。久しぶりに私の体に血が通った気分になりました。ありがとう。またどこかで会いましょう。)

 そういうとジンカンの声は消え去った。

「待って! ジンカン!」

 希の声はジンカンには届かない。

「おまえ、詰めが甘いな。」

「なんですって?」

「周りを見てみろ。」

 希が周りを見ると、切り捨てた人魔たちが一つに集合しようとしていた。

「人の悪意の塊が人魔だ。この世に人間がいる限り争いは終わらないのさ。」

「なら、私はこの世から争いが無くなるように人魔を倒すわ!」

「無理だな。人魔は限りなく現れ、おまえもいつかは絶望し、人の世の全てを知った時、おまえ自身も人魔に変わる。運が良ければジンカン様に救ってもらえるだろうよ。」

「いいえ。私は諦めたりしない。絶対にね。私がジンカンを倒す! 私がジンカンを救ってみせる!」

 希は決意を固める。ジンカンとなら話し合えると信じているからだ。

「おまえみたいな奴は初めてだ。」

「よく言われるわ。」

「後ろのデカブツに食われてしまえ。さらばだ。」

 界は忍者のように姿を一瞬で消した。

「ガオー!!!!!!!!」

 倒したはずの人魔が一つに集合して巨大な人魔スライムが完成する。

「やるぞ。希。」

「ええ。できる、できる、私はやればできる子だ!」

「ウオオオオオオー!」

 希と望は気合を高める。

「夢の妖精フェアリーよ! 私に力を貸してちょうだい! いくぞ! 人魔! 夢妖斬!」

「我! 悪夢の精霊の侍忍者が命じる! 永遠の悪夢を見るがいい! 忍法! ナイトメア!」

 希と望は必殺技を巨大人魔スライムにぶち込む。

「ギャアアアアアアー!?」

 二人の攻撃で巨大人魔を葬り去る。

「やったー! 人魔を倒した!」

「なんてったって、俺たちは二人で希望だからな。」

 希と望の戦いはつづく。

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