第155話 バインダーとの決着
それは、唐突だった。
街中の広場が騒がしいと思い、様子を見に来たのだが。
「あ!? あれはバインダー!」
噴水の上に登って何やらぶつぶつと言っている、頭上には見慣れない金か何かで出来た女神像を掲げている。
何だ?バインダーは何をするつもりだ!
「どうしましたか? ジローさん」
「ファンナ、あそこにいる黒いローブを着た奴、あいつはバインダーと言う奴で、闇の崇拝者だ!」
「え!? 闇の崇拝者!? こんな街中で何をやっているのでしょうか?」
「わからない、とにかく近くまで行って見よう」
俺達は噴水の側まで来て、バインダーに尋ねる。
「おい! バインダー! お前何やってんだ!」
「・・・・・・」
「ジローさん、何やら金の女神像を掲げている様ですが」
「バインダー! お前まさか、懲りずにまた女神召喚でもしているんじゃないだろうな!」
すると、バインダーがこちらを向いて語りかけてきた。
「また貴様か、一度ならず二度までも、いい加減私の邪魔をしないで頂こうか」
街の中は祝勝ムードで賑わい、どこもかしこも皆酒を飲んで騒いでいる、こちらの事などお構いなしだ。
「まさかとは思うが、あんた、もしかしてその金の女神像を使って、女神を召喚するつもりじゃないだろうな!」
「ふ・・・大人しくして貰おうか、もう間もなくだ・・・」
冗談じゃない!?、女神が召喚されたら何が起こるかわからないんだぞ! 下手したら女神クラスのものを召喚したら、この世界はどうなるか、最悪この世界が崩壊するぞ!
「わかっているのか、バインダー! 女神なんか召喚したら、この世界がどうなるか!?」
「こんな世界なぞどうなっても良いのだよ!」
「何が気に入らないんだ、この世界の!」
「私の家族はモンスターの襲撃によって殺された! 村に被害が出たのに、兵士達を振り向ける事すらされなかったのだよ! ところがどうだ! この様な大都市がモンスターの襲撃騒ぎになると、途端に皆が協力し始める! 私の村は救われなかったのにだ!」
「お前の村へのモンスターの襲撃とここの人達には関係無いだろうが! やけっぱちになるんじゃない!」
「うるさい! 貴族が悪いのだ! 貴族共が兵士を動かして自分たちだけを守ろうとして、私の村は見捨てられたのだ! だったら私もこの国を見捨ててやる!」
「家族を失って悲しい思いをしているのはお前だけじゃない! 皆何かを背負って懸命に生きてんだよ!」
「黙れ! もう遅い、・・・女神よ! そのお姿を我の前に現れ出でよ・・・」
こいつはまずい! 女神召喚の儀式は最終段階に入っているみたいだ! ここからじゃとても間に合わない! 何かないか、何か!・・・もう、これしかない!
俺はハンドアックスを握り締め、ヒートアックスを発動させる、ハンドアックスは赤熱しだし、炎を帯びて準備は整った。
狙いは金の女神像だ!
「いっけえええええーーーーーーー!!!」
俺は渾身の力を込めてヒートアックスと化したハンドアックスを投擲した。
ハンドアックスは真っ直ぐ飛んでいき、金の女神像を捉える。
バカァァァァーーーーーーン!!!
ハンドアックスが金の女神像にぶち当たり、粉々に砕けた。
「よし! やったぞ!」
「な!? なん、だと・・・・・・」
バランスを崩したバインダーが噴水の上から転がるように落ちてきた。
「うぐ、」
俺はすかさずロープを出して、バインダーを拘束する。
「おのれー!おのれーーーー!」
「バインダー、あんたの家族はモンスターの被害に会ってしまったけど、だからと言って、他の人達に同じ思いをさせるってやり方は、認められない、それじゃあ、お前さんがモンスターになっちまうだろうが!」
「・・・う、・・・うう、」
「なあ、バインダー、もう少し信じてやれよ、この世界の人達の事を・・・」
「・・・う、・・・」
「俺らの世代で出来なければ、きっと次の世代がやってくれるさ、お前達とは違うやり方でな・・・」
「うう、・・・ううう、・・・」
「お前達はモンスターを利用して力を得た、俺達は仲間を得て力と成した、結局、あんた達は一人一人が孤独だったってだけじゃないのか・・・・・・」
バインダーは大粒の涙を流しながら、力無く俯いた。
「・・・可哀想な人ですね・・・」
「・・・そうだね、・・・ファンナ・・・」
周囲の喧騒は酔っ払い達が酒を飲み、賑やかな感じだったが、俺達の周りには静寂が包んでいた。
尚、この事は、ただの酔っ払い同士の喧嘩として、正式な記録には残ってはいない。
{シナリオをクリアしました}
{キャンペーンシナリオをクリアしました}
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます