エピローグときみの秘密



 帰りの車の中でふと思った。


「きみの体の痛みって薬がないとどのくらいひどいの?」

「……体が起き上がらないぐらいですよ」

「それで無理心中なんてできるのかな」


 彼は目を丸くして私を見たあと、少し笑った。


「あなたは本当に素直で、可愛い人だ」

「え?」

「そういう野暮なことを言ってはいけませんよ」

「野暮って何?」

「……父は自ら死を選んだ。彼に巻き込まれて家族も死んだ。それでいいんです。それが一番、今となっては綺麗なおしまいですから」


 白翔くんは笑った。

 ――きっとそこにもなにかあったのだろうとは、分かった。


「……そっか」

「ええ、そうです」


 でもそれを聞くのは十年後ぐらいでいい。


「今日は楽しかったね、白翔くん」

「ええ、お揃いのものがたくさん買えましたね」

「……そこ?」

「新婚みたいで嬉しかったです」


 クスクスと彼が笑った。なんとなく、……きっとこれからも彼に巻き込まれながら、私は生きていくのだろうと思った。少し疲れていた。今日は眠れそうな、……そんな気がした。





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彼のまわりは事件が多い ――ダイナミック入店から始まる頭脳(恋愛)戦―― 木村 @2335085kimula

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