エピローグときみの秘密
◇
帰りの車の中でふと思った。
「きみの体の痛みって薬がないとどのくらいひどいの?」
「……体が起き上がらないぐらいですよ」
「それで無理心中なんてできるのかな」
彼は目を丸くして私を見たあと、少し笑った。
「あなたは本当に素直で、可愛い人だ」
「え?」
「そういう野暮なことを言ってはいけませんよ」
「野暮って何?」
「……父は自ら死を選んだ。彼に巻き込まれて家族も死んだ。それでいいんです。それが一番、今となっては綺麗なおしまいですから」
白翔くんは笑った。
――きっとそこにもなにかあったのだろうとは、分かった。
「……そっか」
「ええ、そうです」
でもそれを聞くのは十年後ぐらいでいい。
「今日は楽しかったね、白翔くん」
「ええ、お揃いのものがたくさん買えましたね」
「……そこ?」
「新婚みたいで嬉しかったです」
クスクスと彼が笑った。なんとなく、……きっとこれからも彼に巻き込まれながら、私は生きていくのだろうと思った。少し疲れていた。今日は眠れそうな、……そんな気がした。
彼のまわりは事件が多い ――ダイナミック入店から始まる頭脳(恋愛)戦―― 木村 @2335085kimula
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